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空-ku_u-【用語集】  作者: 葵れい
登場人物 【黒国】
51/89

ウツツメ(現夢)

 ・大佐

 ・「まったく使えん。クズ以下だ」

  「そうおっしゃいますな」

  「本国に戻ったら、ここの責任者全員の首を落としてくれる」

  「落ち着かれませ」

 ・それに合わせて縦にロールさせた長い黒髪が揺れる。

  眉の上できっかり切りそろえられた髪と、黒で統一された軍服。

  背は小柄だが、高すぎるほどのピンヒールのせいか足が長く見える。

  全身黒に包まれる中、その肌は陶器のように白く、赤い唇が浮き上がるように光っていた。

  一見幼子にも見える童顔であるが、その目を見れば違うとすぐに知れる。眼光が違う。

  そしてその形のよい唇から紡がれる言葉は、容姿からは想像できないほどの棘が含まれていた

 ・ウツツメは上着を羽羽織りながら聞いた。これまた黒だった。

  だが1点違うのは。その襟元に輝く―――金色こんじきの蝶のピン。

 ・「お前以外なら即刻死刑だ」

  クハハと笑い、ウツツメは腰元の剣を揺らした。

 ・「我が手で闇に葬ってくれる」

  顔についた髪を振り払う。

  するとかぐわしいほどの花の匂いが辺りに散った。

  毒花どくかのごとく、引き寄せられる、甘い甘い匂いが。

 ・「ゼイ。『夜叉姫やしゃひめ』を出せ」

 ・この女性将校の気性上、この状況で落ち着く事などできようもない。それはわかっている。

  護衛の5機、これほど瞬く間に墜とされてしまっては。

 ・1人の女性が姿を現した。

  全身黒。長い上着を後ろに棚引かせ。高いピンヒールを鳴らし、こちらへ向かって歩いてくる。

  髪も漆黒。縦にロール状にしたそれが、彼女の歩調に合わせて揺れている。

  その顔は、まるで幼子のようだ。

  ―――だが目が違う。

  あれはしいて言うならば、支配者の目。

 ・「我が名を問うか。下民の分際で」

  「……」

  「まぁいい。ここまでよう立ち回ったわ。愉快愉快」

  「……」

  「我が名は現夢ウツツメ。『黒国』鬼灯花きとうか騎士団総隊長・現夢じゃ」

 ・「そなた、未来を予見する事ができるのであろう?」

  「……」

  「その秘密を解明したいと、うちの研究所の連中がの」

  「……何の、ために」

  「世界平和のためだ」

   そう言っておきながらウツツメは、自分でも見え透いていると思ったのか、悪戯イタズラっぽく笑った。

 ・「かくも」

   その笑いを打ち消すように、ウツツメは語気を強めた。

  「大人しくせぬと、痛い目を見るぞ」

 ・「飛ぶか、青き小鳥」

  「……」

  「その身に生えた翼は、いずこまで飛べる?」

  ククと笑うウツツメに対し。

  秀一は初めて、笑った。

  「望む限り、どこまででも」

  強い笑みだった。

  その笑みに、ウツツメでさえ見とれた。



 ・第三公家当主にして、この中(十二公家)で一番最年少の少女こそが彼女、ウツツメであった。

 ・あの連中のせいだと罪を擦り付けてぶちまけてやりたい所だが、彼女は言い訳が大嫌いなのである。

  「全責任は私にございます」

  欠片も思っていなかったが、ついついそう言ってしまった。こちらの言葉の方が彼女のプライドを傷つけなかった。

 ・ドトウが言う〝責任〟とは、死罰。

  しかしウツツメは気が晴れなかった。あの時は「首をはねてくれる」と叫んでいたが、人の手によりやられると気に入らない。

  ましてやこの男ではなお更である。

 (老獪め……)

 ・「―――お待ちください!! 『鬼灯花』は私が育てました騎士団!! そのような男には任せられませんッ!!」

 ・今すぐこの腰の剣で。

  目の前の男を、切り殺してしまいたかった。

 ・「笑い事ではないわ」

  「……申し訳ありません。つい」

  「『鬼灯花』を第ニに取られたぞ!!」

 ・「あの気持ち悪い男にッ」

  「ウツツメ様。落ち着つかれませ」

  「落ち着けぬわ馬鹿者ッ!!」

   地団太を踏んで、ウツツメは頭をかきむしった。

  「あやつの事などッ!! 思い出すだけでも虫唾が走るッ!!」

  「……」

  「あやつ、私に何と言うたと思う? 議会終了後だ。耳元で……ドトウに取り成しておくから心配しなくていいよ、だそうだ。耳元でッ!! 吐き気がする」

  「……よかったではありませんか」

  「あんな奴にどうこうされるつもりはないッ!! あの肉塊めが」

 ・童女のような外観から若く見られがちだが、ウツツメも今年で25歳。

  年頃ではあるが。

 「いつかこの剣の錆にしてくれる」

  ロズリは完全に対象外だなと、ゼイは思った。

 ・「しかし、あの部隊を遊ばせておくには、いささか勿体無い話かと」

  ゼイの言葉にウツツメは満足そうに笑った。「では、ある」

  「何せ、私が育てあげた、国内最強の部隊だ」

 ・恐らくは、ドトウの恫喝の1つや2つは受けただろう。

  並みの人間、心臓の小さい物ならば、その眼光と声にその場で卒倒する者もいるくらいである。

  だが目の前の女性は、そちらにはそれほど気にしていない様子。そういうのを表情に出さず心にだけしまっておくタイプの人間ではない。

 (……やはりこの方は)

  只者ではないと、ゼイは内心思う。

 (やはり血か……)

  ウツツメの母は、先代・第三公家当主。今は家督を譲ったが、かつては〝毒姫〟とまで言われた軍師であった。

  それが、5年前。ウツツメが20歳になった時、あっさりと表舞台から去った。

  惜しむ声は未だ多い。だが。

 (いずれ世間もわかる)

  この人が、先代と同等―――否、それ以上の器である事。


 ・「『鬼灯花騎士団』、第三公家・ウツツメの部隊だ。『黒』において『黄泉』と並び立つと言われる飛行部隊……確かお前が連れ去られた時に会った女将軍は、」

 「……現夢ウツツメと名乗っていました……」


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