『湊』基地・町
・この『蒼国』、西の湾岸に位置する『湊』第23空軍基地である。
・『湊』空軍基地 総監・白河 元康(sirakawa_motoyasu)
・隣国『黒』との関係はここ数年来よくなったり悪くなったりを繰り返しているが、今日の明日に戦争が始まるという状況ではない。
となると目下、空軍が空で対峙する相手は、空をはびこる無法者達となる。
『湊』基地はその前線に立っていた。
・『湊』へ行けば平穏無事に日々を送る事はできないだろう……それは彼らにとって胸躍る事であったが、同時に危険だという事になる。
・『湊』が各地から優秀なパイロットを集めているという話は聞いた事があった。
・磐木がチラリと見た方向には、数年前、何かの記念で立てられたという時計塔が、物言わず訴えている……。
・掲示板とは、宿舎と本塔を結ぶ連結部分に設置された、各隊の召集等の連絡事項が書かれたボードだ。関係者は朝一番に閲覧を義務付けられている物である。
・飛は「まだや。宿舎からここに直行したさかい」と言った。食堂は、本塔とは反対側に位置している。
・作戦召集 北塔2階の第8会議室
・北塔の2階。ここに広がる景色は、昼間なら『湊』の町を一望する。(第8会議室)
・そんな地図の、中央に書かれた『蒼国』。周りの大きさに比べたら、『湊』など、何と小さなものなのだろう。
・『湊』第23空軍基地、第327飛空隊・通称『七ツ』。『蒼国』空軍関係者でその名前に覚えがある者は多い。
・前線基地と言われる『湊』の中でも、最も激戦を潜り抜け、空のならず者達を沈めてきた者達である。
・最近ではやはり『獅子の海』。【天賦】と渡り合い輸送艇を守り切った話は、既に広く知られる所である。
だが―――。それが、誰の力によるものなのか。彼らは知っている。
・飲みたい時に飲む。来たい時に現れる。そういう連中だ。開店時間も閉店時間も、お構いなしな事の方が多い。
・のんびりと日々を過す、本を読んだり、音楽を聴いたり。『湊』の町並を散策に行ったりもした。活気のある、中々いい町だと思った。銅レンガの洋風な造りに、似たような建物と入り組んだ路地。最初は迷ったが、道を尋ねれば誰しも、笑顔で気安く案内してくれた。 瑛己はこの町が、この1週間でとても好きになった。
・ウィーン、ウィーン、ウィーン
・「第三種非常警戒警報……」
・「敵襲だ」
・「この朔の空に、晴天に忘れられた、空の蒼さを映した翼」
・まず、滑走路が3分の1ほど、なくなった。
代わりにあるのは、黒い焦土。アスファルトはひっくり返り、白線など姿もない。
格納庫の半分は焼かれ、行き場をなくした蒼い飛空艇の幾つかが、残った滑走路に肩を寄せるように並んでいる。
被害は基地の他の施設にも及んでいる。
本塔、そして北塔はわずかな被害ですんだものの、南館は半分以上を焼失。会堂に至っては全焼、跡形もない。そんな中で宿舎がほぼ無傷だったというのは奇跡だ。
・「町の方も、こっちほどではないにしろ、ちぃっと害が出たみたいだ。しかし『湊』の鳥は元気だねぇ。あんな事があったっつーのに、よく動く。半分が町の応援に向かった。若いってぇのは、宝だな」
・基地へと続く一本道の脇にある公園に、瑛己と秀一はいた。
・時刻は21時を回っている。とは言ってもまだ基地はライトが煌々と照っている。管制塔からのサーチライトは一晩中続くだろう。
正面出入り口は封鎖されている。
『湊』基地もそうだが、夜間は別の出入り口がある。
身を低くして草を掻き分け、ただひたすら小暮の背中を追いかける。どうやって中へ入るつもりなんだろうか? 関係者用の裏口だろうか? だがそちらには夜間も見張りが立っているはず。
・作戦講習は第5会議室。
・北塔の第8会議室。ここで『湊』に入って以来繰り返し行われてきた事と言えば。
「召集だ」
作戦命令―――。
・―――そう思いながら裏口から基地に入り、宿舎へ向かう。
まだ早いので、人の出入りはそれなりにある。
『海雲亭』
・そしてその向こうに見えるのは、空を渡る風の棲家。『湊』空軍基地がある。
・目の端に、黒いピアノが入った。
・その音はちゃんと調律されていた。
・そう言って彼女はふっと店の壁に掛けられた一枚の写真に目を向けた。
瑛己もまた、それを見た。
白黒のその写真には、飛空艇の前に佇む3人の男が写っている。
ぼやけているし、店内が暗いのでよく見えなかったが……そのうちの2人は、見覚えがあった。
・基地に続く砂利の一本道を外れ、ザワザワとわななく草原に飛び込む。
・『海雲亭』はほとんど被害に遭わなかった様子で、「こんな時だからこそ」と親父は翌日から店の営業を再開した。
海月は被害に遭った所を回り、片付けを手伝ったり、炊きだしのグループに加わり配って周ったりと忙しそうだった。
だけど真っ黒になって走り回ってる海月を見て、瑛己は、なぜかきれいだと思った。もちろんそれを言うと、「瑛己、喧嘩売ってるのね?」と拳を固められそうだったので、黙っていた。
・厨房に立つ海月の両親も大忙しでフライパンを握っている。
いつものバイト君(亮太)に加えて近所の奥さんにも何人か、臨時で来てもらってどうにか回している。
『るり亭』
・「あ……ひょっとして、『るり亭』? あそこの定食、美味しいんだよね!!」
「そうそう!! 瑛己、行った事ないやろ。ただし、海月さんみたいな別品はおらへんで? あそこにいるんは、化石になりそうなばーちゃんだけや」
「……飛、そんな事言ったら、ヨシ婆ちゃんの隕石が落ちるよ……?」




