プロローグ3(予知の魔女との出会い)
昇治の回想はもう少し続きます
空港から出た俺は、地図に従いイタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリアに向かう。
ガイドブックで見た限りではそれほど興味をそそられる建物は無かったので(あってもこの時代で態々危険を冒してまで見に行くような物でもない。)さっさと目的地行きの長距離バスを探すことにした。
すると一時間ほど掛かってカンバニア州からだからかなり遠いが、何故か俺の財布を計算された金額の長距離バスが出ていた。
そして、そのバスに乗り込み座っていると、凄い美少女が俺の方を見ていた。
銀髪に金眼で、何人か人種は分からないが、かなりの美形だ。
席に座っていて詳しくは分からないが、背は中学生の美雪程(150位)しかないだろう。
足が下に着いてない状態でブラブラとさせていて、時折地面まで伸ばした長髪を弄っている。
着ている服は普通のワンピースだが、この少女が着ているとまるで西洋のドレスに見えてくる。
そんな風に観察していると、バスが出発した。
そして、事が起こったのはその子が途中の休憩所でトイレに降りた俺の後に着いて降りた時の事だ。
「Là,Fratello più vecchio(そこのお兄さん、)、Giapponese?(日本人?)」
と俺が偶然勉強していたイタリア語で話しかけてきたので、頷きながら。
「Sì、comunque Se può Giapponese Conversazione(ああ。しかし出来れば日本語で頼む。)」
「OK、分かったわ。おっと、自己紹介が未だね。歩きながら話しましょう?」
「分かった。」
彼女がいきなり流暢な日本語で話し始めた事に驚きながら、トイレに向かう道すがら彼女の自己紹介に耳を傾ける。
「あたしはキャリー。キャリー・ドグニよ。お兄さん見た感じ旅行者のようだけど、何処に行くの?」
「俺の行先はこの地図の場所だ。」
俺はそう言って、あのお姉さんに渡された地図を見せる・・・すると。
「あら、こんな所?ココは観光には向かない辺鄙な孤島よ?目的は?」
「新しい人生のスタートラインにその場所が選ばれたらしい。」
「・・新しい?お兄さんって、もしかして旅行者じゃなくて家出人?・・・(これはあたしの予知魔術もまだまだって事かな)?」
「キャリー?」
急にボソボソと小声でつぶやき始めたキャリーに俺は疑問の声を掛けた。
「え?・・あ、ごめんなさい。少し考え事をね。実はね?あたしは結構特殊な魔術が使えるんだけど、その魔術で今日この便に世界を変える少年が乗るって出たのよ。」
「へ~、それは驚きだな。しかし、俺は魔術の使えない一般人だぞ?」
「え?・・・そうなの?」
俺の言葉に驚きで目を見開くキャリー。
その反応で、ここでもか?と心配になっていると、予想外の答えが帰って来た。
「で?それが何?」
「・・え?・・」
「だから、それがどうしたのって聞いたのよ。」
これには流石の俺も驚いた。
いや、この反応が普通なのか?と思っていると。キャリーが自身の見解を披露してきた。
「確かに、今の世の中魔術を使えない人は落ちこぼれってイメージが強いわ?
けど、それは個人を表す一つの材料でしょ?
言ってしまえば魔術なんか走るのが得意って言うのと変わりないわ。問題はその特技を自分にとって有意義に活用できるかどうかって事。
お兄さんで言えば・・・って、お兄さんの名前聞いて無かったわね?
名前は?家出人でも外国なら話しても大丈夫でしょ?」
キャリーに言われて自分が名を名乗ってなかった事に気付いた俺は慌てて名乗る。
「俺は神木昇治だ。昇治で構わない。」
俺は言われた通り、名前だけを応える。
その端的な答えに、気を悪くするでもなく微笑みながらキャリーは先ほどの続きをし出した。
「では、昇治さん。貴方は先ほどあたしが急に地元のイタリア語で話しかけたのに、素早くあたしと同じイタリア語で返した。
これはシッカリとした特技よ?
仮に偶然でも勉強していた物を直ぐに発揮できる人もいれば、戸惑って発揮できない人もいる。
貴方の場合もそれよ。
魔術を使えるにしたって、いざクリーチャーに襲われても慌てたまま殺される魔術師より、逃げて人々に危険を伝えに行ける者の方がよほど有意義な才能だわ。
そして、先ほどあたしが固まったのは世界を変えるといたことよりも、魔力の無い人間にあたしの魔術が影響されたって事に驚いたのよ。」
「ん?どういうことだ?」
魔力のある者にしか影響しない魔術などあるのだろうか?
「これは恐らく常識だと思うけど、魔術ってのはこの世界の理を人の持つ力で捻じ曲げる超常的な魔法の術って事は知ってるわよね?大凡300年位前からのって言う条件が付くけど。」
「ああ」
「そして、其れだけが今の化け物であるクリーチャーにも対抗できる唯一の術であることも。」
「まあ、小学校で習う事だな。」
「そう、それほど簡単な常識だけど、其れゆえに人の未来や体内の現象を弄る事は同じ魔力のある者にしか効果を及ぼせない筈なのよ。」
「そうだったのか!?」
これは初耳だ。
しかし、確かに心当たりは有る。
治療術が得意な治療術師が何人集まっても一般人の肺炎やガンなどと言った、所謂内なる病は治せない病が多いと聞いたことが有るのに、外傷に関しては一般人の物も魔術師の物も関係なく致死レベルの外傷を負っても治せると聞く。
そして、魔力の強い魔術師ほど、病に掛かる者は減る傾向らしい。
それは美雪たちの怪我で確認済みだ。明らかに俺より傷の治るスピードが速かった。
そして、説明は続く。
「それから話は最初に戻るんだけど、あたしの得意魔術はハッキリ言って特異な魔術なの。
家の得意な系統は仕事柄探知関係なんだけど。あたしのは大まかには違わない物の、ハッキリ言って違いすぎるの。人の、と言うか世界の大きな変動の中心人物を予知として見れるの。
勿論、普段は物探しとかにしか使い道がないから、あたしの事を便利屋みたいに言う家族も居るけどね?今回だって全然信じて無かったからあたしが直接確かめに来たくらいだし。」
最後は愚痴っぽくなって来た会話に溜息を挟んで、丁度トイレに着いたので一旦別れてここで落ち合う事にした。
トイレを終えて出てきた俺を待っていたのは、チンピラの魔術師に囲まれているキャリーだった。
三人に取り囲まれているキャリーの方を見たら、俺の事に気付いてチンピラに何か言った後急いで俺の方に駆け出してきた。
そして、チンピラが俺に向かって何かを言うのだが。
「**、***************」(おう、兄ちゃん。彼女貸してくれよ。)
「****、**********」(兄ちゃんだけ良い思いってのはズルいぜ?)
「悪いが、何を言ってるか分からん。」
俺は言ってることが理解できなく、キャリーに聞くことにした。
「なあ、奴らはなんて言ってんだ?」
俺の質問に、キャリーは顔を真っ赤にして・・・
「あいつ等!あたしを見るなり近寄ってきて、幾らだ?って言ったのよ!!?
もう、信じらんないバカどもだわ。下手に殺したらヤバい事になるから手を出せないのが辛いけど・・・。」
ふむ、奴ら見かけによらずロリコンらしいな。
こんな見るからにオコチャマなキャリーに欲情するとは・・・
因みに俺も聞いてみるか?
「キャリー?」
「なに?」
「因みに幾ら?」
「1000兆USダラーなら考えても良いわね。言っとくけどあたしはそんなに安くないわよ?
確かにめっさ高いわ・・
こんなチンピラが払える筈がねえな。って言うか、払ってまでこんなお子ちゃま抱く奴が居るのか?
真正ロリコン認定されるぞ?
「お前、それは幾らなんでも高いぞ?嫁の貰い手が無いんじゃないか?」
「あら?あたしはその程度の金額を払えない男に興味は無いわ。それにあたしは惚れた男には自分で体を預けるだけ。他の有象無象に好きにさせる位なら、そいつを殺して、貴方の様に国を捨てるわ。」
言ってる事は分かるが、この言い方では、この状況が大勢の前だという事が不味いだけで、実力的には簡単にチンピラを叩きのめす事が可能といってるようだ。
それならこの場を切り抜ける術は有る。
「なあ、俺がこいつ等に一発貰うから、その事を正当防衛みたいに言ってこいつ等を追い返す事は出来るか?」
「は?そりゃー簡単だけど、大丈夫?」
「多分な?・・それと、通訳頼めるか?」
「・・・アンタは、考えなしに言ったの?・・・ちょっと待ちなさいよ?」
そう言ってから、キャリーは腰に付けているポシェットから、イヤリングと唇に付けるアクセサリーを渡してきた。
「はい、これが通訳魔道具セット。これは大抵の国の言葉を翻訳できるから、便利よ?お近づきの印に上げるわ。唇のを返されても困るしね?」
そう言いながら顔を赤くして俺から離れた。
そして、通訳セットを付けてから、チンピラに向き直り・・・
あとは俺が挑発するだけだ。
「なあ、あんた等。こんなちびっこを襲うって変態か?それとも幼女趣味か?
俺の言った言葉がキチンと翻訳された様で、途端に顔を真っ赤にするチンピラ三人と・・キャリー。
あれ?俺何かまずい事言った?
「手前ェ、言わせとけば良い気になりやがって、正義の味方の心算か?見たとこ魔力の欠片さえない一般人のようだな?魔術師に逆らったら、如何いう事になるか身を持って教えてやるぜ。・・・手前ら、合体魔術でぶち殺すぞ!」
「「おうさ!」」
そう怒鳴り声を張り上げ、チンピラが一斉に合体魔術の準備に入った、・・・しかし。
「あんたら、馬鹿だな。」
「我らの・・なに!?もっぺん言ってみろ・・あ、もう一度だ!」
「「・・・おう・・・」」
この様に、合体魔術は余程の熟練魔術師でないと後ろに控えての援護射撃的な役割でしか使えないと言うのは一般の学校の生徒の間にも伝わる程の常識だ。
しかも、こんな大勢の前で大規模な威力しかない合体魔術する馬鹿には、魔術の使えない俺でも簡単に勝てそうなので・・・
「この状況でこうしたらどうなるんだ?」
と、俺は一人のチンピラの口と鼻を手で塞いでやる。
すると当然・・
「・・う・・ふん・・が・・・」
何かを言いながら気絶するチンピラその一。
その事にキレた他の2人が俺に向かって何かの魔術を使ってくる。
(これは一発は喰らう覚悟がいるな・・)
俺はそう決意し、取りあえず近場のチンピラを魔術の行使前に腹に拳を入れる事で悶絶させた。
しかし、案の定もう一人のチンピラの魔術を邪魔するのは防げなかったので、身構えて覚悟を決めて食らおうとした所で・・・
「ぎゃあああ!」
というチンピラの悲鳴と共にその声の発生源を見ると・・・
「あ、ご苦労様。何とか間に合ったようでよかったわ。」
「そいつはキャリーがやったのか?」
見れば股間を抑えて蹲っているチンピラ・・・
どう見ても金的を喰らった状況だな・・・
「お前、そういう知識は何処で?」
「ん?ああ、お婆様に男に絡まれたら近づいて思いっきり足を上げたら相手は戦闘意欲を失うって聞いたから、試にやってみたんだけど・・・ホントにそうなったわね。なんで?」
教えても良い物か迷う所だな。
俺にやってきたら嫌だし。
ここは恍けるか。
「さあな?どうしてか俺にも分からん。・・・それより、早くバスに行くぞ?えらく時間喰ったから、皆待ってるだろう。」
「そうかもしれないけど・・多分大丈夫よ。」
「うん?どうして?」
「さっきこのスマートフォンで警察に連絡したから大丈夫って事。恐らくは道が渋滞になるから皆の迷惑にはならないわ。」
そう言って手にしたスマホを見せる。
なるほど、それなら魔術で無く金的で黙らせたのも納得がいくな。
向こうが魔術を使用していても、一見すると被害者は向こうに見えるので、此方が魔術を使っていたとしたら手傷を負ってない分こちらが完全に悪になり兼ねない。
実際の経緯がどうあれ、警察ってのはそう言う人種だ。
俺はそれを嫌ってほど知っている。
そして、こういう考えが出来るという事はキャリーもまた、そういう事に巻き込まれた経験があるのかもしれない。
「なら、普通に行くか。・・・バスは何処だっけ?」
「昇治さん・・・その位は覚えときなさいよ。そして、これはさっきの言葉のお礼よ。」
キャリーの言葉が終わると同時に、俺は股間に違和感を感じ、そのまま意識が途切れた。
そして、目覚めた時にはキャリーに膝枕をして貰っている状況だった。
俺は状況の確認の為、ワザと寝ているキャリーの胸を突いて起こす、・・が。
「こんなに突いているのに起きないとは、余程熟睡してるのか?・・・?」
俺が呟いた時、微かに肩が跳ねた。
人間こういう時は本当に寝ているか、はたまた寝たふりをしているかだが、キャリーの場合は先程肩が跳ねてから不自然に胸が膨らんだり萎んだりしている。
これは確実に起きている証拠だ。
そして、今の時代の長距離バスは普通に夜になると個室の状態になる魔道的な物に成っている。
なので、寝たふりをしているキャリーに悪戯をすることにした。
「おーい、そのまま寝たふりする気なら悪戯するぞー?」
「・・すぅー、・・すぅー。」
すうすう言いながら寝る奴は始めてみたな・・
「よし、それでは。先ずこれだ。」
そう言って俺は、目の前に突き出してる顔に自分の顔を近づけて、口づけをしてやった。
そしたら効果覿面。
バッ!っと音がする位のスピードで顔を仰け反らせてから、一言。
「なっ!?何すんの!アンタは!?」
「いや、本当に寝てるんならもっと濃厚なのをしようと思ったが、イキナリ正体を現わしてくれて少々拍子抜けだぞ?」
俺はさらりとそう言ってのけた。
実際あの瞬間で唇が触れた瞬間に半開きだった口内に舌を入れてやったので、キャリーが驚くのは当然だが。
「あたしはこれでもファーストキスだったのよ?!どうしてくれんのよ!!」
「そんなの、俺とお前が黙っていれば誰にもバレ無いだろう。」
「そう言う問題?!」
「ならどういうも問題だ?」
「それは・・その・・」
今一分かってない様子のキャリー。
これは面白そうだと思った俺は、更に遊ぶことにした。
「なら問題なしって事で、もう一つの初めてを越えてみるか?」
「・・え?・・それって?」
「ああ、丁度いい具合に遮音の結界が張られているらしいからな?これなら外にお前の声が漏れる事も無いんだろう?」
「・・え・っと、そ・・う・・だけ・・ど。・・・また今度にしない?」
また今度って、これは脈ありか?
「いや、こんなチャンスはもうないだろうし、秘密を作るなら、一気に作った方が良いぞ?」
「・・・本当に、・・スルの?」
おいおい、眼がマジに成ってきてないか?
これが演技かどうかはもう少し経ってからでないと分からんな。
「おう、そっちも準備は良いだろ?」
「・・ええ・・もう覚悟を決めるわ。外見も中身も嫌いなタイプじゃないし。・・・ちょっと待てね?」
そういって、キャリーが個室の遮蔽結界と遮音結界の効果を最大まで上げた。
もうヤル気満々だ。
これは引っ込みが着かなくなるぞ?
そして、ついに自分の服に手を掛け一気にワンピースを脱いで下着姿になった。
更に顔を真っ赤にしながら未だ未成熟の胸を覆っていたブラを取って胸を露わにする。
その姿を見て、俺は思わず喉を鳴らした。
昼間の可愛らしい姿とは一転、 その銀髪と相まって物凄く艶妖に見える。
更に暗がりでも解るくらいの色白の体に桜色の突起は、成熟した者とは違うが、ある種の芸術品の様な錯覚を覚える。
そして、準備を終えたキャリーが俺に聞いてきた。
「これでいいでしょう。・・この後は私はどうすれば分からないから、アンタに任せるわ。・・・・どうぞ?」
そう言って寝かせた椅子に仰向けにしていた俺に覆いかぶさるようにして迫ってくる。
俺はココまでの展開は流石に予想してないので大いに慌ててしまった。
「・・え・・と、ちょっと待て?・・マジでヤルのか?・・良いのか?」
俺の質問に
「・・どうしたの?まさか、今更怖気づいた?」
キャリーがそう微笑んで言ってくる。
「・・ええ・・・えええ!!?」
もう俺は混乱の局地に合った。
これはマジでヤバイ。
俺の初めてがこんなお子ちゃまに成ってしまう。
「ま・・待てよ?悪かった。早まるな、遊び過ぎた。正気に戻れ。」
「あら、あたしは正気よ?昇治さんこそ、さっきの勢いはどうしたの?貴方がそんななら、拙いかもしれないけど、私がやってあげるわね?」
そう言って、キャリーが俺のズボンに手を掛けようとして俺が跳び起きた瞬間・・
「・・くくく・・ははは・・きゃーははは!!やったー!!やっと借りを返せたわ!!あのまま負けたままだと悔しくってしょうがなかったのよ。」
そんな事を言いながら、キャリーは笑いながら脱いだワンピースを着直すと、眼の涙を拭いながら俺に言って来た。
「唇を奪われた事は流石にショックだったけど、あれくらいは家の関係で覚悟は出来てたことだから気にしないで?その後こっちも十分に楽しめたし、お相子って事で良いわ。裸の姿を見せたのはサービスって事で。・・でも、これはあたし達だけの秘密よ?・・・もし言ったら。」
「言ったら?」
俺の質問にキャリーは微笑ながら・・・
「責任を取って貰うか、もう日の下を歩けない体に成って貰うわ?」
「・・・気を付ける・・・」
「お願いね?」
そう言って二人ともそれぞれの思惑を胸に就寝した。
その後はこれと言ったイベントも無く。予定の工程を消化して
そして、遂に大凡二日位の工程を経て目的地に着いた
遊ばれました・・・
流石の商家。駆け引きは一般人には到底無理なのでした。