嵐の夜に
嵐の夜。
強風と激しい雨の中、生まれたばかりの赤子を乗せたボートがミロン島と呼ばれる無人島に流れ着いた。
雨に濡れ、体力を奪われていく赤子は、最後の力を絞り出すように悲鳴のような鳴き声を上げ続ける。
暫く時が経ち、鳴き声が届いたのだろうか。ボートに白い大蛇が近づき、赤子を咥え島の中へ消えていった。
大蛇自身も何故、自分が人の赤子を助けたのか解らなかった。100年近く生き多少の知性は身に付けたが、今まで他の生き物を助けたいと思ったことはない。だが、嵐の音に紛れ微かに鳴き声を聞いたとたんに巣穴を飛び出していた。
巣穴に戻った大蛇は途方にくれた。赤子は雨で体温が下がり死にそうだが自分には抱き上げる手もなく、温める体温もない。無駄と思いながらも、とぐろを巻き赤子を包み込んだ。安心したように赤子は泣きやみ、お腹がすいたのか大蛇の鱗に口を押し付け吸いだす。
(我は蛇じゃ。乳など出ないのじゃが・・・)
哀れに思い大蛇は吸わせるがままにした。体温はさらに下がり、吸う力も弱くなる。大蛇は、余りに弱々しい死にかけた赤子を助けたいと思い始めた。自分の命を分け与えることはできないか。
この命を助けたいと強く思った直後、変化が現れる。
周囲が淡い光に包まれ、赤子を中心に魔方陣が現れた。光は徐々に強くなり、大蛇は眩しさに目がくらみ一時的に視力を失った・・・
光と魔方陣が消え、視力が戻った大蛇は自分の変化に気がつく。
自分の体が上半身が人間、下半身が白蛇の生き物、ナーガに変身していた。ナーガ族の例にもれず、大きなおっぱいがタユンタユン揺れている。変身に驚きながら、両腕で赤子を抱き上げると冷たさに驚く。ナーガになったことで自分に体温が生まれ、赤子の危険な冷たさを感じた。
ナーガは赤子を胸に抱き、体温で温め始めた。赤子は乳首に吸いつきチュクチュクと吸い始める。
これなら助かるかもしれないとナーガは思った。