まさか…
俺が外に出ると、すでに笹島が車を回していた。二人ともそれに乗り込む。
「で、どこへ向かわれるのですか?」
「警察庁だ」
「警察庁?なんでそんな場所に?」
「実はな、千葉の九十九里浜の近くで、住所登録のない家を巡回中の警官が発見した。
とりあえず中にいた男数名を警察署に連行したんだが…」
「それだけ聞くとただの違法住居ですね」
「はは、そうだな」
「それで、それの何が私に関係あるんですか?」
「まあ聞いてくれ、取り調べ中に彼等は口を揃えて『自衛隊』と言う単語を口に出したんだ」
「自衛隊…!?」
何故その名前が?その言葉が使われるようになるのは少なくとも20年は先のはず…
「警察は軍の組織と判断して此方に連絡を寄越してきたようだ。
そのとき君からもらった資料に同じ単語があったのを思い出してね、もしかしたらと思って色々事情聴取させてみたら君に近い者の可能性がある」
「自分の?」
自衛隊の知り合いは何人も居るが、いったい誰だろうか。
「名前は…なんだったかな、とりあえずこちらで身元を引き受けることになったから直接確認するといい」
「はい、わかりました」
しばらくすると。。。が見えてくる。
車から降りると、数名の警官が出迎えてくれた。
「海軍大臣、米内……様と真田雄二様ですね、どうぞ此方に」
「すまんね」
俺達はさっそく謎の自衛官がいる取調室へ向かう。
「こちらです」
「うむ」
「はい」
あー、緊張してきたな、なんせ此方に来てから初めて俺と同じ境遇の人達と会うんだからな。しかも自分の知り合いの可能性があると来たもんだ、緊張しない方がおかしい。
「失礼します」
だからと言って、ここで引き返すのもあれだ。思い切って扉を開ける。
そこには…
「兄貴?」
「ゆ、雄二か?」
「カツ丼うま」
何故か兄姉が居た。
「………え゛」
…意味が分からん、読者の方々には意味不明かもしれないが、俺が考え得る中では最も最悪なパターンだ。
とりあえず、お互いの自己紹介を済ませて状況説明。
正直今すぐ帰ってもらいたいが…。
しかし、紹介を済まさなければ物語は進まない。
まず、逆立ち腕立てをしているチャラ男っぽい男。
「いやぁ、まさかタイムスリップだっけ?そんなのに巻き込まれるとはなぁ」
真田司郎24才
三男
所属
陸上自衛隊北部方面隊第七師団
分隊長
性格
能天気、アホ、筋肉バカ
次、椅子に座ってお茶を啜っている厳つい男。
「ふん、連絡を寄越せばいいものを」
真田逸人30才
長男
所属
海上自衛隊第三護衛艦群旗艦くらま
砲雷長
性格
厳格、たまにぬけている。
「無理に決まってんでしょ。あ、カツ丼おかわり」
真田香織26才
長女
所属
航空自衛隊南西航空混成団第83航空隊
イーグルドライバー
性格
大食い、楽天家
俺28才
次男
エンジニア
「なんで寄りによってあんたらなんだ…、いや、頼りにはなるが…」
「さあ?」
「久しぶりに休暇が一致したのでな、みなで集まって飲もうかと思い」
「あんたも呼びに行ったんだけど家の中に入っても誰も居ないし、帰ろうとしてドアを開けたら九十九里浜の近くだったわ」
「俺は一年以上ここに居るんだが…」
「それで、警察に連れられて外に出たら家はボロ屋になっていた」
「自分が思うに、この世界に全く同じ物は2つ存在できない、だから片方を消して帳尻を合わせたのではないか?」
「それじゃあ俺達の家が2つあることにならないか?」
「それは逆の理論で説明できる」
「じゃあこの一年の時間のズレは?」
「おそらくはこっちとあっちでは時の進み方が違うのだろう」
「うーん、それじゃあ俺達はどうなるんだろうな」
「俺は一年ここにいたが、特に何も無かったぞ?」
「ふむ…、今の所問題ないならいい」
「いいのかよ」
「すぐにわからんことに何時までも時間を使えん、それより今後の事だ」
「今後?」
「今後って言ったって…」
「ニート?」
「ねーさんは黙っとけ」
「なら…」
俺が米内さんの方を向くと、コクリと頷いてくれた。
「軍に来ないか?」
「「「やらせていただきます(こう)」」」