第七十五話 虎に翼
以前としてボスの猛攻は続く。
「冬虫夏草.....」
そんな最中、ポツリとリイが呟く。
「それだ!!!リイさん、それですよ!!!」
「なるほど、虫に寄生する蕈である冬虫夏草のような獣こそがあの大蛇の不死性の正体であると」
「その可能性が高いです。リイさん、あの高さまで跳躍して攻撃できますか?」
「申し訳ありませんが、それは困難です」
薄々わかっていた。生物の最大の弱点である頭部。それを戦い慣れているであろうリイが見逃すはずがない。狙えるならば、最初から狙っていたはずだ。俺にだってそんな身体能力はない。それに、リイの攻撃力でなければ魔物に致命傷は与えられない。そして、おそらく、あの植物のような魔物自体に攻撃力はないだろう。そんな受動的な相手は俺の能力とは相性が悪い。
「あの大蛇が頭部を使った攻撃をしてくるまで待つという策も現実的ではありませんね」
「ええ、奴はさっきから尾や口から吐く毒液といった。頭部をこちらまで下げなくて済む攻撃しかしていませんからね」
「一度退いて、奇襲を狙いましょうか?」
「それではアントニオに失敗とみなされる可能性があります」
「.........」
「................、!」
その時俺の頭に電流が走った。
「リイさん、俺を踏み台にして跳躍してください」
「......なるほど。あなたの特異な魔術を用いて、私が本来は地面へと逃すはずの衝撃まで私自身の推進力にする、ということですね」
「話が早くて助かります」
「では、失礼して」
というや否や、リイは俺へと駆け寄り、俺の頭部を踏みつける。俺はその瞬間に反射を発動する。リイの肉体はぐんぐんと加速し、高度を上げていく。
「捉えました」
「破ァ!!!!!!」
リイの飛び蹴りが本体を捉える。その衝撃はボス蛇の頭部にまで伝播し、本体もろとも粉砕した。リイはそのまま、ストン、と地面に着地する。
「さすがです、リイさん!!」
「お褒めに預かり光栄です。しかし、この結果へ私の独力では至ることはできませんでした。私たち二人の功績です」
「ありがとうございます.......それにしても魔物に寄生して、敵を殺す魔物......」
「......冬虫夏草ならぬ闘虫夏草。とでも言いましょうか」
と言うとリイは少しイタズラな笑みをみせる。
「では、【主人公】さん。アントニオのところへ向かいましょう」
なんか暇だったのでかけました