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SPRINT 05:極秘研究室の扉の前に立つ

彼の母校である「東京湾先端技術大学」は、その名の示すとおり、東京湾岸エリアに位置している。

ホテルのルームサービスで朝食を済ませると、地下鉄で新橋に出て、そこからゆりかもめに乗り換える。


三月の東京は、雪の札幌とは異なり、少し肌寒いものの、春の訪れはそこここに感じられる。

ゆりかもめは、自動運転で東京湾岸を走る新交通システムと呼ばれる鉄道の一種だ。

車窓からは、朝の陽光を受けて青くきらめく東京湾が眼前に開ける。


右側に、コミケなどの大型イベントで知られる「東京ビッグサイト」の巨大な建物が見えてくる。

懐かしい景色だ。目的地まではもうすぐだ。


マリトは、初めて東京に出てきたときのことを思い出していた。

瀬戸内出身の彼にとって、海自体は特別なものではなかったが、この高層ビル群が湾岸に迫る風景には、圧倒的な未来感を覚えた。

今見ても胸躍る光景だ。



最寄り駅で降りて、大学までの道を歩く。

駅から大学へは、しばらくは緑の多い公園のエリアが続く。


左手首のスマートウォッチに目をやったときに、ふと思い出した。

そういえば、最初にコリーンに会ったのは、この公園だったな――。

あのとき、彼女はまだ高校生だった。

それから、もう四年も経ったのか ――。


大学に到着すると、最初に守衛所に立ち寄る。

訪問者リストに照合され、ゲストカードを受け取ると、かつて所属していたAI学科のある建物へと向かう。

春休み中で、学生の姿はないが、大学院生か研究員と思しき人物を何人か見かける。


AI学科の棟の入り口に立ち、ゲストカードをかざすと、自動ドアが音もなく開いた。

卒業して三年になるだろうか。内部はあまり変わっていないようだ。

顎をタップしてコリーンに連絡をとる。

「研究棟に着いた」

「はい。こちらからも見えています」

「エレベーターで五階へ行ってください」


マリトはエレベーターに乗ると、五階のボタンを押した。

ドアが閉まり、動き始める。

現在階を示す数字が、1、2、3と増えていく。

――ん?これは?。

「このエレベーター、下がっていないか?数字は上がっているけれど」

「さすが、先輩。その数字はフェイクで、実際には降りています」


「そのエレベーターはこちらの制御下にあります」

「コリーンの研究室は五階じゃなかったの?」

「それもフェイクで、私の研究室は地下にあったんです」



当時、学部二年生であったコリーンには、例外的に個室の研究室が与えられていた。

この特別な待遇が、彼女が周囲から疎まれていた理由のひとつだったが、それには事情があった。

マリトが修士一年生、コリーンが学部二年生になってしばらくすると、コリーンの父である古楠教授は米国の研究機関に戻ってしまった。


義手・義足の研究計画は、コリーンの父親である古楠教授が米国に戻ったタイミングで大幅に縮小された。

教授はアメリカに戻ったが、教授の研究に深く関わっていたコリーンだけは日本に残り、研究が継続された。

研究の重要性を鑑みて、当時、古楠教授の右腕と目されていた、友田准教授の采配で、厳重なセキュリティ下での研究継続ができるように設備を整えたものである。


なぜ、彼女は、父親と一緒に米国に戻らなかったのか、

本来なら米国で行うべき研究を、なぜ、日本で行っていたのか、

そもそも、極秘裏にどんな研究をしていたのか、

いずれも、マリトを含む研究室のスタッフの多くにとって不可解な謎であった。


そして、約一年後、マリトが大学院2年、コリーンが学部3年になったときに、古楠教授の訃報が届いた。

詳細は知らされなかったが、事故死とだけ伝えられた。

軍事・国防に関わる重大な研究に関連していたのではないかという噂がもあった。


さらにその半年後、マリトは修士二年で大学院を修了、コリーンは三年生で早期卒業を果たした。

友田准教授は大学を去り、古楠教授の立ち上げた「パーセプモーション・テクノロジー」の次期社長に就いた。



エレベーターのドアが開くと照明が付き、マリトは一歩踏み出した。

目の前にあるのは、彼女以外の立ち入りが一切許されなかった研究室への扉だ。

彼女の卒業後、その研究室は封印され、今もなお厳重なセキュリティ監視下にあるという。

「先輩の生体認証で入ることができます」

そのコリーンの声に押されるように、扉へと一歩近づいた。


そのとき、突然、針で刺すような頭痛が走り、周囲の景色が二重に見えるような錯覚に襲われた。

軽く首を振ると収まった。


ひょっとすると、自分を拒絶しているのだろうか。

――まさかね、マリトは思った。

彼は、まさに、封印された極秘研究室の扉を開き、足を踏み入れようとしていた。


#STATUS: SPRINT COMPLETED. PROJECT IN PROGRESS.

舞台は札幌から東京へ。後輩女子は厄介な秘密を多数抱えた人物だったことが明らかになってきました。

それにしても、地下に設置された研究室とか厨二っぽいですね。ちょっと演出過多ような気がしなくもないです……。

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