取り返しのつかない選択(第二話)
<これまでのあらすじ>
世界が崩壊した未来――
灰色の空の下、玉木隼人は覚醒病と戦い続けていた。
その傍らには、彼を支える少女・栞の姿がある。
命の価値が軽くなった世界で、それでも玉木は人を救おうとする。
並んで歩く中で、栞は次第に気づき始める。
この過酷な世界で、
自分が彼に向けている感情の正体に。
だが、この世界に“未来”はない。
希望を抱くことすら、残酷だった――。
~これは、「Project Billion ―運命を書き換えるカード―」の本来なるはずだった世界線、
ザ・ロストワールド(崩壊した世界)で戦った少年少女たちの話~
Cicadaから伝達が入る。
The next mission...
[Assassinate the traitor(裏切り者を暗殺せよ)]
Goot Luck (健闘を祈る)
後藤孝太朗はわかっていた。
このようなことになると。
彼は兄の研究所に入る。
そして孝太朗はこう言う。
「兄さん!いや、後藤龍馬! 貴様はこの俺が倒す!」
そう言うと、龍馬は、
「カードダウン!」
といい、リモコンのスイッチを押した。
孝太朗の手にあったカードは、ただの金属片になった...
「……っ、なにを……!」
身体が、動かない。
力の流れが、完全に遮断されている。
龍馬は、白衣のまま一歩前に出た。
「いずれ、他のカードオーナーと衝突することは分かりきっていた」
「だから“最初から”仕込んでおいたんだ。
――カードに、ブレーカーをな」
孝太朗は歯を食いしばる。
「それがお前のやり方か……!」
龍馬は肩をすくめ、嘲るように笑った。
「それにしても、本当に君は子供だなぁ」
「“正しさ”や“想い”で、世界が動くとでも思っているのか?」
高らかな笑い声が、研究所に響く。
その瞬間だった。
龍馬の手から、小さなカプセルが放たれる。
床に落ち、割れた。
目に見えない“何か”が、孝太朗を包む。
――覚醒病サンプル。
「……っ、兄さん……!」
身体の奥が、焼けるように熱い。
意識が、崩れていく。
だが。
孝太朗は、倒れなかった。
「……そうか」
震える声で、孝太朗は呟く。
「俺は……もう、戻れないところまで来てたんだな」
プロトカード。
使いすぎた力。
その代償として得た、歪な“抗体”。
暴走は起こる。
だが、完全には飲み込まれない。
「化け物になるのは……俺だけで十分だ」
孝太朗は、自分の意思で踏み出した。
屋上へ続く扉が開く。
夜風が、二人を包む。
「やめろ、孝太朗!
それ以上進めば、君は――」
「もう遅い」
孝太朗は、龍馬を見下ろす。
「兄さんが作った世界だ」
「なら、俺が終わらせる」
龍馬は驚く。
「自我を保ててる...だと? そんな...馬鹿な!」
次の瞬間、
孝太朗の手が、龍馬を突き飛ばした。
悲鳴は、風に消えた。
――後藤龍馬、死亡。
研究所に残ったのは、
勝者でも、英雄でもない。
ただ、
“取り返しのつかない選択”をした男だけだった。
その後。
孝太朗と玉木隼人は、向かい合う。
同じカードを持ち、
同じ地獄を見ながら、
まったく違う答えに辿り着いた二人。
「希望を信じるお前とは、もう一緒に戦えない」
この夜を境に、
後藤孝太朗は“戻れない側”へ踏み込む。
そして物語は、
玉木と孝太朗――
二人の決着へと向かっていく。




