ナノ装甲・流天弾
【ナノ装甲】
・「KY1―1。通称、ナノ装甲。あれだけ撃たれたにも関らず、ビクともしていなかった……恐らくは」
ナノ装甲。それは、最近遠国『ビスタチオ』で見つかった『ナノ』と呼ばれる原料を元に作られている。
その強度は鉄よりもずっと優れている。そしてさらに軽い。
だがまだ、『ビスタチオ』が正式にそれを元に兵器開発をしているという話は出ない。いまだ未知の物体、懸念する声も多いのである。
【流天弾】
・「流天弾」
小暮が少し自信なさげに言った。
「……そういう物があると聞いた事があります……『黒』が全力で開発しているという、対『ナノ装甲』専用弾です」
・「『ナノ』を貫く、『流天』の光、か」
ジンが皮肉混じりに笑った。「どうも、先行きは暗いな」
「だけど、なんで空(ku_u)が『黒』の兵器を装備していたんだ?」
新の問いに、小暮が神妙な面持ちで答えた。
「『流天』の製造法は、一時、市場に出たという噂が流れた。その時、どこかの組織がそれを買って独自に開発した……ありえる話だ」
・――彼女はギアを切り替える。
それは、普段決して使う事ない最終の。
4番目のギア。
そこから足元に隠れるもう一つの、射撃用レバーに手をかける。
その眼光は。
「――」
アクセル踏み込む。エンジンが吹く。
そのマフラーから、紅蓮の光が飛び立つ。
ドドドドド
【虎】の射撃はもう追いつかない。
そういう次元のスピードではない。
足元レバーを押し倒す。
放たれたのは、あまりに重い弾。
このスピードと重量が加算に加算を呼び込んで。
撃たれた機体は。
音を立てて飛び散る。だがそれは、爆破なんて生ぬるい言葉では追いつかない。
閃光、木っ端、白き光と赤い熱気と、怒りと悲しみと絶望と粉塵の。
大爆発。
「なッ」
目の当たりにした【虎】の面々は、その場で凍りついた。
「まさか、一撃で」
あんな、弾が。
――だが、誰にも、凍りつくような暇もないはずなのだ。
彼女は次の機体を狙う。純白の機体から放たれるその弾は、すべての装甲を撃ち砕く、
流天の光。
だがその力、あまりにも強大ゆえに。
通常、使う事はない。
普通の機体では、この弾の前にはあまりにも無力。こういう爆発が起こるから。
轟く、神の怒り。
(嫌)
こんな事、嫌。
でももっと嫌なのは。
「早く散ってッ……!!」
放つ。そしてまた空に赤い閃光が飛び散った。
「もう行って………ッッッ!!!」
見れば、パラシュートが風の影響を受けて流されている。
彼女は目を細めた。
「早くッ……」
もう、どうでもいい。
全機撃墜、その命令もどうでもいい。
今はもう。
一刻も早く。
(あの人を)
墜ちていく彼を、放って置けないから。だから。
「行って……お願いだからッ………!」




