天賦
・空の闇を支配する、翡翠の集団。
・その力は、空をはびこるすべての空賊の動きすら左右するといわれ、政府上層部が最も怖れている空賊だ。
・そして何より、その飛空技術は一流。単独の〝渡り鳥〟などを除けば、最も厄介な相手である。
・そしてその翡翠の集団をまとめるのが、無凱(mugai)。そう呼ばれる男である。
・「ああ。政界や軍事関係、密輸、暗殺……奴らが動く時は決まって、何か大きな思惑がある時だ。例えて言うなら、世界を揺るがすような。何か大きな意図が、な」
・「馬鹿が。【天賦】のメンバーは無凱の息がかかっている。簡単に雑魚と言えるような飛行をする連中じゃない」
・「磐木君たちが捕らえられているのは、【天賦】の4番目の基地、『白雀』の東だ」
・「大体、下水からそのまま【天賦】の地下牢……何か、ここが【天賦】の基地だって実感湧かないよ」
地下の下水は、地下牢の一室に続いていた。
そのような所にこんな道があるというのは、かつてここから脱走した者がいるという事である。
実際、下水から牢に通じる狭い横穴は、手で彫り進められた跡が残っていた。
掛けられていた錠前を来が手早く外し、地下牢の中を音を殺して走った。
「牢屋ばっかだね、ここ」
昴も絶句するほど、走っても走っても鉄格子が続いていた。
「この一帯の地下はすべて、牢獄で埋め尽くされている。ここは、【天賦】の中でも拷問や監禁、処刑を主に行う場所だ。ゆえに別名『地獄の門』と言われている」
・「村雨、」無凱は深く唸るようにして、無線に向かって言った。「我は一時、編隊を離脱する」
《総統?》
・「……『蒼国』も空賊事情は安定しているとは言えない」
キシワギの様子に、白河も声に情を含ませ続ける。
「だがあえて言うならば……我が国には【天賦】がいる」
その名に、327飛空隊の面々が一斉に顔を上げた。
「その名は『ビスタチオ』にも知れ渡っています」
「【天賦】は厄介な組織です……だが同時にその絶大な支配力により、『蒼』では彼らによって他の空賊は牽制されている。詳しい事はわかりませんがね、互いの領地を侵さないなどの取り決めがあるようです。皮肉な話ですがね」
あの連中に守られている所もあるんですよ、そう言ってハハハと笑う白河を見て。




