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第七十六話 虎の威を借る狐

俺たちは、ポイズンボアの群れを殲滅したそのあしでアントニオの屋敷へと向かう、その前に寄り道をすることにした。

「リイさん、ポイズンボアの死体から素材を剥ぎ取りましょう」


「承知しました。牙と鱗を可能な限り剥ぎ取りましょう。その部位であれば伝手があります」


「わかりました」

俺はナイフで、リイは自身の爪で素材を剥ぎ取っていく。一時間ほどで作業は終わり、俺たちは持参していた麻袋に素材を詰め、リイの案内で素材屋へと向かう。現代であればギルドと提携した素材屋があり、彼らがどんな部位であっても適正価格で買い取ってくれる。しかし、この時代においては素材の売買は個人の人脈に依存し、有用な部位しか買い取ってもらえない。リイのような獣人が生きづらいわけだ。そんなことを考えているとリイが立ち止まる。

「こちらです。ここの店主は私のような人間からも買取をしてくださいます」

その店の外観はいかにもな「盗品屋」であった。普通の店では御法度とされる盗品の売買。現代にもこう言った店は存在した。なるほど、盗品屋であればリイのような獣人の持ち込みにも喜んで応じるだろう。

「失礼。素材を持ってきましたので、買い取っていただけませんか?」


「リイか。何の素材だ」

店主であろう男はぶっきらぼうに言う。

「ポイズンボアの牙と鱗です」


「なるほどね、じゃあこれでどうだ?」

と言って彼が見積もりを差し出す。リイは諦念を含んだ目でそれを一瞥したあと、俺へとそれを見せる。その額は明らかにこちらの足元を見ている。俺はすかさず口を挟む。

「これは、いくら何でも足元を見過ぎではないでしょうか?」


「何だあ、リイ....てめえ、普通の人間様にシカトされるからって、こんな若造とつるんでるのかあ?情っけねえなあ、おい」

リイはそれを聞いてもなお、涼しい顔をしている。

「【主人公】さん、お気持ちはわかりますが、彼以外で私と取引をしくださる方はこの街にはいません。それにこの街の素材屋はあなたのような外部からの流れ者とも取引しないでしょう。ここはどうか穏便に済ましていただけませんか?」


「そういうこった。リイみてえな動物と取引してやんのは俺以外いねえってこったな」

しかし、この額で納得するわけにはいかない。この額では旅費を稼ぐためだけに何年もかける羽目になる。


「......ところで、アントニオという方をご存知ですか?」


「ああ、アントニオさんならよく知ってるよ。あの人に逆らっちゃあこの町で生きていけねえからな」


「俺たちが、そのアントニオさんからの依頼を受けてポイズンボアの群れを討伐し、その処理を任されたと言ったら?」

と、言いながら俺はアントニオと交わした血判状を見せる。店主はそれを訝しげに確認する。そして、彼のサインや血判などから本物らしいと判断すると急激に顔を青くする。

「俺とリイはあなた以外の素材屋を知りません。もしこの値段しか受け付けないと言うなら、アントニオさんに()()して、別の素材屋を紹介していただくだけです」


「わかった、わかったから勘弁してくれ」


「まさか、タダでこのような横暴を黙っていろと?」


「......わかった。ただし、アントニオさんに告げ口するのだけは本当に勘弁してくれ、俺、殺されちまうよ」

そう言いながら震えた手で彼が差し出す見積書には相場のおよそ四倍の額の見積もりが記されていた。これだけの額があれば数ヶ月は生活できるだろう。

「では、これにサインしている間に現金で支払う用意をしてください」

そうして、俺とリイは報酬を受け取り、今度こそアントニオの屋敷へと向かう。

「【主人公】さん、大変申し訳ありませんでした」

店を出るなりリイが謝罪してくる。

「リイさんに責任はありませんよ、彼に俺のハッタリが通じてよかったです」


「この街においてアントニオに逆らうことは死を意味しますので、彼もこちらが哀れに思ってしまうほどの狼狽ようでした」


「アントニオ、相当ヤバいんですね.....」


「ええ、彼に睨まれた者は三日も生きられないと言われておりますので」

そうして俺たちはアントニオの屋敷へと辿り着いた。


第三章に突入するにあたっていくつか変更点を設けました。

1、【主人公】の年齢について

当初は17歳で転移し、物語開始時点では20歳とのことでしたが、15歳で転移し現在は18歳とさせていただきます。

2、アーマードワイバーンについて

作中で2度登場したアーマードワイバーンですが、ゴルドら遭遇した個体は「異常個体」であり、【剣豪】とホワイトが戦った個体よりも強力です。


以上の2点は、それぞれ【主人公】が「若造」であることへの説得力を持たせ、実力のインフレを防止する目的によって変更しました。ご理解の程よろしくお願いいたします

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