園原
・『園原』第11空軍基地。
西の要となっているのがここ『湊』空軍基地ならば、『園原』は東の要。
・総監・雨峰 かんろ
・「『園原』と言えば『湊』の姉妹基地……友好を深めるためにも、いい話ですね」
・「せやかてジンさん!! 『園原』空軍って言えば〝天空の騎士〟とまで呼ばれる凄腕連中だって話やないですか!! 戦らな損ちゃいますか??」
・『園原』の航空祭は国内でも屈指の規模だからな。
・ましてや『園原』基地は遠い。半日かかった『日嵩』の向こう、『白雀』の北東に当たる。
・「祭りだからな。例年軍の重役達もこぞって足を運ぶ。特に今年は30回目の記念大会だ。来賓の数も多いだろう」
・『園原』までの直線ルートには山間部が入るため、南寄りに迂回して向かう事になった。
2時間置きに休憩を挟み、1度中間地点にある空軍基地で一泊。
2日がかりでの移動となった。
・小高い山の向こう、1つ、2つ、飛び越えるとそこに。
セメンで塗り固められた、巨大な基地が広がっていた。
・『園原』第11空軍基地。
降り立った327飛空隊の面々は皆そこで感嘆の息を漏らした。
管制塔からの指示で滑走路を抜け、駐艇場にたどり着くなり、すぐさま作業着姿の係員が現れた。
彼らの案内に従い格納庫へ向かったのだが。
その道すがら―――停留する、さまざまな機体を見た。
1機や2機ではない。幾つも幾つも。
「オーライ、オーライ、オーライ」
格納庫もすでにいっぱいで、あふれんばかりに飛空艇が並べられていた。
その種類も様々で、『蒼国』のものばかりでなく。他国のものと思われるものから、商業用、民間機………色も形も模様も多彩で、まるで飛空艇の見本市のようになっていた。
「祭りは4日後でしたよね? これまさか、全部、お祭り関係の?」
目を丸くしている秀一に、そばにいた作業員がハハハと笑った。「まだまだこんなん序の口ですよ」
「この先まだまだ増えます。祭りの前日とか2日前くらいからピークになりますよ。今日はまだ全然。すんなり滑走路に入れたでしょ? ピークになると降りるのも順番待ち。上空をぐるぐる3時間旋回しなきゃならない事もありますし。まして屋根付のこんな場所あいちゃいない。山向こうの第2、第3駐艇場に野ざらしですよ」
「ふえー」
「そんなにかよ……」
格納庫の中も色とりどりの旗やオーナメントで飾られ、もう祭りのような雰囲気である。
・「それにしても……大きな格納庫ですね。『湊』の倍以上かな」
「これが見たとこ何個もあったよな? その上第2、第3駐艇場って……どんだけやねん」
・格納庫から歩く事数分。
公舎の脇に巨大なグラウンドはあった。
普段はここで勤めている者が運動するような場所だろうか? 今は小さい物から大きい物までテントが幾つも並び、万国旗が吊るされている最中だ。電飾を持って走る作業員の姿もある。
・――そもそも、『園原』空軍基地の航空祭は3日間に渡って行われる。
主に会場となるのは基地、隣接する『園原』の街、そしてその東に広がる湖。
祭りの3日間その3つの会場は露店がひしめき、人で大変にぎわう。
そして目玉の1つが飛空艇のアクロバットショー。
3日間、日に3回。基地から街の上空そして湖にかけて、人々の頭上を駆け抜ける飛空ショーは有名である。
そして3日目に行われる2万発の打ち上げ花火。こちらも見所の1つだが。
何よりも来客の目を惹くのは。
例年、2日目に執り行われる模擬空戦。『園原』の選りすぐりの2チームによるドッグファイトだ。
選抜の基準となるのは基地内での事前試合、そして日々の業務成績はもちろんの事。最終的な判断は、総監、雨峰 かんろの推薦―――。
事実上『園原』空軍基地1番、2番を争う2つの隊によるドッグファイトという事になる。
国内でも随一の航空ショー、観客は国内外、動員数は3日間でのべ50万はくだらないと言われる。
そのメインイベントである模擬空戦。それに選ばれるという事がどういう事か。
斉藤 流が率いる『飛天』は、4年連続でそれに選抜されているのである。
それこそまさに、『園原』随一の隊、しいては国内随一の隊と言われる所以である。
・ああ、ホテルだ。『園原』の。
それにしても……見れば見るほど、場違いな所である。
3人部屋という事で入ったが、実際にはそんな物じゃなかった。
廊下への出入り口こそ1つだったが、玄関スペースから3つの部屋に分かれており、バス・トイレも各部屋にある始末。
しかも1つ1つの部屋もそれなりに広く……もはや個室同然だった。
内装も豪華な物で、調度品一つ一つ取ってもいい物が並べてあるように見えた。
ベットも大きい。宿舎の倍以上だ。
・『園原』空軍航空祭、2日目の模擬空戦ショー。
その舞台となるのが、『園原』基地の東、街道を抜けた先にある湖である。
瑛己の中でそれはさほど大きなイメージの物ではなかったが、今日それはガラリと変わった。
大きい。
湾と言ってもいいほどだ。
飛空艇をこちらの格納庫に移送がてら初めて上空を飛行したが。
(確かにこれは、空戦の1つや2つ)
簡単にできそうな所だ。
太陽の光が湖面に反射して、何ともいえない光を放っている。
その湖をグルリと取り囲む木々。
向こうに小高い丘があり、そこに一本杉もあった。
その一本杉を目印にして、木々の向こうに確かに、滑走路はあった。
・湖のある場所から街へは、地下に軍用の特別モノレールが引いてあったので、それで簡単に行き来ができるようだった。
基地までもそれでつながっているらしいが、祭りの期間中は物資運搬などがメインとなり、それ以外の使用は基本的に制限がかかっているらしい
・ホテルからは少し離れた、街の外れにあるような小さな店だった。
・いつも行く大衆食堂のような居酒屋ではない、静かなバーのような雰囲気だ。
・瑛己たち327飛空隊は、そのひな壇の正面に並べられた特別招待客用の席に座が用意されていた。
そこにいるのは瑛己たちばかりではない。
並べられたパイプ椅子はざっと100ほど。座っている人のほとんどは瑛己には覚えのない顔ばかりだが、中に稀に新聞やメディアで見た覚えがあるような者も混ざっていた。
席に100人、そしてそれとは別に、彼らを囲むように式典を見守る一般の観客がいる。
数は知れない。内外から押し寄せた人たちが今、その壇を取り囲むようにここに集まっている。
上から見たら、『園原』の街の中心部分が真っ黒になっている、そんな状態なのだろう。
・だがこの『園原』空軍基地を守る女神は違うらしい。なにせこの30年、航空祭において、たった1度も雨天で中止になって事がないというのだ。
30年×3日間。ただの1度もだ。
奇跡に近い出来事なのかもしれない。
・「『園原』第11空軍基地、第114飛空隊・『飛天』。〝天空の騎士〟の異名を持つ飛空隊」
・『園原』航空祭、対外試合は過去5回。今回で6回目。
・白の機体と、青の機体。
剣を抱く者と、星を抱く者。
(前者『飛天』、後者『七ツ』
・単機で飛ぶには確かに距離がありすぎる。今まで瑛己が飛んできた中で一番遠かったのは、『園原』だ。中継して2日かかった。ただしそれは各員の体調面を配慮しての飛行時間だった。飛ばせば1日で行く事ができない距離では決してない。




