決着(第三話)
――後藤龍馬が暗殺される、三日前。
薄暗い研究室で、
後藤龍馬は一枚のカードを手にしていた。
それは、まだ正式に登録されていないカード。
実験段階で止められた、危険な代物。
「融合を加速させるカードだ。
ブーストカード……」
そう言って、龍馬は玉木隼人に差し出した。
玉木は一瞬、言葉を失う。
「……何で、そんなものを今さら」
龍馬は目を逸らし、静かに言った。
「いいからだ。
コレを、使ってほしい」
その声には、
未来を知っている者のような重さがあった。
荒廃した街。
覚醒病に侵され、理性を失った存在が蠢く中、
二人は対峙していた。
――後藤孝太朗。
かつては人間だった。
今は、融合に呑まれた存在。
一方、
玉木隼人は人間のままだ。
「……来い、玉木」
孝太朗の声は、
もう人の温度を持っていなかった。
玉木は、震える手でカードをセットする。
システム音声が、無機質に響く。
「stat up」
ブーストカード。
一日に、わずか10秒だけ使用可能。
その間――
音速移動。
身体能力の極限向上。
周囲のウィルス抑制。
すべてが、一気に解放される。
世界が、止まった。
いや、
止まったように見えただけだ。
玉木の視界から、
孝太朗の姿が消える。
次の瞬間、
背後に回り込まれ、衝撃。
それでも玉木は立ち上がる。
「……俺は、人間のまま戦う!」
二人の拳がぶつかり合う。
信念と信念。
過去と現在。
そして――
人間と、怪物。
勝ったのは、後藤孝太朗だった。
ブーストの10秒が切れ、
玉木は地面に膝をつく。
「……終わりだ」
そう言った瞬間。
乾いた音が、響いた。
銃声。
孝太朗の胸に、赤が広がる。
「……な、に……?」
狙撃。
この戦いを、
“最初から見ていた者”がいた。
孝太朗は、ゆっくりと倒れる。
玉木は叫ぶ。
「やめろォォッ!!」
だが、
もう遅かった。
...世界の終わりは近い




