プロローグ5
少し回想中断
「ってのが、俺らの出会い迄の話だ。ここから先の話はリチアが関わってくるからリチアにも確認を取らんといかんが?」
「私は良いわよ?契約の所だけボカしてくれれば、それ程恥ずかしい場面も無いし。」
昇治のパスをリチアがスルーして、話を続けようと思った時。
リチアが昇治にとって懐かしい名前を出してきた。(実際には一週間経ってないのだが。しかもスマホがさっき壊れた事で今の所の連絡方法が無い状態だ。)
「・・あ!そうだ、昇治ってドグニ家の子と知り合いだったの?今の話で聞きたかったこと思い出したわ。昇治や私と同い年の筈よ?確か、キャリー・ドグニ?だったかしら?」
「・・おおー!エライ久しぶりに聞く名前だ。・・・って俺らと同じ?アイツどう見ても中学生だったぞ?」
名前を聞いて思い出した容姿と歳が合わないことに驚く昇治。
しかし、リチアは次に少し身に覚えのある事を聞いてきた。
「・・・え?・・そんなはずはないと思うけど。・・ああ!多分その子の家の関係で姿を変える魔道具をしてたんじゃない?矢鱈と金持ちっぽい発言してなかった?」
「ん?ああ、そういや、さっきも話したが、チンピラに絡まれてた時にドサクサで幾らだ?って聞いた時に1000兆USダラーなら抱かれても良いって言ってたからな。・・思わず嫁の貰い手がねえぞって言ってやったが。」
そのままの事を云った昇治に、リチアは話を変な方向に持って行った。
「昇治?もし、もしよ?彼女が抱いてって言ってきたら抱く気ある?勿論お金の必要なしで。」
「それって契約の話か?けど、契約はお前も知ってる通り、別に抱かんでも出来るだろ。・・・その後に抱く可能性がない事も無いがな?」
「ええ、それは私も受け入れるわ。既に私は貴方の物なんだから、拒む意味も権利も無い。それは理解してる。・・けど、其れとは別にその子を場合によっては抱く心算は有る?例えば他の神の欠片を取り込んだ際のこの国の有力者から庇護者に成って欲しいと頼まれた時の先攻投資の材料に向こうが送ってきたら。」
何となく政治がらみになった話に昇治は「なんだかなー?」と思いつつ。
「向こうが嫌じゃなかったら、俺は構わん。って言うかキャリーのあの姿が魔道具なら、本当の姿はもう少し大人の女の子って事だろ?それなら俺は大歓迎だ。あの状態でもロリコンに成っても良いと思える位可愛かったぞ?リチアも負けない位の色気は有ったけどな?」
昇治がそう言いながら流し目でリチアを見ると、予想通り顔を真っ赤にしたリチアがいて、少しキャリーに対抗意識を燃やす発言をする。
「なら、昇治?もし、彼女が来ることになったら、私とどっちが可愛くて綺麗か、ベッドの上で比べて貰うわよ?それでいい?」
「おう!俺はどっちも好みだから良いぜ?っていうか、俺のスマホを直せる奴知らないか?結構いろいろ大事な奴のID入れてるんだが。もう使う心算が無くても万一の事を考えると、直す方が良い気がするからな?・・で、心当たりないか?」
昇治が聞く内容に、頭を抱えるリチア。
その様子に「おーい、如何した?」と心配げに聞く昇治。
すると、答えは思いも由らない場所に有った。
その事で盛大に溜息を吐くリチア。
「は~~。・・あのね?昇治。」
「はい?」
「貴方の言ってたキャリーさんは、ドグニ家の人間だって言ったわよね?」
「ああ、キャリー・ドグニって名乗ったからな?」
「それなら、このイタリアで最大規模の商人の家は何処か分かる?って、ああ!そうか、分からる分けないんだった。・・・御免なさい、昇治。肝心な所だけ説明させて貰います。・・・良く聞いてくださいね?」
「お、おう!どんと来い!」
何故かイキナリ敬語になったリチアにたじろぐ昇治だが、聞かない事には何も分からないので大人しく聞くことにした。
「このイタリアには王家を中心とした政治の中枢を担う機関が有るのは何となく分かりますね?多分クリーチャーに襲われるようになってからの日本も似たような感じだと思いますから、そう言うものと同じと考えてください。」
「う、・・・分かった?」
「・・・何故疑問形?」
「どうやら昇治様のオツムはそれ程優秀ではない様ですから、解かり易く説明を成さッた方が良さそうです、お嬢様。」
何やら失礼な事を言われている昇治だが、政治関連の事はあまり勉強して無いので反論できない。
仕方なく言われるままに任す昇治。
「では、簡潔にお教えしますと、国を纏めている機関の中の一つに商売の家も有り、その家の中でも最大規模の家が、昇治様の会われたキャリー・ドグニ嬢の生まれたドグニ家なのです。そして、昇治様が直したいと言われるそのスマホの関連会社も全て行きつく先はドグニ家です。
序に言いますと、昇治様に来ていただいた時にはお見せできなかった、私の家の本邸はバートン家の本邸で、主に剣の道場を経営しているほか刀剣関連の魔道具を販売するなど、それぞれの家系に見合った商売や経営をしているのです。
この様に、王を国の中でトップに据えて居てもそれぞれに独立して尚、国全体で一大事業としているシステムを、我々トップの家系の者達は【理想国家】と呼んでいます。
勿論、私の家系は剣の家系。キャリー嬢は商人の家系。家系は違えど目指す場所は一緒なので、先ほどの様な口添えもするという事です。・・解かりましたか?」
何となくだが、分かったような分からない様な昇治だが、国が一つになるのは良い事だと言う事にして、頷いて於く事にした。
「うん。解かり易い説明ありがと。何となくだけど、分かったよ。・・で、話は戻るけど。そのキャリーならスマホが直せるって事だよな?」
「ええ。恐らくメモリーカードが傷付いて無ければどうってことない筈です。場合に由ればそれ専門の魔術師がいますから、問題ないでしょう。」
「え?そんな人もいるの?物を復元できる魔術師なんて貴重じゃないのか?」
俺はかなりの驚きを味わった。
確かに普通の方法では直せない物を直せる魔術師は居るが、かなりの特殊な人材だ。
恐らく国に一人か多くても3人位しか居ないと親父から聞いたことが有る。
その俺の驚きを分かってか、リチアも微笑みながら答える。
「大丈夫ですよ。言ったでしょう?国を纏めている機関があって、全てが繋がっていると。その中には勿論、錬金術師と言った、魔術とは少し違いが有りますが、物を直すスペシャリストも存在しますよ?だから、スマホの事は安心してください。父にお願いして交渉して貰います。それとも、新しい物をドグニ家の用意して貰う事も出来ますよ?先程言いました様にメモリーカードさえ無事なら交換は可能ですよ。代金は私が立て替えて置けばいいですからね。」
「あ、あー。悪いな。助かる。」
「いえ、これも私の役目ですから。」
そうやって、甘い空気を俺達が作っていたら、スッカリ蚊帳の外状態になっていたレイが割り込んできた。
「ストロベリーエアーはそれ位にして、そろそろ移動しませんか?先ほどのクリーチャーは何処かに行ったようですが、他のがいつ来るか分かりませんし。ここから何処に行こうとしていたのですか?お嬢様。」
「ああ、それはコロッセオの地下遺跡よ。昔話を思い出してね?剣神の腕があるって言ったお伽噺聞いたこと無い?」
「ああ、そう言えば有りますね?でも、所詮誰も見た事のない作り話と言う話では無かったですか?」
リチアの話に少し心当たりが有ったような感じのレイも、あまり信じて無いようないい方だ。
「まあ、皆が分からなかったのは、それに気が付かなかったって事も考えられるのよ。現に昇治は剣神の魂の納められた神殿行く途中から苦しみが来たらしかったしね?そうでしょう?昇治。」
リチアの疑問の含まれた問いに俺は「まあな」と答えると。
「だから、もしかしたら昇治を地下に案内すれば、何かしらの反応が有る可能性があるのよ。」
「なるほど、人間探知機と言う訳ですね?主に対してのその過酷労働要求。お見事です。」
レイのその大げさないい方に、リチアは俺を見ながら・・・
「え?・・ちょっ、ち、違うのよ?昇治。貴方を苦しませたいって事じゃ無いの。嫌なら嫌でべつの方法を探すから。ダメなら言ってね?」
「ははは、大丈夫だ。苦しいのや痛いのは慣れっこだよ。それが近道なら望む所だ。・・それじゃ、その行く道すがら、俺の視点でさっきの話の続きをしようか?」
「ええ、それでいいわ。」
「はい、お願いします。お嬢様の痴態が聞けるかも知れないと思うと興奮しますね?」
「お?それじゃ、全て語ってやろうか。レイの興奮した顔を見るために・・いいな?リチア?」
俺が問いかけると、リチアは顔を赤くしながら
「昇治様がそう言うなら私は拒否できません。覚悟を決めます。ううう・・」
「そう言う事だ。心して聞けよ?」
「ガッテンだ!」
何故かノリの良い礼に俺とリチアの欠片を取り込む迄から、クリーチャーの討伐までを聞かせることにした。