プロローグ6(欠片(魂)の獲得)
また回想回・・しゃれ?
皆と別れて島を歩いて地図の神殿まで来た俺は、その神殿の荘厳な様そうに眼を奪われた。
とてもじゃないがこんな人里離れた孤島に建てる様な神殿ではない。
言うなれば白亜の大神殿とも言うべき外見だった。
周りが森に囲まれた場所だからこそ、なおさら目を奪われる結果に繋がったのかもしれない。
そして、その入り口の様な扉に西洋の剣を模した石創りの剣とそれを掲げる大柄な青年の石像が描かれていた。
そして、それをもう少し良く見ようと思って近づいた時
ドクンッ!
と体の奥から何かが目を覚ます様な感じがした。
(な、なんだ今のは!俺の体に何が起きたんだ?!)
そうは思っても、なにも答えは出ない。
仕方なく先ほどの異変を無視して中に入る。
それと同時に森の方から何やら足音が聞こえるが、振り向いた時には誰も居なかったので気にしないことにした。
そして、中を進むにつれドンドン大きくなる体の奥の何か。
それを意識的に気付かない様にしながら神殿内部を見やる。
中は外見よりも更に綺麗で荘厳だった。
外からは只の石創りにしか見えなかったが、中からはハッキリと窓にステンドグラスが使われているのが分かる。
どうやらこんな所にも魔道的な細工が施されているらしい。
一般人の俺にはどういう物か想像は付かないのだが・・・
そして、広さも外からの見た目とはかけ離れた広さだ。
普通の日本の教会が何個も入るくらいの広さに、等間隔に配置された柱。
そして壁際に配置された今にも動き出しそうな鎧の騎士の石像。
見ているだけで圧倒されそうな物々しさだ。
(ひぇ~、こんな所があるとは流石外国は違うってとこだね~。日本でこんな所があるとしたら、其れこそどうやって守ったか分からん奈良の大仏の納めされた東大寺の科学と魔道の集大成の様な寺院位だからな。あれを見た時は驚きで開いた口が塞がらなかったが、ここはそれに匹敵する凄味が有るな。)
そんな感想を抱きながら神殿を歩いていると、先程の森の足音と同じようなテンポの足音がゆっくりゆっくりと近づいていたので、俺は少し素早く柱に隠れて観察しようと行動を起こした。
「あ、ちょっと・・」
聞き覚えのある声が制止の声を上げる。
その声に気付いた俺は、慌てて柱から相手の目の前に出た。
「いきなり隠れないでよ。何事かと思ったじゃない。警戒しなくてもアンタのやろうとすることの邪魔はしないわよ。」
「何だ、お前か・・もしかして早速誰かに狙われているかと思ったぞ?」
そう言って俺は相手を確認して安堵した。
足音の主は先ほどの船のお客のリチア。
恐らく彼女は俺の行動の監視をしていたのだろう。
俺がこの神殿の神の欠片と言う奴を奪って逃走しないか、もし逃げたらその場で始末するための見張りと言った所だろう。
そして、俺の警戒が緩まないのを感じると、何か警告じみた物言いをしてきた。・・しかも耳元で。
「いい?私を疑うのは良いけど、さっきのエドモンドって人も注意しなさいよ?私はここに何度か足を運んでいるし、船の人に顔を覚えられる位乗っていたけど、あの人たちは私らも初対面だから。それに変なにおいもするしね?」
「変な匂い?」
「ええ、一般の人には分からないけど、魔術師には魔術師の、クリーチャーにはクリーチャーの、隠しきれない魔力の違いから来る匂いが有るのよ。アンタからは船に乗る時に確認した所その匂いがしなかったけど、船にいる間中ずっとその変な匂いが離れないの。ずっと何かを狙われてるような視線を感じるし。」
「そんで、その匂いが今もすると?」
「ええ、ココまで近づいて何もないアンタは大丈夫だろうけど、さっきから抑えようとして抑えきれないクリーチャーに近い感じの魔力の匂いがするわ。」
(おいおい、お前はイヌか猫じゃねえのか?)
俺のその微妙な表情にリチアは顔を話して慌てて否定してきた。
「ば、馬鹿!私はそんなんじゃないわよ?この魔力の匂い・・・」
そんなリチアの大声の否定は近くまで来ていたらしい追跡者にも聞こえていたらしく。
どうやらあっという間に匂いは何処かへ消えて行ってしまったらしい。
リチアの顔が安心やら、しまったやらの微妙な顔になっている。
「は~。折角追って来ていた奴を締め上げて、クリーチャーなら返り討ちにしようと思ってたのに。・・けど、油断しないでね?」
残念がっていたと思ったら、イキナリ俺に注意を促してきた。
「何が?」
何のことか分からん俺は、すかさず聞きただす。
「さっきの逃げた奴が・・・ってアンタは匂いが分かんないから確認も出来て無いようだけど、確かにクリーチャーの魔力があったわ。そして、さっきの声で一気に警戒されて逃げられた・・・と思うけど。」
「けど?
「ただ魔力を感づかれない位距離を空けただけっていう事かも知れないって事。もしそうだったらアンタの目的の肝心な所で邪魔されるかも知れないからね?」
「なんだ?俺の目的に何かの儀式でもあるのか?」
「アンタの目的は恐らく【神の欠片を】を受け入れる事の試をする事でしょう。占い師かなにか知らないけど、この神殿へやってきて人生の転機が来るって事自体がその証明だし。なら、その資格者に成るための儀式として、他の人達の例が近くの者や物に力を与える事出来るってのがあるからね。あわよくば他の者を殺して於いて、自分がその対象になろうって事かも知れないから。」
「クリーチャーがその対象になれることが有るのか?」
「えっ!?知らないの?」
俺の発言に驚くリチア。そして、しょうがないと言った顔で説明して来る。
「勿論よ。今まで誰も何も近くに居ない状態でその資格者に選ばれた人が過去に何人か居て、その所為で当たり前のように近くにいたクリーチャーがその恩恵を受けて、しかも主である資格者を殺してその力を奪ってその後の脅威に成っている事例が有るわ。・・今もその中の数体は何処かに潜んでいるらしいし。」
(怖いな、それ。それじゃーもしかしたら、何も能力を得られない上に、化け物に力をやることになるって事じゃねーか。・・いや、待てよ?)
「なあ、さっきエドモンドさんに聞いた話では、欠片の力は人には大きすぎてそんなに受け入れられる奴が居ないって話だが、それも作り話か?」
「いいえ?それは事実よ。けど、クリーチャーの体の機能が人間と同じに考えたら変でしょう?そこは人間と違って幾らでも受け入れられると思った方が良いわ。実際狙っている訳だしね?」
(まあ、それりゃーそうだな。自分の物に成らない物を狙っても意味は無いし。)
そうこう話をしてる間に時間が経っているので、続きは歩きながらする事にした。
「わかったわ。一応アンタが襲われない様に私が近くにいてあげるから、もし資格者に選ばれたら宜しくね?♪」
「・・・チャッカリしてるな・・」
「当たり前でしょ。何事も先攻投資は大事なのよ。・・まあ、今回は空振りの可能性が大だけどね・・」
そう言って俺を見ながらため息を零すリチア・・・
(この女ァー。もし選ばれたらベッドの上でヒイヒイ言わせてやる!!)
そうして、神殿の螺旋階段を下り、地下の空間に成っている大広間に降りてくると、この先【神の欠片】の祭壇につき、関係者および初訪問者以外立ち入り禁止と書かれたプレートが掲げられていた。
「なあ、欠片ってのは一度試しただけで結果が分かるモンなのか?」
「ええ、欠片にも依るかもしれないけど、基本は努力や根性では届かない本当の【資格】がある者しか選らばれ無いとされてるわ。」
(ふーん、なら初めての奴しか意味ないってのも納得がいくってもんか。)
そんな感想を抱いて後、いよいよ祭壇の方へと歩を進めることにした。
そして、遂に神の欠片が納められているらしい祭壇へと足を踏み入れた時、俺の体から先ほど何かが目覚める感覚が再び起こり、俺は蹲って苦しみだした。
そして、目の前50メートルは有ろうかという祭壇の【神の欠片】であろう何やら輝かしい宝玉の様な玉が俺の中の鼓動に連動して瞬き始めた。
(な、なんだ!?この感覚は!)
「ねえ!大丈夫アンタ。なんか苦しげなんだけど?」
急に蹲り、苦しみ出した俺に戸惑いを感じるリチア。
それと同じように瞬く宝玉。
俺は反射的にリチアに宝玉の所まで連れて行くように頼んだ。
「っぐぅ・・、リチア。俺をあの宝玉の所まで如何にかして運んでくれ・・早く。」
「え?・・ええ、分かった。≪風よ、彼の者を指定の場所へ≫」
リチアの詠唱の様なものが終わると、俺の体は丸まったまま宙に浮き、そのままゆっくりと宝玉の所まで来た。
その瞬間。
「『おお!待ちわびたぞ、俺の魂の器よ!早速・・』」
「おやおや、まさかとは思いましたが、本当に欠片に認められるとは思いませんでしたよ。これは付けてきた甲斐が有りましたね。・・まあ、先ずはそこのお嬢さんから眠って貰って昇治君が資格者になった後に改めて僕に力を渡して貰いましょうか?」
魂が話をしてきたと思った直後、リチアの言った通りエドモンドがニッコリとしながら近づいてきた。
しかし、ニアの姿が無い。どうしたのだろうか。
「『娘よ、お前は何か知らんが感じた事のある魔力の波動を感じるな。何故だ?』」
イキナリエドモンドの言葉を無視?してリチアに話しかけてきた魂の言葉は変な感じがした。
しかし、リチアは気にすることなく同じくエドモンドを無視して魂と会話をする。
「あ、はい!私は貴方様、剣の神こと剣神クリュサオル様を守護神と奉ずる家系の子孫にございます」
「『ほう?だが、俺の魂が反応したのはそこの苦しんでいる少年だ。残念だったな?まあ、挨拶は「ちょっと待ってくれませんか・・」そう言えば煩そうなのがいたな?娘よ、少々の間の結界は作れるか?出来ないのなら俺が作るが?』」
「すみませんが、お願いできますでしょうか?私の専門は召喚術な物で結界術はあまり・・」
そうリチアが申し訳なさそうに言うと、「問題ない」と言って魂が応えた。
「『構わん。あの程度の小物、少しの威圧で十分だろうし。この状態でも小物を足止めする程度の結界は可能だ』」
魂がそう言うと、不意に俺たちの周り大凡30メートルが闇の様なドームに囲まれた。
そうして、エドモンドの声も姿も無くなった。
「『これでゆっくりと話が出来るな?・・で?少年は何が聞きたい?さっきから何か聞きたそうな目を向けているが?お前さんらが疑問に思う程度の事はある程度は知っているぞ?』」
「じゃあ、さっき俺に『待ちわびたぞ、俺の魂の器』って言ったけど、俺は一般人で魔力は無いぞ?その俺がお前の魂の器でいいのか?」
「『何か勘違いしてるようだが、俺の感覚が有ってたら、お前ら人間が魔術を使えるようになって未だ500年経ってないんだろう?俺ら神々は数千年、数万年の昔から魔術は元より、他の超常現象も扱って来たんだ。その俺らの器に魔術が使える使えないが関係あると思うか?それに、お前さんの場合は逆にその魔力が無いって事もいい具合の作用してるんだぜ?詳しくは言ったら面白くないから言えんが、適合率って奴が他とは段違いなんだ。・・・他には質問は?』」
「じゃあ、他の奴でなくなんで俺なんだ?来る前に聞いた占い師にも俺が何か特別って感じに言われたけど?」
「『それは簡単だ。お前さんは他の奴より貧弱だが、ある一点に於いては他を遥に上回る資質が有る。その一点と言うのはまだ言えんがな?言ってしまえば努力をしないだろ?そこでだ、その資質を見込んで、神から依頼を出そう。用件は他の奴の人間の手に染まっていない俺の欠片の確保。そして、もう一つはお前さんらがクリーチャーと呼ぶ者達の中に居る欠片持ちの欠片の奪取。そして、最後に他の神の欠片の確保・・如何だ?同じ人間を殺して奪うのはお前ら人間は嫌うから、その他の奴らにまけといてやるんだ。やさしいだろ?期限は死ぬまででいいぜ?人間の寿命なんざ寝ていたら終わりだ。そして、死んだ時に欠片を回収させて貰うから、その時まで俺の能力も、奪った能力も使えるようにしてやるから、精々人の為にクリーチャーの掃除でもしていろや。それで、肝心な契約方法だが一応俺の魂は特別でな?資格者に仕える様になった奴に二つの選択肢を与えるんだ。』」
「選択肢って?」
「契約の方法は本契約のみなのではないのですか?」
俺の魂に対する質問に、リチアが割り込んで聞いてきた。・・別にいいけどさ?
「『だ・か・ら、特別製なんだよ。仮契約と本契約でな?仮契約は己の血を対象に付着させながら神言で神気を注入する事。これは簡単に出来るから、お前さんがピンチになった時・・まあ、今みたいな状況で他に口の堅い奴が居れば、そいつに手を借りれば良いって事だ。まあ、これは相手の同意も要るがな?本契約は1つ上の、血の契約だ。まあ、仮の契約でも血を使うから、同じっちゃ同じなんだが少し違う。』」
「なに?血の契約?それってもしかして・・?」
「あんた・・何考えてるの?」
横でリチアが俺の顔を見て微笑ましそうにしかし瞳の奥ではゴキブリを見る目で見ていたが、俺は興奮度マックスだ。
だって、血の契約っていったら、普通・・・あれだろ?
そう思って魂の言葉を待つ・・すると。
「『血の契約とは、対象者の体の中心に己の血で魔法陣を描きながら神言を紡ぐことだ。』」
「・・え?・・・そんだけ?・・ああ・・そう・なんだ・・」
そう言いながら項垂れている俺をさっきの微笑ましそうな顔でリチアが見ている。ゴキブリを見る目は消えていた。って事は、コイツは知ってたのか?
「なあ、リチアは知ってたのか?」
「いいえ?けど、常識的に考えなさいよ。仮に女同士、男同士でアンタが言う様な血の契約の内容なら、アンタそれで本当に出来ると思う?」
「『その娘の言う通りだが、娘よ。俺にも覚えはあるが、男とはそう言う者だ。娘もその者に思いを寄せるようになったらその事が自分に影響を持つことも分かる時が来る。』」
魂の励ましにも天から地へと落された俺のガックリ感は浮上しない。
「『・・という事で、もうあまり時間が無いから、手っ取り早く本契約をするために、先ずはお前さんが俺を取り込む手順を教える。まあ、簡単だ。両手で目の前の俺様に触れればいい。そうすれば勝手にお前さんの中に入ることになる。話をしたかったら最低10回は女と交わるか、他の欠片の場所に行かんと刺激を受けないがな?』」
「え?話の為にってだけでもそんな事しないといけないのですか?」
魂と話す条件を聞くと驚くリチア。
俺も流石にこの条件には驚いた・・・が。
「『さあな?だが、何もおかしな話ではないだろう?お前ら人が刺激によって目覚めるのと一緒で、俺ら神の欠片も同じように宿主の刺激に由って目覚めると言う考えが有るって事だ。・・まあ、今回のは本当か嘘かは教えんがな?その方が面白そうだ。くっくっく。』」
(この神の奴、良い性格してやがる。この話なら、ヘタにしてたらそれをコイツに聞かれるって事じゃねえか。俺は構わんが、この話を聞いてるリチアはかなりガードが固くなるんじゃねえか?)
俺の考えが視線と顔に出ていたのか、リチアがこちらを見ながら諦めた様に宣言してくれた。
「その顔で大体の考えは分かるけど、安心して?今の状態なら、どっちにしても本契約を・・ってそうだ。契約で得られる能力はどうなりますか?」
「『ああ、言ってなかったな?仮の状態なら、契約対象の身体能力と魔術的能力が多少は上昇する。効果時間は約30分で、途中の解除は出来んから、今は無いな。』」
「確かに、今のクリーチャーが目の前に来ている状況では、その実験は命取りになりそうですね。しかも気配を消せる程の物なら尚更、確実に仕留めなければ。」
「確かに・・」
二人?の意見に同意する俺。
しかし、俺の意見が無い状況でドンドンと話が進んでいるのは気の所為か?
「『本契約の状態なら、通常で契約対象の身体能力と魔術的能力が初日に慣らしの為という事で大凡10倍、その後徐々に慣れて行って最終的には1000倍の能力になる。徐々にと言うのは俺ら神の感覚だからな?お前らの感覚だと、10年で漸く100倍が良いトコだ。そして、これは器に微調整を頼む事で、一般の魔術師と変わらん位にもできる。だから、普段は2~3倍で止めて置け、反動がきついぞ?今はそんな悠長な事を言ってられんがな?そして、もう一つの段階はあるがそれは契約後に説明しよう』」
「・・・いや、10倍でも規格外で、耐えられるか怖いんですが?・・。それで、効果は分かりましたが具体的な内容はどうするのですか?」
(まあ、それが一番重要な事だよな?)
俺もそう思って言葉を待つ。・・すると。
「『うむ。娘よ、服を脱いで生まれたままの姿と成れ』」
「「・・・え?」」
「『と言うのは冗談で、下の履物はいいから上だけ脱げばよい。娘の体長ならそれで何とか成るだろう。・・・?どうした?』」
神の言葉に固まっている俺らを訝しげに見る?魂。
そこで、何とか復活したリチアが聞いた。
「あのー?この場居て私が対象なのは嬉しいのです構わないのですが、如何して脱ぐのでしょう?」
「『最初に言ったように、血の契約とは対象者の体の中心に己の血で魔方陣を描きながら神言を紡ぐことだ。神の世界の魔法陣はお前たち魔術師の使う物とは似て非なる物。簡単に言えば壁画の様な絵画がそれに似ておるな。』」
(ふ~ん?なら体の中心に絵を描くって事か。なら相当な大きさだし、脱ぐのは当たり前か?)
「・・解かりました。その条件なら脱ぐのも何となく理解できます。・・・昇治君、いえ・・もう今から欠片を取り込んで貰うのだから、昇治様とお呼びしましょうか?」
(おお!いきなりアンタからクラスチェンジだ。・・けど、さっきまでのがあるから違和感があるな。)
「どうもしっくり来ない気がするから、今と普段は普通ので契約後に戦闘中は其れで頼む。その方が使ってるって感じがするし。」
「分かったわ。・・なら、早速取り込んでくれる?もう左程時間が無いようだから。」
確かに、言われて見れば周りの結界がほんの僅かだが消えかかっている様に思える。
「分かった。じゃあ、行くぞ?」
「『御託は良いから早くしろ。本番の時間が減るぞ?』」
何か凄い事を分かったような口調で言いやがった。
けど、時間が無くてヤバいのも事実だ。
なので、言われて通り両手でそっと挟む様にして宝石の様な玉に触れる。・・・すると。
「・・!・・おおおお!!?何か知らんが凄い。体の奥がさっきからの変な感じを取っ払ってくれた様な感じがして心地いい。それに・・ようわからんが、これが魔力って奴か?」
「『いや、それはお前らの言う処の神気って所だ。神の欠片を持つ奴同士の戦いは熟練の者が有利だから、早めに慣れるように契約対象は多ければ多いほどいいぞ?戦力にも成るしな?だが、クリーチャーの欠片持ちや、能力持ちの場合はそれ程気にすることは無いがな?』」
「なんでだ?」
「『クリーチャーの欠片持ちは殆どが一体だ。そして、強力な個体故に護衛のクリーチャーも無い。これが人間なら護衛の数で優劣が決まる。多ければ多い程有利ってのはそういうことだ。』」
ん?けど、エドのおっさん(あのクリーチャー)は一個の欠片で体が消し飛ぶって言ってたけど、違うのか?
「なあ、欠片を持てるのは一人何個までだ?」
「『それはそいつの器に由るな。俺の覚えている限りだと、死ねまでに4個、体に取入れた奴が居る。まあ、そいつはある意味規格外の奴だったから、歴史の奥に封印された筈だがな?』」
「え!?それはホントですか?!」
俺たちの会話を盗み聞きしていたリチアが割り込んできた。今ドレスを脱いだトコだ。
下のシャツがうっすら汗でおっぱいが透けて見える。
何かエロいな。
あの透けた乳をもう少しで見れるのか・・・
オラ、ワクワクして来たぞ。
「私は過去に一人が二つ目を取り込もうとして体が負荷に耐え切れずに爆発したって聞いた覚えが有りますが?」
あ、どうやらエドのおっさんの話は嘘じゃ無かったみたいだ。
「『それはごく最近の話だろう。お前たちは知らんと思うが、過去の英雄の器は皆平均二つは取り込んでいたぞ?そして、先ほど言った規格外の奴は4つ持っていた。俺の推測を言ってやると、魔術の行使が出来る出来ないに関わっている可能性があるな?』」
ん?どういう事だ?
「『これはお前らも知ってるとおり、魔術が使える様に成ったのはこの500年の間だ。だが、俺達神の欠片を見つけ、体に取り込んだ最初の奴らは、全て一般人だ。』」
「え!!?それほんと!?」とリチアが聞いた。
お前は早く脱げよ・・・
しかも、既に敬語が抜けてるし・・
「『ああ。だから、今のお前らの魔術師の数の割に【資格者】とお前らが呼んでいる器が少ないのは、魔術を使える所為で神気を蓄えたり、体に宿せる許容量が少ない所為だろう。・・まあ、魔術が普通に使える奴でも欠片を取り込める規格外の奴も中には居るがな?』」
むぅ~、そいつは羨ましい。
っていうか、話がそれたな?
「で、話は契約の話に戻すけど、さっき言ってたこの神気って奴を使ってリチアの体に魔法陣を描けばいいのか?」
「『いや、神気は普通に魔法陣を描けば入って行くから問題ない。問題は・・』」
魂が俺の考えを否定して、言い辛そうにしてくる。
何か問題が有るのだろうか?
「『問題は、普通なら魔力と神気を組み合わせるのだろうが、お前さんは昔の者の様に、魔力が無いから魔力で刻むことが出来ん。今の奴の多くは魔術師だから魔術でやってると思うがな?なので、昔の奴の様に血文字で魔法陣を描く方法を取ることにしよう。・・・切る物は有るか?』」
「ああ、ちょっと待ってくれ。」
俺が荷物からサバイバルナイフを取り出すときにふと横を見ると、リチアが今正に先程の下のシャツに手を掛ける所だった。
よし、もう少しだ!
その様子を俺がマジマジとみているので、リチアが少々苦笑しながら。
「そんなにじっくり見ないでも、後からタップリ見せてあげるんだから、さっさと説明を聞きなさい。」
「お、おう!」
「ふふふ、可愛いことで。」
何か笑われてしまった。
まあいい、後でたっぷり見よう。・・・時間と余裕があれば。
そして、ナイフを手に持った状態で見えない何かに話しかける。
「よし、持ったぞ?これで自分の指を少し切って血を出せばいいのか?どの位の量が要るんだ?」
「『量は結構要るが、要は体に文字が描ければいい。利き手の指のどれかに少しだけ切れ目を入れろ。そして、そこから薄く延ばせば量が稼げる。後は上手く描くだけだな?間違った所は少し擦って消せばいいからな?その位の恥かしさやくすぐったさは我慢させろ。』」
「了解。・・よし、リチア。そこに横になってくれ。」
「ええ。・・こうでいい?」
既に上半身裸に成っていたリチアは俺の指示で少し手で胸の先端を隠しながら体を横にする。
そして、とうとう胸から手を離し、俺の目の前に形の良い程よく実った果実が二つ弾けながら現れる。
その俺の視線にリチアは恥ずかしげに眼を逸らせながら抗議してきた。
「もう、こっちは恥かしいんだからそんなにマジマジ見ないで早くして!」
「お、おう!」
「『では、最初に・・』」
そうして、ここから長い契約の儀式の始まりだった。
最初に鳩尾の辺りから指を付け、そこから上に胸の谷間を通って喉まで行って折り返す。
その次は同じく鳩尾から先ず右に移動し、胸の先端が有る真下まで来るとそのまま先端に到達する。
この時、手で押さえている口から「あ・・ん・・」と少しくぐもった声が聞こえ、リチアの顔も少し赤くなっていたが、俺は其れよりこの作業に使う自分の血の量で頭が痛い。結構な量を使う様なのだ。
何故か描いていく先から力が抜ける感じがする。
まあ、それは置いといて、先端まで行った指を使いそのまま丸を描いて西洋の大剣のつばの様な、丁度入り口の壁画の様な感じの剣になった。
その段階で見ると異様にエロい絵だ。
何せ先端を中心に丸を書いているのだから。
そして、次に左も同じように描くが、ここで先端で血を付ける量を間違えて大きくはみ出した血を消すのに、擦った力が丁度良かったのか、またも「んん・・んんん・・昇治?わざとやってない?」と今度はくぐもった声と共に抗議の声が聞こえた。
勿論ワザとの面もあるが、これが結構キツイのは確かなのだ。
お蔭で血は流れるのに汗はダラダラと出てくる。
そして、漸くつばの部分を終わって後は殆ど三本の線を引くだけだ。
俺はそのまま鳩尾から一直線に下へ降ろすと、へそを通過して一気にパンツのほぼ直ぐ上まで指を動かした。
その時「え?そこまで行くの?」と戸惑うリチアを魂が抑えた。
「『これでもまだ短い位だぞ?これより先は娘も恥ずかしいだろうから、落ち着いた時にベッドの上ででもヤルと良い。契約の上書きは本人同士の合意があれば可能だ。破棄は無理だがな?』」
(なるほど、効果は低くなるが、今の覚悟の無い上、時間もない状態ではその条件もあり・・なのか?何か魂の楽しみにつき合わされている気がするが。)
そんな事を考えても今は無駄だと思い、さっさと続きを描くことにした俺は漸く最後の線を描くことに成功し、その後神言を紡いだ瞬間・・・
光がリチアを包み込み、体全体が物凄い魔力?というか神気?というのに覆われた。
そして、当のリチアも・・・
「すごい・・・こんなに体が軽くて魔力に満ちた感じは初めて。・・・それに他の力も感じる。」
リチアが上半身裸の儘で感動している。
そして、その裸の胸の谷間の中心位に剣を模した赤い模様が見える。
あれは丁度血文字で書いた剣の縮小版だ。
そして、力が湧き出る感じに感動しているリチアの疑問に魂が原因を伝えた。
「『それは昇治にも与えた俺達が普通に使う神気と言う奴だ。まあ、その力は謂わば昇治からの契約の印ってとこだ。昇治は絵を描くときかなりの疲労だったろ?』」
「ああ、血が出るだけであんなに疲れるとは思わなかった。」
「『そりゃそうだ。あれはいわば神気を分けてやる状態に等しいからな。お前らで言う生命力、寿命の譲渡に近い。疲れるのは当然だ。・・ああ、心配せんでも娘のはずっと効果が続くし、お前さんのは休めば元に戻る。敵を倒すうちに戻るかは分からんがな?・・・そろそろ結界の効果が切れる様だ。残りの講義は娘が戦っている間にお前さんしてやろう。てことで、娘よ。』」
「はい。これから昇治様に講義をする間の時間を時間を稼げという事ですね?」
「『うむ、分かっているなら話は早いな。今の娘ならあの程度の小者ならそうそう遅れは取らんだろう。・・だが、油断はするなよ?何時の世も、どんな生物も一時の油断が命取りになり兼ねん。』」
いつのまにか服を着ていたリチアは魂に了承の返事をして、俺に戦闘に行くことを告げる。
「はい、それは分かってます。・・では、昇治様。行ってきます!」
「お、おう!頼んだ!」
「お任せを。」
そう軽く礼をしてからエドモンドが居る方向に向かって行き、いつの間にか取り出していた2本の剣でクロスに空間ごと向こう側にいるエドモンドを切り裂こうとする所で、俺と魂の最初の講義が始まった。