美少女が足の間にいるんだが
「こうすれば意外と快適なものだ。そうだろう後輩くん」
振り向いた彼女の艶々の黒髪がサラリと揺れる。
オレこと、飛騨将斗雄高校二年生は今、どんでもない状況にあった。
人生において、危機はこんなにも簡単に訪れるものだったのかと正直驚いている。
目の前に美少女がいる。
正確に言うと、開いたオレの足の間に座っているのだ。
中学…見ようによっては小学生にも見える。
そんな小さくて未発達な体格なので、体がくっついた程度で動揺などしないと思っていた。
だが、だが…しかしだ。
彼女はオレより年上の高校三年、十八歳なのだ。
オレたちは今、ネットカフェの個室、人呼んで『カップルルーム』にいる。
なぜ、こうなったかと言うと少し話しは長くなるが、短的に言えば自分のネットゲームのプレイを見せるため、ヘッドマウントディスプレイがふたつ接続できるパソコンが必要になったためだ。
思った以上に個室は狭く、普通の体格の男女が入れば間違いなく体をつめて座るしかないベンチシート…そういう仕様なのだ。
だからこそ『カップルルーム』と言われている。
オレは体がでかく、彼女は小さい。
今日、知りあったばかりの男女がこんなところに入ること自体おかしいのだが、彼女はどこかズレていてそういう部分に思うところはないらしい。
あっさり、この個室に入り、座席のつめ具合が気に入らないと、オレの足の間に座ったのだ。
親戚の女の子がちょうどこのくらいの体格なので、つい子供扱いをしてしまっていた。
ところが、いざ近距離で見ると、美少女のオーラは圧倒的で、自分のストライクゾーンなどあっさり破壊する侵食率で「女の子」を意識させる。
「はいはい」などとうっかり足を開いた自分のバカさ加減に激しく後悔した。
「足を閉じるな。私がイスから落ちるだろう」
まるいお尻が開いた足の間にグイグイと戻ってくる。
「ひ…」
さすがに今度は声が出た。
彼女ではない。オレの方だ。
「さっきから後輩くんは挙動が不信だぞ。何をしているのだ?」
「ナニって?何もしてませんよ。シロです。潔白です。つーか真っ白です!」
このお嬢さんが無防備すぎるのだ。
外見がどうであれ、あんたは年上だろう。
「ただでさえ私と一緒にいる男子はなぜか補導されがちだというのに…」
そりゃあそうだろう。
「とにかく行動が不信では私が困る。以後、気を付けるように」
「は…い、先輩」
先輩-玉城宿理はどんな無茶な要求をしているのかに気が付いていない。
「むう、まあいい。船を出そう。早くディスプレイを付けろ。さっそくログインだ」
この状況でおとがめを受けるのはどう考えてもオレだけだ。
-『助けてお母さん』そう思ったのは何年ぶりだろう。
とにかく、一刻も早く用件を済ませてこの状況を逃れなくては。
オレはパソコン操作に集中することにした。
用件とは、オレが彼女の率いる部隊の入隊テストとやらを受けることだった。
いま少しハヤリのネットゲーム…<ソルブレイド・オンライン>。
広大な宇宙を舞台に機動兵器を駆る3Dシューティングゲーム。
大きいもので2キロメートルを越える巨大ボスとの戦いや、ひと月に一度行われる<旅団戦>と呼ばれる大規模艦隊戦イベントが話題になっている。
その中で、彼女のチームは一週間後に艦載機のみで「旗艦撃墜」を狙っている。
「3Dシューティングゲームだというのに、後輩くんのプレイスタイルは特別すぎる」
敵旗艦の推定守備力は八千万ポイント。
ゲームが始まって以来の未踏の戦果だ。
とある事情で選択の余地がなく、少しだまされた感じもするが、オレはこの作戦に参加することになりそうだ。
ログインするとさっそく乗機の駐機場に向かった。
二人のヘッドマウントディスプレイには同じ画像が映し出されている。
彼女はオレが見ている光景を見ているのだ。
「<クタナ・ハルファス>。いい機体じゃないか。さっそくお手並み拝見と行こう」
お読みいただきありがとうございました。
がんばって続けますのでなにとぞよろしく
お願いいたします。
リアル系宇宙戦闘ものですが、ほのぼの
行きたいので、あえてゲームにしています。
人が死んだりしませんので、油断して
お読みください。