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神の欠片を持つ者達  作者: arandora
イタリア征服編
3/9

プロローグ2(家出と旅行)

今回と次回は回想につきほぼ一人称です

 春の麗らかな木漏れ日の差す日中の一軒のリビングに於いて、神木昇治は何時通りの時間に朝食を摂っていた。

 リビングのテーブルにはカップヌードルの空のケースが二つ。

 昇治が食べている分も合わせると3つにもなる。

 そして、この場には・・というよりも、この家に家族は居ない。

 そして、昇治が見ている物はテレビ。

 最近多くなって来た、クリーチャーの出没の知らせだ。


 クリーチャーとは、およそ300年ほど前に宇宙から飛来してきたとされる隕石から出てきた未知の生命体。その繁殖力は物凄く、地球上の生物全てが対象になる。勿論人間も例外ではなく、その脅威に曝された者は、極稀にだが異形の者を産み落とし、その者に産んだ直後殺される。そして、その子供は例外なく、外殻は固く、並の兵器では太刀打ちも出来ない。唯一対抗できる手段は同時期に生まれだした赤子が、1000人に一人の割合で持って生まれる魔術師としての才能による魔術か、その様な魔力の籠った刀剣の類の武具のみ。


 その為、世界各国のお偉いさんは急遽自分の国の魔術の才能を持った者達を育成する機関を作ったのだ。(全て、学校の歴史の教科書の知識だ。)

 そして、その教育機関を卒業した生徒が独自に創立した警備会社や国の軍隊、世界の警察の魔術組織など、あらゆる対策を立てた結果。この250年で両者(人とクリーチャー)の争いは膠着化した。

 そのお蔭で無事な一般人は国の設けた魔導の都、魔導都市へと非難をし、そこで新たな魔術師の育成を始めている。

 その魔導都市の在住年齢は魔術師の資質に目覚めている者は0才から15才の魔術学園に入学する歳まで。これは魔術はクリーチャーの相手をしないと実力が伸びないという事が、統計で示されているから。卒業してからは、各軍隊や組織に就職し、戦える迄戦い続け、その功績に見合った年齢を老後に再び地下都市で税金にて優雅に暮らせる。

 魔術の才能に目覚めなかった者は、0歳から19歳までは昔通りの教育方法で教育を受け、成人の後は魔導都市にて、主に魔術師たちの老後の楽しみの世話役が仕事になる。

 こんな風に、才能を持って生まれてきた者は命の危険はあるが、魔導での窮屈な生活を送る事をなるべく回避しようと努力する者も居れば、ワザと才能が無いと言い回り、安全な魔導都市に引きこもる者もいる。

 そして、もう一つの選択肢は。才能が無いのに敢て都市を出て、自由を求めて世界に出る者。

 そしてここにそう言った無能の癖に馬鹿にされるのが嫌で世界に飛び出した者、神木昇治が居た。

 魔術師の住まいは卵とはいえ、家族が魔術士なら本人が希望すれば一人一人に住まいが与えられる。

 その中には当然昇治のような、魔術師でもないのに家族が魔術師だからと住まいを貰っている者は居るが、当然世間の風当たりは悪い。


 その一番の悪さは他人の目。家族や一般の友人は気にしないが、特に魔術を使える魔術学園の知り合いは侮蔑の表情を浮かべる。そして、更には自らが調べた孤児であると言う経歴。この事を昇治が知っていると言うのは本人以外は殆ど知らない。そして、昇治はその事実が嫌で今日町へ出て明日からの旅行の為の買い物し、この日本を出る決意をしている。

 


「・・よし、これ位の軍資金があれば如何にか空港は大丈夫だろう。問題は向こうに着いてどうなるかだから、食料関係とサバイバルナイフくらいは買っとかないとな。・・よし、買い物に繰り出すか。」


 そう言って昇治は家を出る。目指すは商店街の旅行グッズコーナー。昇治の目的は外国への逃避行。

 この日本にいたら、何時まで経っても家族の者たちとの出来の違いを比べられる。その苦痛から逃れるには外国が最適だ。

 そう言う思いから、明日の朝この日本とお別れをしようと準備を重ねてきた。

 勿論、魔導都市の学校に行く用が有る以上は少しずつではあるが・・・

 そうして、早速町へと出る事にした。











 家から出た途端にやってきた視線は侮蔑。

 皆が必死で護ってくれる魔術て師の為に働いているのに、一人だけ働きもせず学園で勉強でき、尚且つ一人で暮らせる金も貰える。

 偶に見る一般の生徒のクラスメイトの表情も似た様なもんだ。

 中には俺の妹の事を知ってい「あの子の兄が何であんな無能なんだ?」と言う囁き声まで聞こえてくる。

 無論、俺は慣れたもんでそれらを無視しているが、それが気に入らない奴は「無視すんな!」と石を投げてくる。

 そして、当然運動はそれなりにしか出来ない俺は小さな石を避けるなんて芸当出来る筈もなく、石が直撃する。


 ガツン!


 その鈍い痛みに耐えながら歩いていると、向こうも諦めたのか向こう側へ去っていく。

 これはもう昔からの事。

 そう、近くに妹達が居た時からの出来事だ。流石に俺を慕ってくる妹達の目の前ではやらないが、離れた途端に物や罵声が飛んでくる。

 一度妹達がその現場を見た時は、その実行犯が脇目も振らずに逃げ出したのに、一瞬で追いついて美雪に瀕死の重傷を与えられ、その親に家族で呼ばれた時。

 その実行犯が自身の親に言った言葉が


「俺は何もしてないのにそいつが石を投げてきたから投げ返したんだ。俺は避けたのに避けれなかったそいつが悪い。俺は被害者だ!」


 と、のたまった。

 しかも俺の発言力は皆無に等しく、逆に相手は頭の出来は悪いが仮にも魔術師の卵。

 どちらに良い結果が齎されるかなんてのは考えるまでもない。

 結局そいつは俺の親から慰謝料を取りあげ。

 俺は自宅謹慎処分。

 そして中学に入った時妹達に内緒で今の住まいに引っ越しをさせられた。

 それからはもうどん底だ。今の俺なら学校を止めるなんて事も一度顔を出すだけで出来るだろう。

 その為この国になんの未練もない。

 そんな事情があって、俺は海外旅行に必要な材料を調達に行くことにしたのだ。











 

 買い物を済ませ、家に戻る途中、道のわきに朝は見かけなかった占いの出店を見つけた。

 何時もなら占いなど信じる事も無いのだが、この日は何故だか不思議と聞きたくなった。

 明日にこの国を出ることになる望郷の念からかも知れないが、不思議と嫌では無かった。

 そう思い、出店の前に立つと。

 イキナリ若い占い師に告げられた。


「お兄さん、旅に行くならイタリアのヴェネツィア・ジュリアにある剣の神【クリュサオル】を祭る神殿へ行きな?そこでアンタに転機が訪れると出てるよ。まあ、信じる信じないはお兄さんの自由だけどね?」


 占い師はそう言って、昇治にイタリア行きを薦めると、もう用が済んだのか、出店を畳んで裏路地に引っ込んで行った。


「おい、占い師さん。それってどういう事だ?」


 昇治がそう言って追いかけるが、占い師をその後見かけることなく、その日は家路につき、何処にも行く当てはないからと、あの占い師の勧めに従う事にした昇治。










 それから翌朝、一応家族には一報を入れて置かねばと思い、義理の妹である美雪にスマホ(テレビ画面をホログラムとして空中へ投影する事が出来る科学と魔道の融合作品)で電話を掛ける。


 プルル・・ガチャ!

(はええな・・おい。)

 通信が始まった途端、美雪が俺の顔に気付いて驚き


「はい、美雪です。って、その御顔はお兄様ですか?今どちらにいらっしゃるのですか。もうすぐ高校受験が有るので色々と教えて欲しいのですが?」


 義妹の美雪が出るなりそう捲し立てた。

 久しぶりに顔を見るが、画面で見る顔は昔より少々大人びていて、昇治とはどう見ても似ていないと解るほどの美少女に成長していた。

 

(まあ、孤児の俺に似ている訳がないか)


 そう一人納得して少々自嘲気味に笑う昇治。

 それにしても、と昇治は思う。

 この妹は何故か物心着く頃には昇治に懐いていた。

 何時でも昇治の後をついて行き、中学1年まで一緒に風呂を入っていたくらいだ。

 しかも大きくなってきた頃からかなりの美少女に育っていたので、お風呂で悪戯をしていたくらいなのだ。

 まあ、あまり悪戯が過ぎて美雪も恥ずかしくなったのか、今では入らなくなったが。・・・と言うよりは俺が家族と別れて暮らし出してからかな?

 あれから2年は余裕で経つのに、何時までも兄離れしない奴だ。


(この際、いいタイミングかもしれんな。)


 そう思った昇治は美雪に卒業を言い渡す。


「美雪、良く聞け?」

「はい、何でしょう?」

「俺は今日から旅に出る。親父には適当に言ってくれ。場合に由れば向こうで永住するつもり・・」

「それは本気ですか!!?」


 キーーーーン!!!


(ぎゃあああ、鼓膜があああ!!)


 いきなりの大音量に頭がクラクラする俺。

 更に美雪の叫びは続く。


「私の思いに気付いていながら家を離れたばかりか、今度は海外ですって?私がお兄様に何かしましたか?不満があるなら仰って下されば良いではないですか。お風呂にご一緒出来なくなったのも残念だと言うのに・・・それに花音も守人さんも急にお兄様が一人暮らしをされて寂しがってるのですよ?それなのに・・」

「だが、そんな風に思っているのは家族であるお前たちだけだ。こっちの学園でも家族であるお前たちの名が大きくておちおち外に買い物にも出られん。それに、俺が居ない間にお前らも随分腕を上げた様じゃないか。これを機に俺の事はもう忘れて幸せに成れよ。俺は海外で細々とした生活を満喫するから。・・・じゃあな。守人たちにはお前から言ってくれ」

「あ、ちょっと止まってください。お兄さ・・」


 ガチャ・・


(ふぅ~、さてっと。さっさと行くか。)


 美雪の言葉を最後まで聞かずに通話を切った俺はそのまま旅に出ようと家を出かけるが・・・


 ヴゥ・・・・、ヴゥ・・・・


(?この番号は守人か。早速別れの挨拶か?)

「はい、しょう・・」

「おい、昇!旅に出るって本気か?!他の奴らに何を言われた!?」


 ホログラムが投影された瞬間に水守守人みずもりもりとの顔が出てきた。

 相変わらず美男子っぷりだ。

 こいつは妹の花音と共に美形の双子で有名だった奴だ。

 日本人の癖に目鼻がくっきりとして彫りの深い顔に、バランスの取れた配置。

 兄妹揃って黒髪を伸ばしているが、手入れをしている所を見たことが無いのに何故かサラサラだ。

 そんな守人が近くにいるだけで比べられたってのに、もう一人の花音が・・


「昇お兄ちゃん?美雪ちゃんに聞いたよ?何でそんな大事な事前もって言ってくれないの?!」


 こんな事を冷静に言ってるが、コイツが近くにいたら美雪と相まって俺に危害が致死レベルで襲ってくる。

 言ってみれば嫉妬による逆恨みを、こいつ等に代わって俺が一手に引き受ける形になっているんだ。

 俺が海外へ逃げるのはそう言った側面もある。


「お前らがどう言おうが俺が被害を受けるのは変わらん。お前らが居なくなってからも外に出かけるのが怖いレベルで嫌がらせが有るんだ。そんな生活はもううんざりだ。一応、良い所を見つけたら一度中退の報告を高校に入れる為に帰ってくるが、その後はもう会う事も無いだろう。お前らがこの国に居る限りはな?」

「「それなら、私ら(俺ら)がそっちへ行けばあるのか?」」


 俺の言葉に二人一篇に聞いてきた。

 俺は当然の事ながら断ろうとしたが、海外なら俺の事も家族の事も知っている奴は居ないだろうと思い


「ああ、向こうでなら命の危険も無いだろうし、大丈夫だ。その代り何処に行くかは言わんぞ?俺に本当に会いたいなんて思うなら、何処に居るか探し当てる位して見せろ。そしたらお前らの気持ちも本物だと認めてやる。・・・じゃあな?」

「あ、待て昇。その言葉はほん・・」


 ヴッ・・・、ツー・・ツー・・


「よし、これでもう掛けてくる奴は居ないだろう。・・んじゃ、新しい旅路に出発としますか!」


 俺はそう一人力むと、短い間世話になった家に別れを告げ、そのまま空港行きのバスまで歩いて向かった。(この時代でも空港は勿論あるが、クリーチャーに見つからない様に科学的ステルスと、魔導的魔力遮断が行われた特殊仕様だ。その割に税金で動かしているため格安と成っている。その税金を支払うのは俺達一般人だが・・)









 空港に着いた俺を誰も待っている訳もなく、だが休日の関係で人がごった返している。(これは仕事で海外に行く者や、それぞれの国の優秀な術者が各国に派遣されるためだ。規格外の化け物術者に成ると、【風術師】は自ら空を飛んで現地に向かい、水術師は自らの体を魔術で水に近いそれに代えて海を渡る。【炎術師】や【陰陽師】や【地術師】等は、それぞれに空を飛ぶ物を魔道具で作り上げて移動をするが、そう言った奴らは俺が知る限り世界に3人。其れも過去の偉人なので今は恐らく居ないだろう。)

 その為ロビーは休憩所に空きが無い為、少しフライトには早いが受付で出国手続きをする。

 少し順番を待ち、漸く自分の番になったので受付に行くと、若いお姉さんが居た。


「はい、次の・・・」

「・・え?」


 驚きのあまり声が出ない。

 それもその筈。

 このお姉さんの声はあの占い師の声だった。

 その事に気付いた俺は少々尋ねる事にした。


「お姉さん、昨日の占い師さんだよな?少しいいか?」

「ええ、何でも質問して頂戴?」


 物凄い笑顔で言われ、俺は少々混乱した。

 話しかけた瞬間に逃げられると思ってしまったからだ。

 実際はそんなことは無く、笑顔で応対している。

 しかもここだけ別空間に成っているかの如く他が止まって見える。

 その考えは顔色で読まれていたらしく、お姉さんがニッコリと微笑みながら言って来た。


「大丈夫よ。ここはお姉さんの時空魔術で時を止めているから、他の人の迷惑にはならないわ。」

(どうやら別の意味で捉えていたらしい。俺は別に他の迷惑など気にしないのに・・・)

「なら、昨日逃げたのは何でだ?」

「逃げたんじゃなくて忙しかったのよ。あなた以外にも結果を伝えないといけない子が何人か居たからね?・・・あ、何の結果かは個人のプライバシーに触れるから、言えないわよ?」


 そう言いながらウインクで口外しないと暗に行って来た。

 俺も他人の事まで知りたくないのでそれは構わない。

 問題は自分の事だ。


「それはいい、聞きたいのは昨日の旅行場所の指定だ。俺が旅行に出ようとしてる事を分かってただけでも十分に信用できる結果だからな。あの時俺は普通の格好をしてた。何処に行くとか、旅行を匂わす物は持ち歩いて居なかった。それを旅行に限定したって事は本当に占いをして結果が有ったという事だ。・・・俺になにが見えた?」


 俺の発言を興味深そうに聞いていたお姉さんが、不意に真面目に答えた。


「いいわ。そこまで何かってのを知りたいなら教えましょう。本来は教えたら楽しみが消えちゃって駄目なんだけど、君の運命はその決まった運命しか無いみたいだから、影響はないでしょう。」


 いきなり凄い事を言われた。

 既に運命が決まっている?

 どういう事だ?

 戸惑っていると、またもやお姉さんが行って来た。


「君はね?詳しくは運命の輪を壊すから言えないんだけど、ある御方によって選ばれた者なの。そして、その選ばれた者と言うのは少なからずの不幸に見舞われる。しかし、安心して?ある程度の重体や瀕死の重傷のは成ることが多いけど、滅多な事で死ぬことは無いわ。そして、条件が揃えば今までの不幸が嘘のような幸運に迎えられることになる。まあ、あんまり言っちゃうと面白くないからこれ位でね?・・・では、良い旅を。」


 そう言ってお姉さんはいつの間にか全ての手続きを終えたパスポートと契約を記した紙を俺の手元に残し、消えていた。

 そして、その紙には


 『神々の戦争へようこそ』とだけ書かれ、契約書には何故か俺の事が自分で解かる範囲の全ての事が掛かれており、一緒にイタリアで立ち寄る場所も地図付きで書かれていた。

 

 全然意味が分からない俺も、時間の経過が戻った事で周囲からの視線が有ってその場を後にし、遂に海外・・イタリアでの旅が始まった。







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