プロローグ8(リチアサイド)
あと一つで一応プロローグ終了です。無駄に長いとは言わないで下さい。
何処まで過去編を書けばいいか悩んだ結果強引に入れただけです。
次の話はまだできて無いにも関わらず他の話を色々と思いつく限り書いてるので少し間が空きます。楽しみにしてくれる数人の方には申し訳ないですが、わたくしの他の中途半端な作品を眺めて気分転換をしていてください。別にいいやと思う方は悲しいですがそれでいいです。読んでもらう側なので無理は言えません。・・それではご一読お願いします。
「このまま私の剣の錆になりなさい・・覇!!」
気合の一閃を放つ私の身体能力は、昇治の契約のお蔭で契約する前より格段に上がっていた。
そして、このまま私の双剣によって結界ごとエドモンドさんの形をしたクリーチャーを葬れるかな?と思った時、エドモンドさんの体が大きく変形した。
「な、なに?!」
その事に驚いて一瞬鈍った剣閃を変形した手?に片方の剣を絡め取られてしまう。
「あ、しまった!」
「おやおや、貴女は確かリチアさんでしたか?何処か雰囲気が変わりましたが・・・まさか、もう契約をしてしまったのですか?」
化け物に成り果てたエドモンドの質問に、私は頷いて答える。
「ええ、見事昇治様が【資格者】の権利を得られて、その恩恵を私が頂く事になったの。なので貴方にはもう力を得られる可能性は消えたわよ?」
私は化け物に嘘を言って戦意を失わせる方法を取る・・が。
「いえいえ、何のそれしきの障害は気にしませんよ?知ってますか?我々人型のクリーチャーは貴女方人間の器より余程大きな器が有りましてね?例え資格者に契約をして頂かなくても、資格者の方をこの身に取り込めば、その力を得ることが可能なのです。更に只の術者でも取り込めばその術者の能力を少なからず使える様になるのです。そして、私は今まで結構な数の術者を人知れずこの身に取り込みましたから、少々の攻撃では今の様に武器を奪い取れますよ?」
そう言いながら、私の剣を無数の触手でお手玉する様に弄ぶ化け物。
その様子に、どうやら剣だけでは勝てないと思った私は、自分の得意魔術である召喚をする。
「そう言う事なら、私も今の状態でどれ位の者が呼べるか試してみましょうか。【我が呼びかけに応えよ】出でよ<召喚獣ペガサス>!出でよ<召喚体ガラム>!出でよ<召喚体サムーア>!」
私の呼び出せる中で特に攻撃力のある鬼人ガラムのサム。
回復役の水生人サムーアのヨハネ。
機動力に優れた天馬ペガサスのベル。
この三人?は私の家の固定空間で飼っていて、召喚魔術で直ぐに呼び出せる召喚生物だが、召喚に必要な魔力が尋常じゃなく、特にペガサスのベルは最近になって漸く1分位呼び出せるようになった私の親友だ。
そして、クリーチャーの討伐に欠かせない回復役のヨハネも大事なパートナだしあまり呼ばない鬼人のガラムも強い相手との戦いには必ず出したい者だ。
このほかにも未だ居るが、今の状態でどれ位の友達を呼べるか試すには、この三人が最適だ。
何せ、普段の私の魔力なら、1分も呼べばベルは自動で空間に戻ってしまうからな。
さて、そろそろ検証の開始と行きますか。
「サムは化け物の触手を全て斬り払って?ヨハネは遠くから傷付いた時に傷の修復。ベルは私を乗せてアイツの頭上に飛んで。」
「「「承知!」」」
私の指示で一斉に行動する皆。
ここら辺の意思疎通にも、魔力の質の向上が有る様だ。
今までなら私の言葉が分かるのはベル位だった。
そして、私が出した指示をベルが通訳して、ベルは空間にお暇が流れだった。
けど、今は昇治の契約のお蔭でその心配もなく、皆が意思疎通を出来る様だ。
「せやあああ!」
気合の入った剣閃を煌めかせたのはサムで、化け物の触手を一撃で十本くらいは纏めて斬り飛ばしている。
「私らも行くよ?ベル!」
「御意。」
頷いたベルが、天馬の本領発揮とばかりに風の魔術を行使しながら私を化け物の上に連れて行く。
そして、そのまま風の魔術で私と化け物の間の触手を薙ぎ払う。
「邪魔の物は消えるがよい。<ウインドストリーム>」
ベルの詠唱と共に放たれた魔術が触手を薙ぎ払う。
下ではサムが相変わらず近づいた触手を容赦なく叩き切っている。
あれなら間違っても昇治の方には攻撃は届かないだろう。
それにしても契約の効果が凄い。
これだけ召喚体が暴れまわっても何の負荷も感じない。
それどころか後から後から魔力が溢れてくる。
お爺様たちから伝え聞く海外の資格者の化け物たちの側近の話も、誇張だと思っていたが、これを実際に体験してはそうなる筈だと頷くしかないぐらいだ。
だが、それでもなおこの化け物は堪えてないと言わんばかりに涼しげだ。
私も通常のクリーチャーの討伐は何度もやったことが有るし、人型のクリーチャーの相手もした経験はあるが、これほどタフな化け物は記憶にない。
どうやら相当量の術者を喰らって来ているようだ。
負けるとは思えないが、勝つには苦労しそうだ、けど昇治の講義が終われば新たな力が使えるだろう。
私はそれまでの時間稼ぎで良いのだ。
そんな事を思っていると、化け物に成り下がったエドモンドが話しかけてきた。
「おやおや、幾ら資格者に契約をして貰って能力を得たとは言ってもまだその程度ですか。これなら過去に喰らった術者の方がよっぽど歯ごたえが有りますよ?」
向こうは挑発の心算だろうが、向こうもこちらの攻撃を防ぐので精一杯なのは見たらわかる。
ああやってこちらを怒らせて力ませ、魔術の失敗を狙っているのだろう。
現にサムは徐々に奴の懐に入りかけている。
もう少しと言った所だ。
これからウインドストームによって開けた場所から双剣で斬り込む前に、一言言って置こうと思い私も話しかける。
「それにしては先ほどから私を傷付ける事が出来ないようだけど?アンタくらいの気性なら弱みを見つければそこから攻撃をしそうなもんだけど?実はその触手みたいな攻撃法しかないんじゃないの?」
私は十分に剣に魔力を纏わせ、ベルから飛び降り、渾身の一撃を打ち込むべく斬りかかった。
「ハアーー!」
「甘い!!」
私の気合の一閃と奴の触手が交錯する。
双剣にギュルルと纏わり付きそうになる触手を魔力が弾く。
そして、その脳天に剣を振り降ろす瞬間・・・
「おねえちゃん・・ニアを殺すの?」
「な!!?」
触手の中の一本がニアちゃんの姿になる。
その突然の事に私は驚いて剣を止めてしまった。
その隙に私の体をその触手で絡め取るエドモンド。
「くっ・・しまった・・」
「あはは!掛かりましたね?これは私の奪った能力の一つで一部擬態と言います。そして、先ほどの娘は過去にこの体の持ち主であったエドモンドの本当の娘をそのまま喰らって取り込んだ物。なので、このエドモンドも、その娘もまだ生きていると思われてますが、実際は私が一人二役を演じているのです。・・まあ、そんな説明より、どうですか?その触手の分解液の効果は。徐々に衣服が溶けて来てるでしょ?」
奴の言う通り、先ほどから徐々にではあるが、触手に触れている箇所から段々と衣服が溶けている。
このままではじきに全裸にされてしまうだろう。
だが、私にはベルもサムもいる。
これ位どうという事は無い。
「サムはそのまま攻撃を続けて。ベルは私ごとこの触手を吹き飛ばして。」
「「御意!」」
二人の言葉の後、奴が「なに!?ええい!これでもか!!」と言いながら触手の拘束を強めたが、ベルたちは構わずに。
「しゃあああ!」
「全てを細切れに<サウザンドカッター>!」
サムの更に勢いを増した攻撃に「くそ!これでは再生が追い付かない!!」と言いながら焦る奴を尻目に、ベルの無数の風の刃が私ごと触手を切り刻む。
だが、唯の触手と違って魔術師としての魔術に抵抗力のある私にその攻撃は霧散し、触手のみ弾け飛ぶ結果となった。
そして、拘束の解かれた私を見て、奴は悔しそうに
「おのれ!契約の効果がそこまで強いのは予想外ですね。これは本気を出さねば成らない様ですね。」
奴はそう言うや、今までは触手を無造作に自分の周囲に展開させていたのを、所謂一点集中型とも言うべき形、鞭の集合体の様な感じに変化させる。
そして、一先ずはと言った感じで手近に迫っているサムをその長くなった触手の鞭で弾き飛ばした。
「ぐあああ!」
イキナリ強くなった圧力に耐え切れず、一旦その場から退くサム。
そして、拘束を逃れ自由になった私と空中で待機していたベルが駆け付け、三人が再び集う。
「合体して急に力強くなったわね。・・どうしようかしら。このまま昇治様を待っても良いんだけど、貴方達はあまり攻撃の成果が無くて不満でしょう?」
「御意。・・・ならば。少し、主の魔力が上がった今なら出来るかも知れない巨大な風の刃を放つ、量より質の攻撃をやってみましょうか?その後ろからサムが突破し、主が本体を強襲。出来れば止めを刺すと言った感じで如何でしょう。」
「・・そうね、ならそれで効果が無かったら、昇治様に代わって貰って一気に止めと行きましょうか?」
「御意。」
「はい。」
そうして、私たちの最後に成る攻撃が開始された。
先ずはベルが
「風は我が支配下に、鳴り響け、天空より来たりし神の雷≪トールハンマー≫!」
ベルの詠唱を加えた風と水の上級魔法で奴の集中させた触手の鞭を一瞬にして蒸発させる。
そして、その後ろからサムが風の道を通って自慢の剣を振り降ろす。
「・・何の!」
しかし、サムの攻撃は間一髪の所で気付いた化け物に避けられる・・が、それも予定通り。
化け物が避けた所に走り込んでいた私が止めとばかりに双剣をクロスに放つ。
「せあああ!!」
「・・く!まだ・・だああ!!」
「・・・え?きゃああ!」
私はイキナリの衝撃に思わず悲鳴を上げた。
吹き飛ばされて私が見た物は、更に膨れ上がったタコの化け物の姿だった。
そうして、そこで漸く念願の声を聴いた。
勿論、昇治の声だ。
「ご苦労様、リチア。早速だけど、本契約の次の段階に行くよ?それであのタコを始末してココを出よう。」
「はい、我が主様。私は命令に従うだけです。後はご存分に。」
そういって、私は後を昇治に任せることにした。