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マシン・レコード  作者: 平田公義
第七章
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~怪物の腹~ 制圧

 戦闘開始を知らせる光芒。


 アリスとリーンは自機の中で、息をひそめてその様子を見守るしかなかった。現在、地球側へ迂回する〔シーカー〕二隻を護衛し、どうにか『リヴァイアサン』の裏に回り込んでいた。


 まだ気づかれてはいなかった。すでに妨害(ジャミング)の範囲が、アリスたちの元まで届いて、レーダー探知の隠れ(みの)になってくれている。


「リーン軍曹、気を緩めるな。敵はどこから来るかわからないからね」

「わかってる」

「よろしい。では、先行するぞ」


 リーンの〔バーカム〕とアリスの〔ファークス〕実験型は他の味方に斥候する旨を伝えて、先に『リヴァイアサン』へと飛んで行った。不用意に速度を上げれば、熱に反応されしまうので、なるべく穏便に、慣性飛行で筒型の造船場に接近する。


 正面とは違い、側面と裏側は実に静かなものだった。デブリ撃退用の迎撃システムがあるはずだが、まったく機能していない。自動照準で、精度は低くとも牽制くらいには使える。


 それがないというのは、やはり内部でかなり慌ただしい動きがあるとアリスは予想した。


「隊長、今のうちに太陽発電の受信機を破壊して、電力を絶つのはどうだ?」


〔ファークス〕|実験型の横を流れる〔バーカム〕から通信が入る。すでに、左手には『リヴァイアサン』の横っ腹。ごつごつとしたブロックがいくつも組み合わさってできた人工の岩肌が、通り過ぎていく。


「ダメだろうね。今、受信機を破壊すれば、陸戦部隊が突入できない。それにここの電力を絶ったら、残っている連中は窒息死するぞ」

「あくまで、生け捕りってことか」

「それが普通なのよ。虐殺になんて手を貸す道理はない」


 アリスは言って、眠気が抜けきらない頭と狭まる視界に喝を入れる。瞼が重く半目状態な上、目元のくまがさらにひどくなっていた。ここ数日眠った自覚もなく、連戦続きで体力的にも限界が近づいていた。


 こんな体調でも出撃させるあたり、『地球平和軍』本部は現場を知らないでいる。


〔ファークス〕実験型と〔バーカム〕は敵に発見されることなく、『リヴァイアサン』の裏手に到着した。待ち伏せもない。ざる警備に内心ほっとしならが、二人は正面で囮をする味方部隊が気がかりだった。


「見張りもない……? まぁいい。リーン軍曹、〔シーカー〕に信号を」


 ノイズの激しい無線からリーンはアリスの指示を受けて、〔バーカム〕を一度地球側の側面に出した。アリスの〔ファークス〕実験型は搬入口へ移動した。爆破するタイミングはまだだが、警戒してのことだ。


 二隻の〔シーカー〕はゆっくりと『リヴァイアサン』を迂回していたが、躍り出た〔バーカム〕の発光シグナルを発見する。


「あれか? …………なるほど。これより、前進する」

「了解。さすがに、警備が薄いようだな」


 発光シグナルを見た各〔シーカー〕の機長が有線で通信し、船体を『リヴァイアサン』へ向けて全速前進させる。加えて、副機長が同じく発光シグナルで、返答する。


〔シーカー〕の護衛に当たっている〔ファークス〕通常(ノーマル)装備と電子戦(EW)装備は引き続き、しんがりを務める。


「よし。あとは、船が来ればいい」


 リーンはモニタに灯る小さな発光シグナルを見て、つぶやく。〔バーカム〕はマニピュレーター、指と指の間に仕込んでいるライトを消すと、身を翻して搬入口に戻った。


『リヴァイアサン』の裏手は居住区となっているため、巨大な円盤状のブロックが回っている。その回転に引き込まれないよう距離を取るのは意外と難しく、気を抜いたらすぐにも機体が持っていかれそうだった。


 人工の建造物でもやはり引き込む力関係はあるのだ。


「ん? 聞こえる、リーン軍曹?」

「おお。向こうとは連絡つけてきた」


 アリスは〔ファークス〕実験型をセンターハブ、回転軸に位置する搬入口の前で待機させ、戻ってきた〔バーカム〕を迎え入れた。


 搬入口は伸縮式のボーディングブリッジを完備しているようだが、外部から手動で開けられる装置が設けられている。〔AW〕で作業することが多い宇宙空間では、人のサイズと〔AW〕サイズの二つある。中の空調がどうなっているのかわからないが、エア・ロックを開くのに手間を取らせなくてすむ。


「うまくいっているようだな、今のところ」

「そうね……」


 リーンの無線で割れた声に、アリスはぼんやりと相槌を打つ。眠い。だが、ちらつく悪夢がすぐに意識を今の戦場に引き戻す。繰り返し、繰り返し……。


 リーンもそんな彼女の空っぽな相槌を聞いて、むっと顔を顰める。


「無理するなよ?」

「ああ……、ええ……っ」


 アリスは頭を振って、意識を強制的にでも維持する。部下に心配されているようでは、まだまだ。作戦も進行中だ。変に集中力を削がれている場合ではない。


「あの子たちだって――――っ」


 彼女の脳裏に過るのは、かつての自分を重ねてしまう三人の少女の姿だった。




 敵も味方も判別しにくい混沌とした戦場で、たった一機〔アル+1(プラスワン)〕だけはその外見から敵の標的にされやすかった。


 他の味方機は敵味方識別コードがあるとはいえ、必要以上に神経質になっている。向かってくる敵に対して、攻撃を躊躇(ためら)い、孤立してしまった敵を味方なのではと疑心暗鬼に陥る始末。そのせいか、味方機は予想以上に被弾している。


 反対に敵から一切の迷いを感じられなかった。弾薬の出し惜しみもなく、敵と定めた機体には片っ端から攻撃を仕掛けている。


「敵二機――、ごめん、四機に増えた。タイプは全部〔ギリガ〕みたい」


 彩子(あやこ)が電子戦用モニタに映る敵味方識別信号を見て言った。


「いいわよ。追ってくるなら」


 (いつき)は言って、〔アル+1(プラスワン)〕を反転、追ってくる敵を正面からとらえる。その際、前部と肩部のバリアブル・バーニアを機体を押し出す方向にして、進んでいく。


「…………」


 バディを組んでいるコフィンも〔ギリガ〕電子戦(EW)装備を敵と向い合せ、九〇ミリマシンガンで敵に牽制。敵はその装甲を生かして、最小限の回避運動しかしない。


 妙なだな、と彼女は思った。かつて使った戦術だけに、その長所と短所は知っている。戦闘が始まってまだ三分程度。しかも四機編成でその回避はおかしかった。


「――――っむぅ」


 そこに(おと)が〔アル+1(プラスワン)〕のビーム・ライフルを放った。巨大な閃光の矢が、呆気なく命中。敵二機を撃破すると、残った敵〔ギリガ〕が慌てふためくように散開。いや、逃げ出したのだ。攻撃に転じることなく、母艦である〔イリアーデ〕に戻っていく。

 

 トリガーを引いた(おと)はその感触に、やはり違和感を覚えた。胸を圧迫する苦しみとは別の、頭の隅に(もや)がかかったような不可解さだ。


「ねぇ……。おかしい」


 (おと)が喉から絞り出すようにして言う。


「おかしいって――――っ!」


 そこに、側面から攻撃が飛んでくる。どれもプラズマの光を纏った高速の弾丸。幸い被弾はしなかったものの、次の敵が来たということだけはすぐにわかった。


彩子(あやこ)、どうしたの?」

「ごめん、こうも敵味方混じってると判別しにくいのよ」


 彩子(あやこ)の報告の遅れを謝罪しながら、周囲の状況を観測。〔アル+1(プラスワン)〕のセンサに不備があるらしく、警報が発せられないみたいだ。


〔アル+1(プラスワン)〕と〔ギリガ〕電子戦(EW)装備は一旦散開。


 敵は〔ファークス〕の通常(ノーマル)装備と電子戦(EW)装備だ。

 

 (いつき)たちとコフィンはシュミレーションで訓練された敵を囲い込む機動に入り、敵を中心とした円運動の動きをする。たとえ敵味方が同型機を使っていようと、彩子(あやこ)が判別し、誤射のないよう味方に照準を合わせると射撃できないようをセットしている。


 敵二機の攻撃は〔アル+1(プラスワン)〕に集中しており、背後に回る〔ギリガ〕電子戦(EW)装備には目もくれない。


 おかしい。ここに来て、(いつき)彩子(あやこ)も違和感を覚える。


 回避運動を続ける〔アル+1(プラスワン)〕が敵の注意をひきつけていると、二機の〔ファークス〕は背後から〔ギリガ〕電子戦(EW)装備に狙撃され、爆散した。眩しい閃光がモニタいっぱいに広がり、思わず(いつき)は機体を後退させる。


「この人たち、どういうの?」

「知らないわよっ。でも、向かってくるんだから、敵なんでしょう……?」


 (いつき)の戸惑いに、彩子(あやこ)まで自信を失っていく。


 二度の『新人類軍』との戦闘で感じた、あの機械のような冷徹さがない。熱くならず、状況を見ては撤退もすかさずする。自尊心や悔しさに囚われず、絶対的な効率を優先させる。


 だが、今は妄執にかられた狂気すら思える。感情のままに暴れまわる野獣だ。いや、一心不乱にナイフを振り回す素人の感覚に近い。


 爆発した光の中から、コフィンの〔ギリガ〕電子戦(EW)装備が〔アル+1(プラスワン)〕に接近、合流するとコフィンの声が(いつき)たちに届いた。


「三人とも、どうも戦闘は大方終わるみたいです」

「え? どういうこと?」

「周りを見てください」


 コフィンが怪訝そうに言うのを、(いつき)は半信半疑で〔アル+1(プラスワン)〕であたりを見渡す。


 あたりからレールガンや九〇ミリマシンガンの発射光も、マイクロミサイルの爆発も、極端に減っていた。棒立ちになっている〔アル+1(プラスワン)〕と〔ギリガ〕電子戦(EW)装備に対して、攻撃する兆しもなくなっていた。


「敵が武器を捨てて、投降しているんです」

「どうして、そんな…………」

「敵、違う?」


 (いつき)(おと)はわけがわからず、この状況に混乱した。向かってきたのは、間違いなく自分たちを殺すためだというのは理解できる。


 しかし、そこにはどんな目的があったのか。〔イリアーデ〕出港の時間稼ぎでもなければ、殲滅目的でもない。ただがむしゃらに突撃してきただけのように、彼女たちは思えた。


 現に今も、〔イリアーデ〕の砲撃が遥か下方で続いている。


 二人が混乱を露わにする中、彩子(あやこ)は電子戦用モニタを見て驚愕する。


「ちょっと、どういうことよ! 敵の〔AW〕全機投降を確認だって」

「どこからの情報?」

「えぇっと…………、味方の部隊から伝言ゲーム形式で。各部隊に投降した敵機は全部で一八機になるそうよ」

「むぅ……、(おと)、わかんないっ」

「あたしだって、わかんないわよっ」


 日本語でああだこうだ言う彩子(あやこ)(おと)


 (いつき)は〔イリアーデ〕からの砲撃を心配しながら、英語でコフィンに指示を仰ぐ。


「どうします、准尉?」

「とりあえず、妨害(ジャミング)を解除して、船団に合流しましょう。おそらく、内部の制圧がまだ済んでいないと思いますから」

「でも、ここで引いて敵が内部から攻められていることを知ったら――――」


 もともと、『地球平和軍』の〔AW〕部隊が展開したのはこうして敵の注意を最大限に引き付けるためだ。陸戦部隊による内部制圧は直前まで知られて欲しくもないし、敵がそちらに集中するのも望ましくない。


 今〔シーカー〕の船団に引き返して敵が陸戦部隊との交戦を強化したら、余計な時間と被害が出ることだろう。それに、内部制圧にはアリスとリーンも参加する。そういう気が回ってしまうから、(いつき)は後退を避けたかった。


 コフィンもリーンたちを心配しているが、他の味方機が後退しているのをみると、独断で囮を続けるのは危険だと判断できた。加えて、妨害(ジャミング)の影響が薄くなり、帰投命令まで届いている。〔アル+1(プラスワン)〕も同じだ。


 だが、彼女は決断した。


「お、囮を続けますか? きっと、大目玉でしょうけど」

「その方が、堅実的でもん」


 コフィンの震える声から、かなり無理をしていると(いつき)たちは思った。彼女も軍人の端くれである以上、命令を優先させたい気持ちがあるはずだ。だが、〔イリアーデ〕の砲撃が徐々に弱まっていくのを見ると、迷っている時間は少なそうだ。


 (いつき)はしんみりと口を閉ざしていた彩子(あやこ)(おと)に日本語で言う。


「話、聞いてた?」

「まぁ、なんとなくわかったから。でも、囮をしていられる時間も限られてるから、早く制圧が終わるのを祈るまでよ」

「やろっ。せんせ、がばてる、かも」


 (いつき)たちは迷いを振り切って、機体を『リヴァイアサン』に向けて発進させた。




〔イリアーデ〕艦橋では、首謀者たちが〔AW〕部隊の裏切り行為に(はらわた)を煮えくり返らせていた。『地球平和軍』に捕まりたくない一心で、戦っていたはずが臆病風に吹かれて投降したのだ。


 彼らは収容していた軍人たちに味方を攻撃させながら、彼らの頭に銃口を向けていた。その安全装置の外れた銃がいつ発砲されてもおかしくなかった。作業をさせられている軍人たちは、怯えながら近辺の宙域、加えて内部に進行してきた『地球平和軍』の陸戦部隊の動きを報告する。


「あ、あの、内部から侵入してきた部隊が、この艦に……」

 

 恐怖にすくみながら、艦橋の下段で作業をしている一人の女性軍人が近くでアサルトライフルの銃口を向ける男に言う。振り向くこともできず、備え付けられているモニタを見つめて、死にたくないと心中で叫んでいた。


 その男は苛立った表情を彼女に向けて、怒鳴りつける。


「だったら、早く何とかしろっ!!」

「な、なんとか……?」


 女性軍人の戸惑った様子に、男は持っていたアサルトライフルの銃床で力任せに彼女の頭を殴りつける。


「――――っあぐ!」


 突如として襲ってきた痛みと衝撃に、女性軍人はコンソールキィに顔から叩きつけられる。後頭部の鈍い痛みで、意識が判然としない。視界が赤く見えるのは、瞼かどこかを切ったのだろうか。


「言われたことをやれってんだよっ!」


 殴りつけた男は反動で、上段のほうへ流れていき、天井に手をついてすぐにも舞い戻る。


 その行動はまるで見せしめのように、他に作業をする弱り切った軍人たちの恐怖を煽った。もともと犯罪者だった連中だ。精神的にも、常軌を逸しているだろう。さらに、うまくことが運ばないのを見て腹いせに殺人をしてもおかしくない。


 だが、〔イリアーデ〕正面で踊るように旋回する二機の〔AW〕の相手にして、上段の主犯者たちの意識はそちらにばかり行っていた。


「お前ら軍人は、何を偉そうに……っ」

「あぁ……」

 

 男は女性軍人の髪を乱暴につかむと、さらにコンソールキィに顔を叩きつける。弱々しい、醜い声が彼女の口から発せられた。それは男にしか聞こえないほど、小さく、死の恐怖を孕んだものだ。


 それ以上のコンソールキィが砕ける乾いた音に、誰もが肩を跳ね上げる。


「散々、人をこき使いやがって。死んじまえよっ! 『地球平和軍』なんてのは――――」


 瞬間、男の体が横っ飛びに流れた。


 下段で男に注目していた誰もが、その光景に目を見張った。だが、その前にかすかに空気が抜ける音を数人が耳にしていた。それは希望でもあり、絶望でもある。


 次で、鋭い男の声が艦橋に響いた。


「伏せろっ!!!!」


 刹那、武装した主犯者たちが振り向こうとして、眩しい光と耳を劈くような奇怪音が艦橋を満たした。それも二度三度と執拗に。


「――――――っ!!」


作業に連れてこられていた軍人たちもパニックになり、姿勢を低くして頭を守る。叫び声も奇怪音の中に飲み込まれ、主犯者たちは目を潰されながらもアサルトライフルを発砲した。


 だが、それよりも迅速かつ的確な射撃によって、射手の肩や腕、胴体と鉛玉が殺到する。閃光の中で、武装した人間が蹲り、床から足を離して浮いている者もいる。それでも、抵抗の意志を示す人はいた。


「――――っ!」


 アサルトライフルを構えた一人が何かを叫ぶ。呪詛か、それとも愛おしい人の名か。戦意のあるものには、さらに容赦ない一撃が胴体に叩き込まれ、絶命していく。


 徐々に晴れる白い闇の中で、黒装束の集団が主犯者たちに銃口を向け、包囲している。中には白を基調としたパイロットスーツに黒のタクティカルベストを来た人物も確認できた。手に消音器(サイレンサー)をつけた拳銃を持った黒装束集団は、防眩バイザーしたヘルメットを着用している。居住区のエア・ロックから侵入してきた『地球平和軍』陸戦部隊だ。


 一人の隊員がバイザーを上げて、警戒を怠らず指示を飛ばす。おそらく部隊の隊長だろう。


「艦橋、制圧。すぐに、連絡しろっ」


 その声はあの奇怪音、スタングレネードの音にやられた主犯者、軍人たちには聞こえなかった。


 次々とバイザーを上げて、状況を淀みなく観察する隊員たちの中に、リーンとアリスの姿もあった。彼らは下段から攻め込み、確実に一人は射殺している。生け捕り優先だったが、彼らの身の安全を考えれば当然の対処だろう。最初の犠牲者である男は、リーンが狙撃したのだ。


「段取りどおりではなかったな」

 

 隊長の男が、リーンに詰め寄って嫌味ったらしく言う。本来なら、もう少し会話を聞いてから突入する算段だったのだが、彼の狙撃でやむなく決行した。尋問して主犯たちが口を割れば、面倒ない。しかし、そう簡単にいかないのが現実だ。


「うまくいったんだ。それでいいだろ」


 リーンはそれだけ言って、暴力を振るわれた女性の元に流れる。あと少しでも撃つタイミングを逃していたら、味方に死人が出るところだった。そう思えば、少しの不手際くらい意に介すことではない。


「まったく、フェミニストがいいご身分だ」

「確かに。でも、今は負傷者の手当てを優先すべきね」


 悪態をつく隊長に、アリスは跳弾を足に食らったと思わしき軍人の元へ。


 陸戦部隊の隊員たちは主犯者たちを一か所に集めると、手すきのものから怪我人の応急処置に入った。彼らの献身さは買うが、まだ他部隊との連絡もない。〔イリアーデ〕は制圧できたが、『リヴァイアサン』のほうはもう少しかかるだろう。


「隊長っ! すぐにも、本隊が合流します」


 通信を請け負った隊員が報告する。


「よし。手の空いたものは俺についてこい。他のブロックの制圧に向かう」


 隊長の判断に数名が付き従い、見張りと数名の応急手当てをする兵を残して、艦橋を出て行った。


 リーンとアリスは怪我人の手当てを続ける。敵の制圧はもちろん大切だ。しかし、彼らは名前も知らない誰かを殺した罪悪からか、少しでも人を救いたかった。


 それから、ほどなくして〔シーカー〕船団が『リヴァイアサン』を包囲し、次々と〔AW〕操縦者も乗り込んでいった。その頃には、『リヴァイアサン』の制圧はほぼ完了していた。

 

 この炭酸の抜けたような戦闘に、誰もが高ぶらせていた士気にしこりを残すことになった。

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