乙女の心!
あああああ~。
あらたくん~。
チラッ、チラッ。だれもいない。チャンス~。
「あ、あの、あらたくんっ!」
背は低いけどいつも優しくしてくれる私の初恋の男の子。
「どうしたの?いつきちゃん。」
な・ま・え!
なまえよばれたあああぁ~。
「あ、あの~、その~。こ、これ~。」
手作りのブレスレット。今日のために、今日のために作ってきたブレスレット・・・!
「あ、そろそろ塾の時間だ。ごめん、また今度ね!」
あ・・れ・・・。
いっちゃった。
「ピピピピ・・・ピ―――!!!」
え?な、何?
ゆ、ゆりなちゃん???
「ピピピピ・・・ピ―――!!!」
ゆりなレーダーが感知しましたっ!
三組、悩み人はっけーん!
これはまさしく、恋の悩みっ!!
恋心いだく乙女ってやっぱりかわいいっっっ!!
「いつきちゃん!まさしく恋の悩みっ・・・」
私がいつきちゃんに指をさして言うと、いつきちゃんは猛ダッシュで私の口をおさえた。
「い、いわないで~~っっっ!」
【もしあらたくんにばれたら恥ずかしい~。】
ああ、そう、そうだよねー!恥ずかしいかあ。
って、いつまで抑えてるのお!苦しいっっ。
「い、いったん、いったん落ち着いてーいつきちゃん!」
「わ、ご、ごめん!」
はあ、はあ、死ぬかと思ったあ・・。あれ?いつきちゃん、ちょっと暗い顔?
【今日もブレスレット、渡せなかった。】
「ブレスレット?何それ?」
「え?え?なんで知ってるのぉ??」
あーやっちゃった。テヘッ。
「私はキモチ相談所ゆりなっ!いつきちゃんのこと、お見通しだよっ!」
そしていつきちゃんにカクカクシカジカ・・・。
「えぇ?本当にわかるの?すご~い!」
ふふん!やっと私の力に本気でリスペクトしてくれる子が現れたっ!
「とにかく、いつきちゃんを次の相談所メンバーにしてあげるっ!三組代表!ということで、相談所教室へレッツゴー!」
「れっつご~!」
ゆりなおっそいなあ。
そもそもゆりなが相談所に集まってって言ったんだよね?
なのにまだなの?
「私、そろそろ帰るわ。ありさ、あとはよろしく。」
「えっ!待って!」
そうしたら私一人になっちゃうよ~。
ゆりなに今のキモチ覗かれたら絶対だめっ!教室一人が怖いとか、そんなこと思うの私ぐらいだもの!
「じゃ、さよな・・・らああっっ!」
まりんがぶつかった!?誰に?幽霊に?おばけに??きゃああ!
「連れてきたよー!三組代表!って、ちょっとありさ、怖がりすぎだよ?私をおばけとか、思わないでよおー。」
げっ!もしかして・・・。
「心の声、丸見えだよ??」
はあ・・・これで私がかなりの怖がりだってこと、知られらっちゃったかあ。
「最初からわかってたけどねっ!っと、みんなに紹介するよ!この子が恋心いだく乙女、いつきちゃんだよーっ!」
放課後の校舎にこんな大きな声だしていいのかな・・・。
「あ、あの・・・もしかしてさっき言ってた相談所ってここ・・?」
「そおー!メンバーはもう二人もいるんだ!いつきちゃんの悩み、まりんとありさにも言ってくれる?」
いつきちゃんの悩み?
いつきちゃんってたしか、すっごい乙女で可愛い物いっぱいもってるんだよなあ。私やゆりなみたいな女子力0人間は近づきがたい・・。
「ああー!ありさ、私が女子力0ってどういうことおー!」
お、大声で言わないでよおー!
あ、そうだ、いつきちゃんの悩み、なんだろう?
「心の中でも話そらすんだねありさは!」
めっちゃ怒ってる・・。結構女子力ないのコンプレックスだったんだ・・。
「あのぉ・・そろそろいいですか?」
「あ、ごっめんごっめん、ありさが変なこと思うから、話それちゃったね。どうぞ!」
いつきちゃんは教室に入り、教卓の前に立つ。
私たちはとりあえず席に座った。
「えっと、私・・実は、実は、恋しててるんです!」
えっと・・うん。知ってた。
ゆりなはともかく、あまりいつきちゃんのこと知らない私でもまりんちゃんでも、当然のようにうんうんうなずく。
やっぱり、その悩みかあ・・。
だいたいは気が付いてたけど・・。
いつきちゃんは乙女なうえに、思ってることがすぐ顔に出て、心が読めなくてもわかっちゃう。
あらたくんの前になると顔がトマトみたいに真っ赤になって、別のクラスながらものすごく目立ってる・・。
それに気づかないあらたくんはかなりの天然だろうね。
「この、この、手作りのブレスレットを渡したいの・・。でも、いつも失敗しちゃって。」
女子力0のわたしじゃあ、難しい悩みだなあ・・。
「ブレスレットはいくつ持ってるの?」
まりんちゃん、何を聞いてるんだろ?もしかしてブレスレットほしいのかな?
「えっと、3つくらいかなあ。あ、でもね、あら・・好きな子のブレスレットは、心を込めてつくったの。」
今完全にあらたくんって言おうとしたよね。
「そのうちの一つは自分でつけて、ブレスレットに興味を持たせるのはどうかしら?そうすれば、自然をブレスレットを渡せるでしょう?」
おお、それいいかも!
そしたら、ゆりなが教卓の前にいきなり立った。
「チッチッチ、乙女心をわかってないなあー。」
え?ってことはゆりな、恋をしたことあるの!?
「この私、実際に恋をしていなくても、乙女の心は何度も読んできたからねー。つまり、いつきちゃんは自分の気持ちを伝えたいんでしょ?あらたくんに!」
あ、恋したことないんだ・・。
「・・って、今あらたくんって!ば、ばれちゃったあ~。」
「え?だってまりんもありさも知ってたみたいから、てっきり話してるのかと・・。だれに隠してるのかなあーと思って。あはは・・。」
うん。もうばれてるの。
それにしても、好きって気持ちを伝えるって、一体どうやって・・?
「さあ、乙女の恋応援大作戦、開始!!」
いつも以上に張り切ってる。
恋できないゆりなって、かわいそうだなあ・・。
あ、私もか・・。