〝風の抜け道〟
・「『蒼国』と『ビスタ』の間には〝零〟と呼ばれる不可侵領域があるのは知ってるな?」
・「その〝零海域〟を越えた向こう、『ビスタチオ』領海に入るわけだが、地図で言うとこの辺り。ここに、〝風の抜け道〟と呼ばれる場所がある」
・「ここの風は特殊だ。小さな飛空艇ではひとたまりもない。舵を持っていかれる。ここが暖流と寒流の丁度ぶつかる場所だからという説もある。だが同じような条件で、ここのような〝風〟が報告されている場所は類を見ない。やはりここは特異と言える。そういうわけで今回は、安全策を考えて、空母に頼る事にした。これは軍上層部の意向でもある」
・荒れ狂う雲と、踊る暴風。稲光。
・『蒼』と『ビスタチオ』国境に位置する、〝風の抜け道〟と呼ばれる空。
ここの気流は特異である。
寒流と暖流がぶつかる所だという節もあるが。同じような場所はこの世界にいくつもある。
だがこれほどに激しく空が轟く場所は、他に類を見ない。
まるで、2つの国を決定的に裂くかのような。拒絶しているかのような。
次元すらも、超えなければならないような。
拒否反応にも近い歪みが、この場所にはある。
「あれから、性能が良くなったと言っても、小型機ではひとたまりもないな」
空母とて、完全に揺れに抗う事ができているわけではない。確かに機体は揺れている。
それでも、壁に身をつけていれば立っていられないほどでもない。
「……この時期はそれほどでも」
「そうか」
「一番きついのは、夏至の頃ですよ」




