第八十一話 剣豪伝説 Ⅳ
俺の名前はホワイト。獣狩りだ。俺は今【剣豪】っつうスカした天才剣士と組んでいる。はっきり言って俺たちは最強だ。他の獣狩り連中とは文字通り住んでる世界が違う。なぜかっていうと、俺の相棒である【剣豪】は世界最強の剣士だ。そんな男を世界最高の知性を持ち賢者である俺がサポートする。完璧な布陣だ。そんな俺たちはついさっき七大迷宮の一つである女郎蜘蛛迷宮を踏破してきたところだ。その冒険について詳しくは俺の著書である「千年伝説」に記してある。しかし、重要なのはそこで俺と【剣豪】が結構な大怪我を負ってしまったということだ。ここの獣狩り連中はカスで下衆だ。そんで、俺たち....主に【剣豪】はかなり嫌われている。そんな大嫌いな相手が大怪我。どうなるかなんて火を見るより明らかだ。さすがの俺たちといえど、今町中の獣狩りに襲われちゃタダじゃ済まない。だから俺たちはすぐにでもこの街から逃げ出す必要がある。それを伝えたら【剣豪】の野郎は「武士の恥」が〜なんて宣っていたが、適当に納得させて今は俺たちが借りていた安宿で荷造りをしている。で、今俺が何をしているかというと、酒場にいる。何も酒を飲みにきたわけではない。俺がしにきたのは情報の撹乱だ。さっきも言った通り、獣狩りはカスの集まりだ。そんな連中に七大迷宮を踏破したことなんてバレた日には俺たちの平穏はなくなっちまう。だから、死んじまったレオンたちにそれを押し付けることにする。俺は今、酒場でレオン一行がこの異変を引き起こした怪物と相打ちになって死んでいるのを見た、と彼らの遺品片手に騒いでいる。死人に口なしってやつだ。こんだけ騒げば大丈夫だろう、ということで俺たちは乗合馬車へと乗って。ロウサイという地方を目指すことにする。なんでも人虎がその地方のどこかにいるそうで【剣豪】の野郎がぜひ戦いたいというもんだからそこを目指すことにする。
〜馬車の座席にて〜
「......ホワイト、猿は強かったな」
「ああ、とんでもなく強かった。ただ、俺たちは勝った。そんな俺らはもっと強い」
「.....お前には謙虚さというものが足りていないな」
「そんなもん糞食らえだな」
「......お前らしいな。それにしても、人虎..か。楽しみだな」
「ったく、お前のほうこそそればかりだな」
何が悪いと言わんばかりの目で俺を見て、ニヤリと笑う【剣豪】。その奥には決して満たされることのない闘争への渇望が息づいている。俺はその狂気に魅入られちまったんだ。