ム・ル
・「俺も現地で調べてきた。間違いない。生き残った連中の話を聞いたら皆一様に言ってたよ。夜中に突然爆弾が降ってきた。驚いて空を仰いだら、白い鳥がいた。あれは神の化身だ。我々の業を諌めるために現れたんだと」
「……」
「だから仕方がない。罰が当たったんだと。元々宗教色の濃い国でもある。皆がそう言ってたよ。面白いくらい口を揃えてな」
・瑛己は地図を眺めた。その中に、『ム・ル』という名前は確かにあった。『ア・ジャスティ』の北部だ。これまた距離がある。
『ム・ル』。その表記を、瑛己は複雑な思いで見つめる。
そこは数ヶ月前……一夜にして壊滅された町。
―――空(ku_u)によって。
・「『ム・ル』ってどこにありますか?」
「……は?」
唐突な彼の質問に、他の面々も瑛己を振り返る。
煙草を吸い終えたジンが部屋に入って戸を閉めたのはその時だった。
「『ム・ル』なら……もう少し北ですね。それほど遠くはないですが」
それこそ、と言葉を切り。小首を傾げてアガツは言う。
「『ビスタチオ』が発芽する唯一の場所から一番近い町です。地上絵からも遠くない」
・「天罰だとも、言われてるんです」
「え……」
不意に話し出したアガツに、瑛己は少し目を開く。
「『ム・ル』です。……あそこが元々、何て呼ばれてたかはご存知で?」
「いえ」
「聖域です」
「……」
「この前言いましたね。降り注いだ光の伝承……そして『ビスタチオ』が発芽する奇跡の場所……そこから一番近い町が『ム・ル』なのだと」
「はい」
「『ム・ル』は『ビスタチオ』随一の産業都市です。……何をもって栄えた場所なのかわかりますか?」
彼女が何を言おうとしているのか、瑛己は脳を研ぎ澄ました。
「あそこは……あの土地には、貴重な資源が埋まっていた。『ナノ』と呼ばれる資源……それを用いて」
――『ナノ』。
聞いた事あると、瑛己は思った。
確かあれは、
(無凱の装甲)
普通の弾では太刀打ちができなかったあの強板。
――それを貫いた物は?
「国内でも、それが取れたのはあの土地だけだった。その資源は鉄より軽く、そして強度が優れている。まだしっかり解明されているわけでないそれを、研究者たちはこぞって」
「……兵器として利用した……?」
ポツリとこぼした瑛己の言葉に、アガツはただ彼を見つめるだけ。返事はしなかった。
だが。
「なぜあの土地だけでそれが取れたと思いますか?」
「……」
天からこぼれた光の伝承。それが降り注いだ土地。そこから芽吹く、南国の木の実。
そして取れた、『ナノ』という鉱物。
それは鉄を凌駕し、圧倒的な強度を持つ、
「まさか」
その場所でしか、『ナノ』は、取れない。
すなわち。
「天罰です」
「――」
「我々は、神より賜りし物を、兵器として利用している。公には発表されていません、ですが……それで利を得ている」
「……」
「『ム・ル』壊滅は、神のご意志でしょう。その白い飛空艇が何者かは知りませんが。その姿を見た者は皆言っている。神の化身であったと。神が滅びを望むのならば我らの道は」




