『ビスタチオ』 国
・遠い国だ。北の海を制している大国である。
1年の半分以上を雪と氷が占めている。暮らすには厳しい環境とも言える。
そう思えば『蒼国』は四季がある。住みやすい国だ。
・あの国は広い。『蒼国』の10倍以上はある。
・そこに1枚の白黒の挿絵があった。
それを見て、瑛己は固まった。
そこには、巨大な男が書かれていた。
太い腕と、太い足。そして強靭な体躯。
まるで巨人。空に向かって腕を振り上げている。
瞬間的に、ある人物を思い出した。
「無凱」
大きく口を開き笑う、あの男。
瑛己はその本を読み進めた。
題名の通り、『ビスタチオ』にまつわる伝承が様々書かれていた。
だがここには、〝空の果て〟については何も記載されていなかった。
ただし、気になる文章があった。
―――不死の研究。
かつてこの国では盛んに、その研究が成され。
そしてある時、その研究は一切禁止されるようになった。
研究した者、したと噂される者、囁かれた者は。
全員を死刑。
……ひどい虐殺が行われたようだった。
・〝零海域〟を隔てて北にある大国である。
国土は『蒼国』の10倍以上。下手すれば15倍くらいあるのかもしれない。とにかく広いのである。
ただその国土のほとんどが、1年の半分以上雪と氷に閉ざされた世界。
暮らすには大変な所と言える。
それが、領土のわりに人口の伸び率が振るわない理由の一端である。
・「けど話戻すけど、『ビスタ』かぁ……もうあっちは真冬だよ? 防寒対策きちんとしとけよ。飛空艇の方も。きちんと装備しとかないと、エンジン凍るから」
・「え、えーき君。だ、だからね。北国の空賊事情はそういうわけで……じょ、女性空賊もいるくらいなもんよ。男女平等なもんでね。あは、あははははははは……」
・「客人には最高のもてなしを。それが我『ビスタチオ』の民の慣習、しいてはドゥーラ神の教えでございます」
・《上は気流が違いますから。気をつけてください》
聞こえてきたのはその場にそぐわぬほど透き通った声。カイ・キシワギの側近、クラ・アガツの物だった。
《1枚壁がありますから。操縦桿に気をつけて。油断すると持っていかれます》
・《この辺りが西部の農業の中心部になります。主に小麦を扱っています。小麦は我が国では輸出量第一位の農業生産物で、これは世界でも3番目の量です》
眼下にはどこまでも広大な土地が広がっている。
《今は冬小麦の時期。秋に蒔いて冬の寒さを経験させ、初夏に収穫します。小麦にはもう1種類、春小麦と言うものもあり、こちらは春蒔きで秋の収穫です。寒さに対する耐性の違いからなります》
ひとしきり田園風景を見やってから、進路を北へ切り替える。
・瑛己は手の中でココア缶を転がす。自動販売機で打っていたホットはこれ1つだった。
・『ビスタチオ』空軍特有の金色の機体、横に緑のラインが1本入っている。
「あれは……『セフィロト』。『ビスタチオ』空軍戦闘艇です。戦闘配備か……?」
小暮の呟きに一同、いよいよ息を呑む。
・「報告します! 『リスビア第13地区』上空にて空賊連合軍と『ア・ジャスティ』空軍が衝突、連合軍が空軍を撃破! ならびに『イリア湖』上空にて【白虎】の前線部隊と『ア・ジャスティ』空軍が衝突。【白虎】の勝利です! 他、現在交戦範囲拡大中。そして撃破した中に『ア・ジャスティ』統括担当カイ・キシワギも含まれている模様」
・「ならびに【白虎】全軍に指示。一気に東進を開始する。『ア・ジャスティ』基地から『ムナム』まで墜とす。空賊連合には〝ルー〟で撃退後に北から、『エリミナ』、『サティファ』、『コデュー』を進撃。空軍がきても迷わず町を爆撃せよ。空軍は相手にするな。合流後に一気に叩く」
・きらびやかな装飾の中に、一際目立つ『ビスタチオ』の国旗、〝一粒の実〟。




