『ビスタチオ』 空賊事情
・「元々この国の空賊事情は、有象無象と言っていい。大小様々な組織が軒を連ねています。小さい所では数人、家族・部族単位、人種、宗教など集合形態もバラバラです。日夜勝手に増え、勝手に消えて行く。我々も完全にすべてを掌握できているわけではありません。広い国土が皮肉にも、そうした者たちを勝手気ままにのさばらせている。本音を言えば、手をこまねいているのも確かです」
キシワギの眉間に深いしわが刻まれる。にじみ出た感情の欠片に、それを目にした327飛空隊の面々にも自然と苦い感情が広がった。
「空賊間での抗争も、無秩序です。その争いは陸にも飛び火して、関係のない民間人にも被害が出ている。長年我々『ビスタチオ』空軍はそれをなくすため、1つでも多くの空賊を取り締まり壊滅させる事に躍起になってきました。それこそがすべての勤め。こんな形で空を戦場にし、命を奪い合うために、我々は空を目指したのではない」
「我ら民族が絶対無二として尊ぶは、空より命を恵みたもうた神。その地を守るのが飛空艇乗りの勤め。それを汚すなどあってはならない事です」
『ビスタチオ』は宗教色の強い国である。地上絵としても〝神〟が具現化されて祭られている地だ。
〝空を守る〟。キシワギの言葉に瑛己は背中に芯が通る気持ちだった。国、民族は違えどそこには、自分と同じくする〝意志〟がある。
「だが……数年前『蒼国』よりやってきた【白虎】という存在により、それはさらに激化しました。【白虎】は『蒼』にいた時分より巨大組織としてこの地にも名前が聞こえるほど。そんなものがいきなりやってきて大きな顔をされては、元々ここにいる空賊連中は面白いわけがない。……抗争は【白虎】を中心として大きく、そしてさらにひっ迫したものになっていきました」
「今回もそれが原因で?」
磐木の問いにキシワギは彼を見、少し息を吐いた。
「きな臭い感じはいつだってしてた……しかし今回はいつもと違う。我が国で空賊同士が手を組む事はほとんどない。1つ2つならまだしも、周辺の10以上もの組織が意志を同じくするなど。そうまでして【白虎】を叩く、そこまでせねばならんのか。現在【白虎】には上島 昌平捜索のために特殊部隊が潜り込んでいます。なのでできれば、大事にならないようにと願っておりましたが。……最悪の結果になりそうです」




