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マシン・レコード  作者: 平田公義
第三章
22/152

~護衛~ 戦艦防衛戦 〈前編〉

『新人類軍』の〔AW〕部隊は固まって飛び、一気に『地球平和軍』の〔イリアーデ〕に接近していた。機種は〔ミリシュミット〕、十六機。半分が電子戦(EW)装備、もう半分が通常(ノーマル)装備の基本的な配備と最小限バディによる独自判断に任せた戦術。


「いいか? ここからは各自の判断で動け。作戦に変更はない。いくぞっ!」


 鈴嚥下(リンイェンファ)の号令のもと、部隊がバディごとに散開。そして、各通常(ノーマル)装備に換装されているマイクロミサイルポッドから、第一波攻撃が開始された。


 まだ妨害(ジャミング)が敷かれていない空域に、ミサイルの列が〔イリアーデ〕にまっすぐ飛んでいく。


 それを確認した〔イリアーデ〕所属の〔AW〕部隊、〔ファークス〕、〔ギリガ〕の混合編隊は電子戦(EW)装備を〔イリアーデ〕後方に展開させる。すぐにも〔イリアーデ〕本艦と、前に出た電子戦(EW)装備の発信翼かも妨害(ジャミング)が発せられた。何十キロにも及ぶ戦闘空域が出来上がる。


「瞬間EMPを使える距離まで、あと――――」


 前に出た兵士の一人が自身の乗る〔ファークス〕に願うようにつぶやく。電子戦(EW)装備の機体は大きく展開し、そのすぐ後ろで通常(ノーマル)装備は射撃武器を構えて、正確な位置をつかめない敵機の迎撃態勢に入っている。


 すぐにも、ミサイル群は電子戦(EW)装備のEMPの効果範囲に飛び込んできた。各機はそれぞれのタイミングでEMPを発動


 妨害(ジャミング)に入っても問題なかったミサイル群は、それ以上に強力なEMPに当てられて、一気に軌道を狂わせ、同士討ち、自爆をしていった。爆発は大きく、宇宙空間に大きな光を咲かせた。それは見たものを飲み込まんとするほど、強大なものだった。


「こいつ――――、核でも使っているのか!?」


『地球平和軍』の誰かがそんなことを言った。


 その実、ミサイルは核など使っていない。劣化ウラン弾頭による焼夷効果で光が飛散しているのだ。その火だってすぐに絶対零度の宇宙では長くは持たない。


 光明が晴れると、第二波ミサイル群が攻めてきた。


 先の第一波で怯んだ『地球平和軍』の〔AW〕部隊は後退し、同じ要領でミサイルを自爆させる。しかし、今度の閃光は弱い。代わりに、細かい粉塵が舞った。


 粉塵のカーテンが視界を遮る。


「――――フフ」


 ひび割れた、それでいて楽しげな女性の声が、『地球平和軍』の通信回線に割り込んできた。


 瞬間、前線の電子戦(EW)装備は〔ファークス〕は盾を、〔ギリガ〕ならその重装甲を生かして、最小限の回避運動と応戦をする。


 その後方の通常(ノーマル)装備もその戦列に加わらろうとする。だが、『新人類軍』の集中砲火は前に出せまいとした意図をもっていた。前列の電子戦(EW)装備は、大した攻撃が加えられていない。


 こうして、二分された部隊に燕華(イェンファ)を含めた数機が電子戦(EW)装備の〔AW〕に飛び込んでいく。ほかの数機が『地球平和軍』通常(ノーマル)装備を押さえてくれている。


「さぁ、いかさてもらうよ」


 燕華(イェンファ)の〔ミリシュミット〕が編隊を離れて、単機で敵の群れに突っ込む。彼女の機体は普通とは違い、右腕部に〔ファークス〕の細いシルエットのマニピュレーターが移植されている。急造のために、機体にまだ慣れていないが十分使える。そうまでしたのは、その手が握る反りのほとんどないブレードを使うためだ。ブレードの幅は広め、片腕でも十分振るえる長さをしている。


 燕華(イェンファ)機の動きを『地球平和軍』はすぐにも捉える。見るからに電子戦(EW)装備の発信翼がないことを確認。単機で突撃してくるのを、おろかに思った。


「単機で来るとは、馬鹿か?」


 電子戦(EW)装備の機体たちが、嘲るように燕華(イェンファ)機に攻撃を集中させる。そして、取り囲むように展開していく。確実に落とす算段だ。


 しかし、燕華(イェンファ)は物怖じすることなく、すぐ近くの〔ギリガ〕一機に狙いを定めて接近する。

 

 その距離を危険と判断したほかの機体が、一斉に迫ってくる部隊に狙いを変える。


「こいつ――――っ」


 接近してくる燕華(イェンファ)機の異様なシルエットに驚きながらも、そのパイロットは機体を後退させようとする。そこに、『新人類軍』の部隊が牽制攻撃。展開していた『地球平和軍』電子戦(EW)装備の機体が、すぐにも散り散りに散開した。


「残念。お仲間さんに見捨てられて」


 燕華(イェンファ)は口元をゆるめて、敵の射撃をこともなく避ける。銃口が一定位置から動いていないのが、何よりも回避を安易にさせた。他の味方機も二対一の構図を取って、狩り出している。


 燕華(イェンファ)機は〔ギリガ〕を斬撃の間合いに捉える。


「こうなったら――」


 九〇ミリマシンガンを乱射していた〔ギリガ〕はそのままの状態で『幻覚(ゴースト)』を発動させた。刹那、燕華(イェンファ)の〔ミリシュミット〕が慣性で宇宙に流れ、打ち出される〔ギリガ〕の弾丸が二、三発当たった。


「おっと……。やってくれちゃう」


 機体の機能が停止しているというのに、|燕華《イェンファ〕に焦りはなかった。これくらいは予想できていた。そもそも、囮になるために単機特攻をかけたのだから。


「これなら、これならっ!」


 焦りの声。

 しかし、九〇ミリマシンガンを連射する〔ギリガ〕にレールガンの一撃が的確に操縦席を貫いた。死を意識するまもなくパイロットは死んでいった。惰性で数発撃ちだされたが、反動で操縦席を貫かれた機体は後ろへ体制を崩して、虚しく回転する。


 そして、敵機を落とした〔ミリシュミット〕はロングバレル・レースガンを構えたまま、燕華(イェンファ)機によって行く。


 燕華(イェンファ)は機体が回復したのを見て、すぐに態勢を立て直した。機体には大した被害はなく、敵の腕の悪さがよくわかった。周りを見れば、多くの同士が『地球平和軍』の電子戦(EW)装備を落としている。


「あーあ。いっちゃてまぁ」

(リン)隊長――」

「隊長はいらないよ」


 そばで警戒する〔ミリシュミット〕のパイロットに言って、燕華(イェンファ)はすぐにも機体を動かす。向かう先は『地球平和軍』の通常(ノーマル)装備牽制が苦戦し始めた部隊の応援だ。


 ロングバレル・レールガンを構えた〔ミリシュミット〕も同行する。


「いい腕だ。次も頼みたいが、あたしの分も残しておいてくれよ?」

「はい。尽力します」

「それじゃ、あたしを満足させて」


 そして、燕華(イェンファ)のバディはまたも距離を取り、遠くから援護態勢に入る。

 燕華(イェンファ)機はブレードを担いで、『地球平和軍』の部隊へ切り込んでいく。




「アームウェア部隊がこちらに押し返されてます」


〔イリアーデ〕ブリッジでは、戦況が防戦一方であることを確認した。〔AW〕部隊、特に電子戦(EW)装備が一気に落とされ、敵船隊に攻撃を仕掛けるのは難しくなっている。


 ヤッシュは奥歯をかみしめて、少数部隊の侵攻を止められない自軍を情けなく思った。敵は丁寧にも通常(ノーマル)装備の〔AW〕の数を減らし、最後この〔イリアーデ〕に火力を集中させるつもりなのだ。


「――っく。増援はまだか!?」

「こちらに向かっているはずです」

「もっと詳しい情報は――」


 ヤッシュの言葉を遮って、〔イリアーデ〕が多い揺れた。


「主砲大破!? 被害状況、知らせろ!」

「敵アームウェア、本艦を囲み始めてます!」


 入ってきた報告は絶望的だった。後退して、戦線を下げた〔AW〕部隊がによって〔イリアーデ〕も射程に入り始めている。おまけに、主砲をつぶして火力を下げている。


 あざとい戦術を繰り出す敵に、ヤッシュはいてもたってもいられず、艦長席を立つ。


「ヤッシュ少佐! どこに――――」

「わたしも〔バーカム〕で、応戦する」

「あれはまだ試作段階で、使えませんって。調整だって」

「うるさいっ。ここで死にたいのか!?」


 ブリッジクルーの呼び止めも利かず、ヤッシュはブリッジを出て行った。振動の続く〔イリアーデ〕。かなりの損傷が出ており、宇宙服を着た艦内クルーたちが消火作業のために移動している。


「ここまでとは……」


 ヤッシュは言って、軍服のままで〔AW〕デッキへと向かう。

 

 一方でブリッジのクルーたちはあきれ返っていた。

 一番呆れていたのは副館長である、クロッグ・ジョーリンという男である。大尉階級で、無精ひげを生やした壮年だ。着ている軍服も着古してしわが入っている。つばのかけた制帽の位置を立ちかめて、彼は仕方なしに艦長席に腰を下ろした。


「すまんが、わしが臨時で指揮を取らせてもらうぞ……」


 その疲れた声に、ブリッジクルーは静かにうなずいた。


〔イリアーデ〕の船首が撃たれ、船体が大きくよろける。


「左船首に被弾! サブ・スラスター五番から七番使用不可能です」


 クルーの一人が叫んだ。


 すぐに、クロッグは言った。


「取り舵いっぱい。『ガーデン1』への最短コースに移行」

「了解! コース変更。すぐに計算します」

「うむ。アームウェア部隊に本艦と距離を取るように伝えろ。こちらの迎撃ができん」

「了解です」

「それと――――」


 クロッグの指示を待つクルーたち。


 クロッグは一度大きくため息をついてから面倒そうに言う。


「ヤッシュ少佐に前に出過ぎるな、と伝えておけ」




 展開していた『地球平和軍』の〔AW〕部隊は、ひび割れた攻勢命令に怒りを覚えた。そうしたいのはやまやまだが、〔イリアーデ〕の妨害(ジャミング)がなければ、まともに張り合えない。


『新人類軍』が一気に電子戦(EW)装備機を撃墜し、健在している機体は四機。それも手負いの機体ばかりだ。


「くそっ」


 愚痴るパイロットの前には、燕華(イェンファ)の〔ミリシュミット〕がいた。右腕部の太刀と、左腕部の十徳ナイフという二刀で接近戦を仕掛けてくる。


「これで――――」


 燕華(イェンファ)は目の前の〔ファークス〕が盾を構えるのを見て、思わず目を細めた。その弱腰の姿勢は彼女の趣味ではなかった。


「五機ね」


 燕華(イェンファ)機は正面に捉え、右腕部の太刀を突き出す。


〔ファークス〕のパイロットは機体に盾を構えながら、レールガンで応戦させる。だが、圧倒的に近い距離だというのに、燕華(イェンファ)機は軽やかに、それも最小限の動きで回避して見せた。


「うっあああああああああああああ!!」


 棒立ちになり、回避することを忘れ、〔ファークス〕がレールガンを乱射する。


 だが、燕華(イェンファ)機の太刀が盾を突き破り、そのまま操縦席をも貫いた。〔ファークス〕は爆発することなく、レールガンを構えたまま沈黙した。


 燕華(イェンファ)はすぐに貫いた〔ファークス〕を捨て、次の獲物に取り掛かる。敵である『地球平和軍』の人間の叫びは、爽快感があった。


「下剋上っていうの、この感覚」


 周りを見れば、〔イリアーデ〕への攻撃が開始され、敵の布陣も崩せている。楽勝ムードだが、燕華(イェンファ)は慢心しない。むしろ、乾いた欲望のはけ口がいなくなるのをもったいないと思った。

 

「さて――――?」


 かなり下方にいた燕華(イェンファ)は〔イリアーデ〕の底部、小型輸送船〔シーカー〕が接続されており、そこに一機張り付いているのを発見した。


 見たこともない機体だ。全体的には〔ファークス〕に近い。だが、黒塗りのシルエットが地球の青でくっきりと見え、細部が違うのが見て取れた。


「ふぅん……」

 

 燕華(イェンファ)は〔イリアーデ〕の底に回り込むよう、大きく回っていく。途中、機銃座の狙い撃ちにあったが、すぐにほかの味方がそこをつぶした。


〔シーカー〕から離れた謎の機体は、一度〔イリアーデ〕船首の方へスラスターを噴射して、上部に移動した。かなりの初速だが、バランスが悪いように見える。


「ま、いいさ」


 燕華(イェンファ)は見たことのない機体に目もくれない。機体をそのまま〔シーカー〕のほうへ直進させる。


 底部の弾幕は薄く、避けるのに問題はなかった。もともと〔AW〕の射出デッキだ。周りに機銃座が少ないのはわかっていた。


 燕華(イェンファ)機は頭部のバルカンを使って、〔シーカー〕を狙い撃ちにする。〔シーカー〕はなすすべなく装甲を貫かれ、爆発。メインジェネレーターに火が入っていなかったとはいえ、〔イリアーデ〕の〔AW〕デッキが消し飛ぶほどの威力があった。


 そこで作業をしていたクルーはその光に飲まれ、跡形もなく悲鳴を上げる暇もなく消えて行った。


 燕華(イェンファ)はその爆発を背にして、一気に〔イリアーデ〕から離れる。




 今までにない大きな突き上げるような揺れに、艦内中で悲鳴が上がった。

 ブリッジクルーも混乱し、すぐには立ち直れなかった。


「損害状況、早くせんか!!」


 クロッグの声がブリッジに響き渡った。


「ふ、船底で爆発。〔シーカー〕が――――!?」


 クルーも言いながら、驚きを隠せなかった。被害状況が立体モニタに出され、誰もが絶句した。〔AW〕デッキ壊滅、メインジェネレーター出力低下。それにともなった炉心融解。


「もはや、これまでだ…………」


 クロッグは言って、いまだ必死に敵勢力に対抗するクルーたちを見下ろす。ここに踏みとどまっても、〔イリアーデ〕は航行不可能になって、敵の餌食になるだけだ。かといって、脱出船でこの船を捨てても戦闘状態では危険すぎる。


「…………。おい、艦内線すべて開け」


 すぐそばのクルーに言う。クルーは真剣な表情で、了解し回線を開いた。


「どうぞ」


 促されて、艦長席のマイクを取るクロッグ。


「全乗組員に告ぐ。撤退命令を下す! 本艦はこれ以上もたない。各自、脱出船に移動し、合図あるまで待機! 急げっ!!」


 クロッグは乱暴にマイクを戻して、上段ブリッジを見渡した。


 誰もが黙って、彼を見つめ固まっていた。


「何をしている。命令したはずだ。早く移動しろ」


 その顔はやはり疲れていて、とても潔い雰囲気があった。


 クルーたちはヘッドセットを置いて、ブリッジから出ていく。肩の重荷の外れた彼らから、不安な表情は消えなかった。しかし、互いに声を変えてすぐにも脱出船の割り当てをしていた。


「艦長代理……」


 ひとりのクルーがクロッグに近づく。


 クロッグはその若き軍人に、厳しい眼光を向ける。


「もう一度言う。脱出しろ」


 その言葉に、そのクルーは何も言えなかった。クロッグのやろうとしていること。それの意図はきっと、先の艦内放送で誰もが理解できたはずだ。彼は一度、敬礼してブリッジを後にした。


 クロッグは揺れる船内に目を配らせて、下段のほうを見た。そこにはもう誰もいなかった。




「ねぇ! 今の光!?」

「わかってる」


 (いつき)たち応援部隊はずっと遠くの空域を飛んでいた。もう〔イリアーデ〕は目と鼻の先だが、モニタで見る以上に距離がある。


 (いつき)たちは〔イリアーデ〕の底が光ったのを見て、胸が締め付けられる思いだった。


「敵勢力はいまだ健在です。〔イリアーデ〕に大きな損害が出ているようです」


 コフィンが戦闘空域の状況を部隊に伝える。まだ妨害(ジャミング)が利いていない空域での無線ははっきりとしていた。


 この部隊の総指揮を執る隊長が指示する。


「各機、準備はいいな? 最悪〔イリアーデ〕が撃墜されても、敵追撃部隊は討ち取れ」


 その指示に(いつき)はピクリと眉を上げた。


「軍人はそういうの?」


 味方を助けるために来たのに、その味方を見捨てる。まだ撃墜されたと確認されたわけではない。今は一刻も早く、戦闘空域に到着することが先決だ。


 リーンもその隊長の指示に怒りを覚えて、ぐっと歯噛みした。


(いつき)。軍人がなに言ったかわからないけど、すぐにでも行きましょう」

「あい。彩子(あやこ)、賛成」


 (おと)も賛同する。見殺しなんてできるはずがない。


 (いつき)もうなずいて、〔アル+1(プラスワン)〕のバリアブル・バーニア六基の出力を上げて、頭一つ前に出る。


「おい! 勝手な行動はするな!」


 隊長から叱責される。


 だが、(いつき)たちはそんなことなど無視して、目の前に見える戦場を見据えていた。


「行くよっ! 二人とも」


 瞬間、バリアブル・バーニアから青白い光が吹き出し、一気に加速していった。ぐんとシートに体が押し付けられる。


 大きく見える地球を綺麗感じる余裕もなく、宇宙を駆ける。


「あいつら…………。ガイア隊長、俺たちも――」

「馬鹿っ。あれと違って、こっちはすぐにでも行ける機体じゃない。ここで気を張ってもしかたないぞ! それに、けが人を前線に立たせられるか」

「――――チッ」


 リーンは舌打ちして、スロットルレバーを全開にする。リーンの乗る〔ギリガ〕通常(ノーマル)装備が編隊を抜けて、〔アル+1(プラスワン)〕を追うように先行する。


「貴様! 命令違反を」

「わたしもっ」


 部隊長の制止を振り切るように、コフィンの〔ギリガ〕電子戦(EW)装備も前に出て行った。


「コフィン准尉!?」

 

 追いかけてくるコフィン機に、リーン機が速度を合わせる。


「どうして――」

「詮索は後にしましょう。敵は少数でも強敵です。単機でなんて、できませんよ?」

「……了解。子供に先こされてる場合じゃありませんね」

「はい。バディの指令はお任せします」

「了解っ!!」


 リーン、コフィンは機体にアフターバーナーをかけて、一気に加速していく。


(おと)。あの光の中にビーム・ライフルを撃って」

「え、どして?」

「かき乱すの」


〔アル+1(プラスワン)〕は編隊とリーンたちを大きく離して先行。


 (いつき)は迫る戦火を見据えて、機体の角度を調節する。


「あい。わかた」


 (おと)も了解して、〔アル+1(プラスワン)〕にビーム・ライフル二丁を持たせる。


「角度、良好。戦闘空域にはまだ入ってないわ」

「あい。味方、避けてくれる?」

「そんなの、信じるしかないでしょうに」


 彩子(あやこ)は電子戦用モニタを睨みつけて言う。敵も味方も入り混じっている状態では、もはや信じるしかない。距離もあるし、回避は容易だろうがそれでも不安というものはある。


 (おと)彩子(あやこ)の言葉を信じて、狙いを定める。戦闘空域、光の交わる場所。


 的も定かではない場所に、ビーム・ライフルが放たれる。ビームの光がまっすぐに進んで、やがて戦闘空域の光に混ざった。

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