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空-ku_u-【用語集】  作者: 葵れい
登場人物 【湊】
5/89

須賀 飛(suga_takaki)<1、2部>

挿絵(By みてみん)


 ・自称・空戦マニア。

 ・歳は瑛己と同じくらいだろうか……? 明るく染めた髪に、ヒョロリとした体格。首に巻いた茜色のマフラーを服の中に入れずに背中に垂らしている。胸ポケットには赤のマルボロが、グシャリと押し込まれ半分顔を出していた。

 ・「実弾使ったら、お前、狙うだろ」「何をっすかー?」「撃墜記録」

、・「ぬるっ」

 ・そしてカカカと笑った

 ・「あいつは、あれでもうちの切り込み隊長だからな」

 ・「少しぃ? はぁ、俺繊細やで。超・うるとら・すーぱーに疲れたわ」

 ・「強いもんと戦いたい。俺が飛ぶ、唯一無二の理由ワケや」

 ・「それで散ったら、悔いはない。空で死ねたら、本望や」

 ・本当は、無凱と対峙してみたい。だが、それが同時に死を意味するのはわかっている。空で死ねたら本望だ、その言葉に嘘はない。だが、(まだ、ちと、死ねん)



 ・「非番か……何や、余計と肩こりそうやわ」

 ・「はぁ? せやな……歴代撃墜記録・トップになった時とか、無凱むがいをコテンパンにのした時とか。【天賦てんぷ】と【白虎びゃっこ】相手にたった一人で抜けた時とか。そうそう! 山岡を後一撃で墜とせるっちゅー時に起された日には! あー! 思い出しただけでも悔しいわ!!」(こいつは、夢の中までこれなのか……瑛己はとても嫌そうな顔をした。)

 ・飛と秀一は同じ部屋である。3人用の部屋だが2人で使っている。そのうちあちらに引越し命令が出るかもしれない。

 ・『明義』にたどり着いた後、飛がしきりと地団駄を踏んで悔しがっていた。「まさか、あないな場所で対面するとは!! 無凱に気ぃ取られて、取り逃がしてしもた!」



 ・「セピアの飛空艇、真ん中に、―――ド・でかい、キスマーク」

 ・「俺も、山岡には借りがあってな」絶対ゆずれん、借りって奴がな。

 ・《瑛己、山岡がいたら、手ぇ出すなよ》無線の声に、瑛己は顔をしかめた。……またか……。「〝自称・空戦マニア〟としてか?」

 ・《ちゃう。プライドや》

 ・《山岡には、借りがある》

 ・《初フライトの時、あいつには……随分コケにされたからな》「遭ったのか」《遭うた。そこで俺は、墜ちた》

 ・《よう覚とるわ……エンジンガタガタで、どうしようもなくなって。脱出の準備しとった時やった》

 ・―――Good Luck  ザワついた無線から聞こえてきた、陽気な音楽と、場違いな声。

 ・何や? 唖然とする飛が次に聞いたのは、

 ・―――もうちょっとマシな腕になってから、かかっておいで

 ・そして、笑い声。

 ・飛はハッと空を見上げた。そしてその目に飛び込んできたのは、セピアの真ん中に映えた―――あかのルージュ。そして、操縦席からニヤリと笑う、黒いサングラスの男。

 ・《……他の何者なにもんにもゆずれん。あいつは絶対、俺が墜とす》



 ・「じゃかぁしぃわッッ!!! だーっとけッッ!!!!!」

 ・「磐木隊長が殴っても無理ないわ……俺かて、この手がまともやったら、お前を殴る」

 ・飛は苦笑して、トントンと秀一の肩を叩いた。「泣き虫」「ガキの頃から変わらんなぁ、お前は。安心しろって、そう簡単に、俺はくたばらへんから。な、瑛己」

 ・「完全にお前、中毒だな」冷やかしがてら医務室にやってきた新は、飛の様子に苦笑を混ぜて呟いた。「そのうち心だけ先に、空に昇っちまうかも」

 ・「作戦中にとりかれたらたまらんな」



 ・瑛己は、明らかに安堵の表情を浮べた。

  その様子に、飛は怪訝に眉を上げ、瑛己を、そして田中を見た。


 ・「かもしれん? わからへん? 連絡ができんっちゅー事は、そんだけ、状況がひっ迫しとるっちゅう事やろがッッ! 相手はあの磐木隊長やぞ? それが、動けもできず、何しとるっちゅーんや!! 茶ぁでもしばいとるっちゅんか!! せやのにここで一体、何してろっていうんだ!!」

 ・飛は上手いが、荒い。時折、その気性ゆえに周囲が見えなくなる事がある。(ジン談)



 ・「こんな時に、こんな時間まで眠っているよりはマシだと思うけど」

  飛は胸ポケットからマルボロを取り出すと、「阿呆」と一本取り出した。

  「こないな時やからこそ眠れる時に眠る。常道や」

 ・「あないないわくつきの場所で、何をしとったのか。それも、仲間の口を封じないかんような……何を、しとったのか」

  「調査は」

  「『音羽』が血眼になってやってるっちゅー話や。あそこも身内をやられてるからな、せやけど、なーんも出てこぉへん。すべては海の藻屑もずく、空の散雲や」

 ・「どないなサイが振られた所で、俺らはただ、飛ぶだけや」

  相手が空賊であろうと、例え、一つの国であろうと。

 ・「で、小暮ちゃんから2人に伝言。くれぐれも大人しくしてるように!」

  「なんスかそれ。何やそれじゃぁ、俺達が、しょっちゅう問題起してるみたいやないスか」

  〝達〟という言葉に、瑛己は露骨に顔をしかめた。それを見た飛がムッとした様子でそれに食って掛かった。

  「何や瑛己、その顔は。まさかお前、〝運命の女神にぞっこん惚れられてる分際〟で、まさかまさか、自分は真っ当な人生歩んでますと?? 問題なんぞミジンコほども起してませんと??? 言うつもりやないやろな」



 ・そこにいたすべての者が。

  瑛己と空(ku_u)との、不思議なえにしを。

  そして瑛己が〝彼〟に持っているだろう、特別の感情も。……知っているからこそ。

 ・「……何でですか?」

  空(ku_u)を倒す、それが夢だ。初めて瑛己に会った日そう言ったたかきまでもが。白河にそう問わずにはいられなかった。

 「何で俺らが……空(ku_u)とらなあかんのですか?」

  飛は苦しそうに顔を歪め、白河を見もせず言った。

  お前、空戦マニアじゃなかったのかよ? お前、空(ku_u)と戦いたいんじゃなかったのかよ? どうしたよ? どういう心境の変化だよ? 何、らしくない事言ってるよ?

  ―――誰も飛に、そう言わなかった。

  一番瑛己のそばにいた男。一番多く、共に、空を飛んだ男。

  あの飛が。その飛が。そんな言葉をいた事。むしろそれは、その場にいたすべての者の心を揺さぶった。



 ・「飛は? おかわりは?」

 「阿呆。お前のピッチに合わせてたら、こっちの身がもたんわ」

 ・運ばれてきた4杯目を、平気な顔して飲む秀一の横顔を眺めながら、飛はチビリと一口だけ飲んだ。

 ・「奴らにとってそれだけ鬱陶しいっちゅー事やな。空(ku_u)っちゅー、絶対の存在も」

  ―――そして、俺らも。



 ・―――それは、飛の脳裏に焼き付いている。

  この男と初めて会った日。瑛己を探してここへきて、その名を呼んで振り返った彼の顔が。決して自分の心をさらす事がない青年が、自分の感情の多くを飲み込んで言葉にしないあの瑛己が。

  あれほどの、安堵の表情を見せた、あの瑛己があんな顔を見せた……そこに。この、田中という男はいた。

  そして何かを問うよりも早く、瑛己は背を向け店を出て行った。

 「俺はあんたを信用できん」

  飛はハッキリとそう言った。

  聖 瑛己に、あんな顔をさせた男。

 ・「自分でライターなんて名乗る、こましゃくれた奴は嫌いやっちゅーだけや」

 ・「君は、空戦マニアと名乗っているそうじゃないかい?」

   田中が唇の端を釣り上げてそう言った。

  「それがどうした」

  「いや? ―――そして、この空に数多く存在する空賊・渡り鳥の中で、君が最も敵対心を抱き、倒したいと思っている飛空艇乗りは、【竜狩り士】・山岡 篤だと聞いたけど」

  「それがどうしたッ」

   しかし田中は、笑みを浮べるだけでそれ以上何も言わなかった。

   それに痺れを切らしたのは飛だった。

  「行くぞ」秀一に向かって吐き捨てるように言うと、ダンと床を踏み鳴らして、田中の横をすり抜けようとした。

  「飛」

   秀一が慌てて、その背中を追いかけようとした刹那。

   それより早く、田中の腕が飛の肩を掴んでいた。

  「何やッ……」

   田中はニッコリと微笑んだ。その手を荒っぽく振り払おうとした途端、その口元が小さく動いた。

  「―――」

   次の瞬間放るように投げ出された飛の顔は、驚愕で固まっていた。

   それを見て、田中は一層微笑んだ。

  「飛……?」

   飛の足を動かしたのは、秀一の声だった。

   足早に去る飛を、今度は田中も止めようとしなかった。

  ・そしてその脳裏には、田中と名乗ったあの男の目が焼きついていた。

   肩を掴まれ振り返ったその瞬間。飛の背中に過ぎったのは―――悪寒。

   そしてその口元が最後に、音なく発した言葉は。

  「飛ーっ」

   ―――倒してみろよ

   呟いた新に、飛が頷いた。



 ・「俺はあん時……背筋がブルって止まらなかったっすよ……」

   不意とはいえ、あの無凱むがいの翼を砕き、そして退かせたあの飛行。

 ・鳥。空を自由自在に駆け巡り、太陽の光に輝く真っ白い鳥―――。

 ・『獅子の海』。その時動けなかったのも事実だし、腕が震えて止まらなかったのも事実だ。

 ・(読んでいる)

   かすりもしない。

   こんなの、敵うわけがない。

   こんなの……もう、どうしろというのだろう?



 ・「いやー、まさか、しっかし……仰天や。あの空(ku_u)が、あないに可愛い子やったとは……!!」

 ・「なんやとー!? 瑛己お前、さてはっ、空(ku_u)と仲良くなって、彼女の飛行技術の秘密を知ろうっちゅー魂胆やな!? なんちゅー外道なやっちゃ!! 抜け駆けは許さんぞ!? 空(ku_u)のケータイ番号、俺にも教えろ!!」


<第2部>

 ・すると、秀一は困ったように苦笑を浮べ、「あっちの棚で、『飛空新聞』にかじりついてますよ」

  「空軍や空賊など、空に関する事を専門に扱った新聞なんですが……特に空賊、渡り鳥の事が細かく書かれていて。床に胡坐あぐら掻いてブツブツ言いながら、必死に読んでますよ」

 ・「瑛己さん……けどね、僕、飛があの新聞を読んでいる時の……背中を。見る度に思うんです。あいつ、いつか空軍辞めて、渡り鳥にでもなるんじゃないかって」

 ・すると秀一は頭を抱えた。「よしてくださいよ」

  「それでなくてもあいつ、最初は『渡り鳥になるんや!!』って言い張って、じじ様とばば様と毎日大喧嘩していたんですから……。間に挟まれた僕なんか、2人に『飛を説得してくれ。聞かんようだったら、崖から突き落としてくれても構わん』とせがまれ、飛からは『ジジィとババァを説得してくれ。無理なら、海に突き落としても構わん』と。本当に、困っちゃいましたよ」

 ・「結局、お互いが取っ組み合いを始めて、最終的に『空軍で我慢しろ』という事で落ち着いたんですが。僕としては、ヒヤヒヤですよ……。一緒に空軍に入る時、くれぐれもよろしく頼むと頭を下げられてますし。かといって、『渡り鳥になるんや!!』と叫ぶ飛を止められる自信もありませんし」

 ・その時、どこかから「ドアホ!! 【天賦てんぷ】の無凱むがいに挑戦状やとー!? 

 ・【昴】ごときが、100年早いわッッ!! その前に俺が相手したから首洗って待っとけ!!」という、荒れた声が聞こえてきた。

 ・秀一も、きっと、飛も。

  知っていて、何も聞かないでくれた。

  知っていて、何も変わらず接してくれた。



 ・「はぁぁ!! 着いたっ、着いたでー!!! ハッハッハッ!!!!」

  恐ろしく元気な笑い声が、だだっ広い滑走路に鳴り響いた。

  瑛己はゲッソリと、その声の主を振り返った。

 「何や、空気が美味いなぁ!! 絶好の飛行日和っ!! お天とさんも、絶好調やな!!!」

 ・そこには〝自称・空戦マニア〟須賀 たかきが、不気味なほど満面に笑みを浮べて、小躍りしながら煙草の箱を片手に遊んでいた。

 ・「俺、『飛行新聞』だけは、完璧にチェックしてますから」

 ・「ッッッザケンなァァァァァァ!!!!」

  口火は、もちろん飛が切った。

 ・「んなもん、学生ガキじゃあるまいし、楽勝ですって!」

  そう高らかに断言した飛であったが。

  《飛! 速度の出しすぎだと言っているだろ!! 余所よそ見していると右を持っていかれるぞ!! 何をやっている!!!》

 ・「……あかん、俺、あーゆーの絶対向いてない……」

 ・俺は繊細やから、あーゆーのは向いてないんや……と、自称〝繊細な空戦マニア〟は寝言のように呟いた。

 ・「どっちにしろ、どいつもこいつもまとめてぶっ倒したる」

 ・「ええなぁ、自分勝手に空が飛べて。見たで、『飛空新聞』。【天賦】の無凱に挑戦状やって? でかい風呂敷、広げるのはさぞかし簡単なんやろな」

  「ハン」

  店の女性が言葉少なく、グラスを昴の前に置いていった。

  「あたしは、そんな事言った覚えはないね」

  「活字にちゃんと残っとるやないか」

  「だから、ライターなんて言う連中は嫌いだっていうんだ。ある事ない事書きやがる。それを鵜呑みにする馬鹿が、世界には五万と溢れているっていうのに」

  「今なんつった、お前」

  「あん? 聞こえなかったか、この馬鹿が」

 ・―――ケリは、空で。

 ・「秀一ッ………!!!!!」

  飛に、脱出のパラシュートは見えなかった。

  気付いた時には、海に墜ちていく秀一の機体と。

  昴が秀一を撃った。

  そして今も、昴の銃口は自分達を向いている。

 ・「スバル―――ッッッ!!!!!!」

 ・《スバル、テメ、裏切ったのかッ!!?》

  怒声というよりノイズに近い飛の声に、昴は「ハン」と笑った。

  「あたしは、ただ仕事をしてるだけだよ」



 ・飛は無言で、歯をギリと鳴らした。そして顔を上げたその視線の先には、昴がいる。




 ・何しとんのや、おまん、そんなトコで!! 早よ起きんか、馬鹿ヤロ!!

  そう言って、寝台に掴みかかっていく飛を。瑛己は佐脇先生と一緒に押さえ込んだ。

  秀一ッッ……!! 馬鹿ヤロ、馬鹿ヤロッ……!!

 ・「あいつが、俺より先に死ぬ、ワケがないんや」

 ・「秀一は、見とんのや……俺が死ぬ、その様を」



 ・「あいつが俺の家の傍に越してきたんは、まだこんなちっこいガキの頃やった」

  ポツリポツリと飛は口を開いた。

  「あいつの父ちゃんは医者でな。越してくる前は、どこぞのデカイ病院におったって話や。何思ったか知らんけど、あんな小さい町に越してきてな。まともな医者がいなかったから、皆、めっちゃ喜んだって、家のジジィが言ってた」

   だがそれは、瑛己に語っているというよりも。

  「せやけど、そーゆーやっかみがあったんやな……秀は、近所のガキ連中に結構苛められて。あいつ、すぐ泣くし。俺も正直、面倒な奴やと思ってた」

  「……」

  「家が近いし、ジジィとババァがうるさいし。しゃーないと思って付き合ってやってたんやけども……ある日、あいつの母ちゃんが俺の家に飛び込んできたんや。秀一が、部屋から出てこない。何とかしてくれって」

  「……」

  「『飛、お前、何かしたのか!!?』ジジィとババァが怒鳴るし。俺、全然心当たりねーし。その前の日、馬鹿連中に絡まれてるトコ助けたくらいなもんで。俺、濡れ衣だし。だけどジジィが殴るし。いい迷惑だ。俺は頭にきて、秀一の部屋に殴り込んだ」

  「……」

  「したらあいつ、布団引っかぶって泣いてやがる。俺が扉蹴破って入ると、すっげぇビクついてやがるし。ますます容疑が掛かるし。一発殴ってやろうと思って秀一の胸倉掴んだら」

  「……」

  「あいつ、グチャグチャの顔して俺に言ったんや……『なんで?』って」

  「……」

   ―――飛、死んじゃうの?

  「泣きわめく秀一をぶん殴って、洗いざらい白状させた。俺が死ぬトコを見たって……。あいつが時々、変なもんを見る事は知っとった。それが原因で、苛められてるってのも知ってた。けども俺は……んなもん、どうでもよかった」

   ―――バーカ。

  「勝手に未来を決められてたまるか」

   ―――死なねーよ、阿呆。

  「あの日から、俺と秀一の中で何かが変わった……俺は誓った。絶対に秀一より先には死なないと。空で死ねたら本望やと思う。だけど―――俺は、秀一の〝未来〟をブチ壊す。そのために空を飛んでる。そしてあいつが、親父の反対を押し切って医者の道を選ばなかったのは、あいつなりに、〝未来〟と戦うためや」

   ―――飛は、僕が守る。

  「来んなって、どれだけ言ったかわかんねーんやけどな」

  「……」

  「それなのに……何でこんな事になっちまうんやろ」

  「……飛」

  「なぁ、瑛己……人の運命って、何やろう……? 生きるって何やろう? 死ぬって……何なんだろう?」

  「……」

  「秀一は今、夢の中で、何を見てるんやろう……?」


 ・「よかったな」

  「あん?」

  「秀一の意識が戻って」

  「……まーな」

   この数日で一番嬉しかったニュースは、秀一の目が覚めた事だった。

   それを聞いた時の飛の喜びようはなかった。

   しばらくはまだ安静が必要だと言われたが、医務室へ行き、にこやかに微笑む彼の姿を見て、瑛己も心底安堵した。

   まだ言葉ははっきりと出てこないが、こちらの言っている事はわかる様子だった。

   それから飛は毎日顔を出しては、あれから起った事を話して聞かせた。瑛己も顔を出したが、時折新の待ち伏せに遭うようになってからは、時間などを慎重に考えて行くようにした。

 ・「一体何が起きて、こんな事になったんか……俺にはまだ納得ができなくて……」

   秀一が、なぜあんな目に遭ったのか―――。

   飛の目に浮かぶ複雑な色の根底には、それがあるのだろう。



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