永劫の丘
・沿岸に沿って歩いて行く。そしてさらに行った所で。
「着いた」と兵庫が呟いた。そこは小高くなった丘の上だった。
瑛己は小さく息を漏らした。
そしてそこに、世界が広がっていた。
まるでこの星のすべてのように……180度見遥かな、満天の蒼空。地平線がグルリと線を描き、雲が世界を翔けている。
そしてその半分は碧色の海。崖になった向こうに、海が遥か彼方、太陽を受けて光輝いていた。それはさながら、翼を持つ者を誘うかのような。引き込まれそうな風が髪を揺らし、体の横を抜けていった。
「ここは……」
瞳は、世界に目を奪われたままだった。
兵庫は懐から葉巻を取り出すと、ゆったりとした動きで火を点けた。
「この大陸で、一番西に位置する場所だ」
ふと兵庫を振り返る。と、その傍らに彼の背丈半分ほどの石塔があるのに気付いた。
「色んな呼ばれ方がある……忘れられた場所、最西端の地……だが、俺達、空で生きるもんの間では、こう呼ばれている」
兵庫はふっと息を吐くと、ポツリと呟いた。
「永劫の丘」
「……」
そして兵庫は、その石塔を見た。
その目は、空の蒼と海の碧に洗われたかのように、とても穏やかで、静かなものだった。
・その石塔には、こう書かれていた。
―――永劫の鳥 この空に 眠る