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QM  作者: つー
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14年後

嵐の夜から14年の年月が経った。

ナーガに変身した白い大蛇は、母親代わりとなり赤子を育てた。死にかけた赤ちゃんも今では元気な少年へと成長している。ナーガは人間には名前が必要と思い、少年を島の名前を取りミロン、自分をシロと名付けた。


2人の1日は狩りから始まる。今日は森の中を獲物を探す。

「ミロン。あのウサギを捕らえるのじゃ」

ミロンは慎重にウサギに近付き、ジリジリと距離を詰め飛びかかったが、ウサギはミロンの腕をすり抜け、嘲笑うようにピョンピョンと森の奥に逃げ去った。

「シロさん。また、逃げられた・・・」

「困ったの。ウサギも狩れんとは情けない。狩りが出来ねば巣立ちができぬぞ」

「俺にはシロさんみたいな腕力も早さも魔力もないよ」

シロは10メートル近い体を俊敏に動かす腕力があり、高位の風魔法も使える。ナーガと人間の身体能力は比べるまでもない。魔法もミロンは1つの付与魔法しか使えなかった。落ち込み、うつむくミロンをシロは尻尾でグルグル巻きに抱き締めながら慰めた。

「我も12歳の頃は体も小さくウサギも狩れんかった。焦らずに鍛錬するしかあるまい。食事の後は砂浜で走り込みじゃ」

「今日も頑張って鍛錬する。シロさんみたいに強くなりたいから!・・・イテ!」

素直に決意する姿に堪らなく可愛さを感じ、思わず強く巻きつくシロだった。


砂浜での鍛錬が終わるとミロンは友人に会いに行く。友人と言ってもこの島には、人間はミロンしかいない。今日は、しゃべる木トレントに会いに来た。

「・・・今日もこっぴどくやられたようだな・・・」

幹周り5m以上ある大木に目と口に当たる裂け目が現れ、大木らしい重厚な低音が響く。

「浜辺で1時間走り込み。その後は組み手をしたけど、シロさんは力が強いから、組みついても直ぐに投げ飛ばされたり巻きつかれたりして、全く歯が立たないよ」

「・・・けしからん。詳しく話してくれ・・・」

「シロさんの得意技は、尻尾の足払いで倒れた相手を寝技で締め上げることなんだけど、尻尾の射程が長くて避けるのが難しい」

「・・・ますます、けしからん。タユンタユンなシロ殿に組みつき、押し倒され、巻きつかれ、抵抗しながらイロイロする・・・けしからん・・・」

「これは鍛錬だからね。シロさんは悪くないよ」

「・・・悪くない。むしろ、良い意味で悪い。シロ殿は最高の女性だ・・・あえて、ロールミーと叫ぼう・・・」

「巻きつきは死ぬほど痛いんだよ?でも、シロさんが最高というのは共感。他の女性を見たことないけどね」

「・・・人として生まれ男として生まれたからには、誰だって最高の女性を求める・・・最高の女性はこの世に1人とは限らない・・・己の理想の萌えを追求し、求める心のままに全ての萌えを求める。それが心理だ・・・」

「ふーん。世界にはどんな最高の女性がいるのかな?トレントは知ってる?」

「・・・小生は・・・巨乳・モン娘属性だ・・・想像するだけで・・・けしからん・・・この世界に溢れる萌えのバリエーション、可能性は無限大だ・・・ミロンよ。己の求める道を行け・・・」

「いつか世界を旅し、最高の女性を求めまくるよ!」


2人は時が経つのも忘れ、熱く男の夢を語り続けていたが森の異変に気づく。周囲の鳥や獣のざわめきが大きくなり、一羽の小鳥がトレントの枝に止まりピーピー鳴き始めた。

「・・・鳥の言葉を通訳しよう・・・島に人間の船が近づいている・・・皆、怖がっている・・・ミロン、シロ殿に伝えてくれ・・・」

初めて人間に会えるかもしれない、そう思うと自然にかけ足になりミロンは巣穴へと全速力で駆け戻った。


合流したミロンとシロは船が止まった入り江に向かった。船は小型だが帆船型の軍艦のようだ。人間達はボートに乗り換え、2人がいる砂浜に向かって漕ぎ始めている。

「人間の船じゃと?この島には100年以上、人間が来なかったのじゃが。何用かの」

「どんな人間かな?うわ!5人も乗ってる!」

「皆、武装しているようじゃの。人間など我の敵ではないが注意を怠るな・・・」

砂浜に着いたボートから4人の兵士風の男が降り、最後に銀髪の少女が降りた。少女も武装している。軽鎧を身につけ、腰にはロングソード、背中に盾を背負った10代後半の美少女だ。少女は凛とした声で話し始めた。

「突然、押しかけ申し訳ない。私の名はユーキ。我々は安寧国からこの島のダンジョン探索に来た。島の皆さんに迷惑を掛けるつもりはないから安心して欲しい」

「人の娘。深いダンジョンに何用じゃ」

「私の先祖がダンジョンに封印した武器を回収に来た。この無人島に蛇神様や人間の子供がいるとは思わなかった。武装し兵士を連れて訪問する無礼をお許し願いたい」

「無礼は許してつかわす。じゃが、深いダンジョンには高レベルの魔物が住みついておる。お主はともかく兵士達では死んでしまうぞ」

「初めから私1人で探索するつもりでしたので心配には及びません。不躾なお願いだが出来ればダンジョンの場所をお教え頂きたい」

シロがチラリとミロンの様子を見ると目を輝かせながら人間達を見つめていた。

「よかろう。この子に道案内させよう。未熟じゃが魔法が使える。ダンジョン内にも連れて行け。役に立つじゃろう」

「蛇神様、ご配慮感謝する。少年、早速だがダンジョンに向かおう。宜しく頼むぞ」

ユーキは右手を差し出し握手を求めてきた。ミロンは「宜しく」とボソボソ呟き、はにかみながら握手を交わした。


ダンジョンに向かう2人を見送りながら、シロは巣立ちの時が近いと感じていた。


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