表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
QM  作者: つー
9/10

ミロンとエミリア

エミリアと呼ばれた少女は、ふんわりとしたパジャマ姿だ。部屋に侵入され、布団をはぎ取られ瞳は怒りに満ちている。

「エミリア、聞いて驚け。私は煉獄剣を手に入れ、勇者にクラスチェンジしたぞ。戦局を変えうる力を手に入れた!」

ユーキはカーテンを開け放ち、煉獄剣とジョブカードを見せながら胸を張った。

「探索は大成功、胸も成長?どちらも、眠いから興味ないです」

エミリアはダルそうに布団に顔を埋めながら答え再び寝ようとする。

「命がけの探索から戻った友人に対し冷たいな。まあ、良い。エミリアに頼みがある。この無人島育ちの少年、ミロンに大陸のことを教えてくれ。お前は、安寧国一の知識の持ち主だからな」

エミリアは布団から顔を上げミロンをチラリと見た。

「・・・見た目は嫌いじゃないです。でも、眠いから興味ないです」

「そう言うな。ミロンには我々の仲間になって欲しいと思っている。だが、大陸のこと、安寧国のことを知った上でミロン自身に進む道を選んでもらう。と言うわけでエミリアに教育係りを任せる。私は戦争の準備があるから、そろそろ行くぞ。さらばだ」

ユーキが走り去り、部屋にはミロンとエミリアが残った。エミリアは布団に再び包まり、

「知識は自分で得るものです。教える気はないです。私は寝ます」

エミリアが寝始めたので、ミロンは仕方なく部屋に山積みにされた本を眺めた。シロに教わり読み書きはできる。まずは手近にあった地理の本を手に取り窓辺に座り読み始めた。

この大陸は東西南北の4地域に分けられる。安寧国は南地域にある。この地域は安寧国と覇王国の2つの大国があり絶えず戦争を繰り返してきた。戦況は5分と5分だったが、3年前の戦闘で安寧国は大敗し国王が戦死する。以降の戦闘で負け続け、国土の大半を覇王国に奪われたようだ。

大陸の北地域には聖女信仰の教団が治める聖王国。西地域には魔法技術が発達した魔法国、東地域は侍達が支配する独特の文化を持った東国がある。各国の文化の違い、工業品や特産物、人間外種族の住む地域など、ミロンにとっては全てが初めて知る知識だ。夢中になって読み続け、気が付けば窓から夕陽がさしている。

「うーんです」と可愛らしい声が聞こえ、ベッドの布団がもぞもぞ動く。エミリアが起きたようだ。ベッド脇に掛けられたガウンをはおり、周りの本の山をかき分け小箱を選び手に取った。

「ごはんです」

ミロンは手渡された小箱を開けると中には、少し萎びたサンドイッチが入っていた。

「まだ、安全です」

無人島育ちのミロンには、この程度の鮮度不足は問題ない。「美味しい。美味しい」と食べ始める。食事中に日が落ちるとエミリアがランタンを灯してくれた。

「暗いと目に悪いです・・・ミロンは無口ですね?」

「島ではシロさんと2人暮らしだったし。シロさんも無口だったからかな?ユーキ以外の人間とは、あまり話したこともないし」

「・・・島でのこと知りたいです」

無人島でシロさんに育てられたこと。ユーキとダンジョンに入ったこと。落盤で大怪我した自分をユーキが助けてくれたこと。エミリアもミロンの隣に座り話に聞き入った。ユーキの船で島を出た話しが終わるとすっかり夜も更けていた。

「ミロンは偉いです。私はダメです」

がさごそと周囲を探し、本の栞代わりに使っていたジョブカードをミロンに見せた。


----------------------------------------------------------------

ジョブカード

名前:エミリア クラス:書生 レベル:10 筋力:G 体力:G 敏捷:G 魔力:G

スペル:なし

スキル:ランクC 名称:知識百般(書物)

効果:全あらゆることに対する書物レベルの知識

特性 :対人恐怖症

----------------------------------------------------------------


「私は対人恐怖症です。部屋から出るのもベッドからでるのも怖いです。人と会いたくなくて夜だけ起きています。だけど、ミロンは何故か怖くないです」

「俺は精神的にはナーガ族だからね。まだ、人間と言われてもピンとこない。シロさんとの生活以外は俺は知らないし」

「シロさんとの別れ、寂しいですか?私はミロンよりお姉さんです。私の胸で泣いても良いです」

「寂しいけど男だから泣かないよ。それに島のトレントの聞いたけど、女の胸は涙を吸わせるものではない。自分で吸うものだって言ってたしね」

「・・・そのトレントの話は忘れて下さい」

ランタンの明かりの中で2人は明け方まで話し続けた。こんなにも長い時間、話をするのはエミリアにとっては初めての経験だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ