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PROLOGUE

ブラインドの付いた窓が割れ、雪が吹き込む。

同時に巨体の男性兵士が、床に崩れ落ちる。

ドアを守る女性兵士が至近距離から拳銃で撃たれて仰向けに倒れる。

大量の血を流して座り込んでいる会社の後輩、コリーンの唇が「たすけてください」と動く。

一連のイメージが、断片的にフラッシュバックする。


そして、冷たい目をした男が、自分に向かって拳銃を向け、つまらなそうに話しかける。

「臆病者として死ぬほうを選んだわけだ。まあそれも選択だな」

「次は別の選択肢があるといいな。GOOD BYE!」

「待ってくれ、私は……」

そうマリトが声を上げようとして、目が覚めた。

『また、あのときの夢か』マリトは思った。


炎上する飛行船からの脱出で終わった誘拐未遂事件から三日が経過した。

そのときの負傷のため、身動きすらできず、魔法学園の救護室のベッドに寝かされていた。

そして毎朝、この世界に召喚される前日の出来事の最後の記憶の断片が夢として現れ、うなされて目が覚めるのを繰り返していた。


目が覚めたと言っても目蓋は閉じられたままだ。

目蓋はラミーシャの制御下にある。

ゆっくりと目蓋が開かれて、視界に明るい天井が映る。

ラミーシャの心配そうな声が聞こえてきた。


「お父さん、大丈夫ですか?」

「とてもつらい気持ちが伝わってきます」

「この世界に来てから、毎朝つらそうにしていますよね」

「私でお役に立てるかわかりませんが、何が起きているのか、聞かせてもらえませんか?」


昼間は、何人もラミーシャの友人がお見舞いに来て、休んでいた間の出来事を話していく。

ほとんどが女子生徒のグループだが、男子生徒の姿も時折混ざっている。

ラミーシャの交友範囲は広く、学園ではかなりの人気者らしい。

マリトに友人たちの名前や特徴を教えてくれるのだが、とても覚えきれない。


身体は動かないのだが、口は動く。

ラミーシャは機嫌良く、ずっとしゃべっている。

ときどき笑うときに腹筋が震え、損傷した神経を刺激して激痛が走る。

それでも懲りずに、またしゃべって、笑って、痛みに顔をしかめる――それを繰り返している。

授業中で友達の来ない時間は、マリトにボルディアの生活や習慣などの話をしてくれた。

マリトも、自分の元の世界の仕組みや技術について語った。


これはマリトにはありがたかった。

新しい刺激があることで、過去のことを思い出さずに済むからだ。

だが、ひとりになる眠る前と目覚めのときには、どうしてもあの日の出来事に向かい合うことになる。

自分に何ができたのか、どう行動すべきだったのか。

『何もできない』――今も、絶望感と共に、その答えしか思い浮かばない。


起きたことを話したら、ラミーシャはどう思うだろうか。

軽蔑されるかもしれない。

尊敬を失うかもしれない。

賢者と呼ぶにふさわしくない。お父さんと呼びたくもない――そう思うかもしれない。

あるいは「間違って召喚されたのかもしれない」と知って、裏切られた気持ちになるかもしれない。


しかし、彼女には知る権利があるとマリトは思う。

マリトという異なる人格を、自分の中に受け入れてくれている彼女には、当然の権利だ。

それに、うれしさもつらさも、彼女とは感情の一部を共有している。

そのつらさの裏になにがあるのかを知ることは、彼女にとって不可欠なはずだ。


そして、マリト自身も、分不相応な尊敬の念を向けられることに、居心地の悪さを感じている。

ラミーシャには、自分の実像を見てほしい。

それが、彼女の気持ちに誠意を持って応えることになる――そんな思いもある。


まだ声を出せないマリトは、心の中で答えた。

「わかりました」

「この話を聞いたら、私のことを軽蔑するかも知れません」

「もしそう感じたら…正直に言ってください」


どこから話を始めようか。

二日前、あのメッセージを受け取ったところからだな――今思えば、あそこが終わりの始まりだった。

そしてマリトは、この世界に来る前に起きた出来事を語り始めた。


#STATUS: THE NEXT PHASE OF PROJECT IS STARTING.

PHASEⅠの前日譚、主人公のマリトが異世界で目覚める直前の二日間のお話です。舞台は現代日本です。

以前に一度公開したものを細部の伏線などの微調整を行って再公開するものです。改めてよろしくお願いいたします。


前回の公開ではPHASEⅠの途中から分岐しましたが、こちらのPROLOGUEを加えて、PHSEⅠの最後のEPILOGUEから自然につながるように構成し直しました。読みやすくなったと思います。

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