第七十一話 フード
リイはローブについたフードを深く被ると、早速行こうと外へ出る。俺はその行動が理解できなかったがすぐに理解する羽目になる。リイの案内に従ってアントニオの屋敷へと向かう。彼の屋敷はこの街の中心部にある。そこへ向かうということは、人通りの多い場所を進むということに他ならない。人々はリイを見てヒソヒソと話す。中には暴言を吐いてくる者もいる。俺はその無神経な姿に不快感を隠すことができなかった。
「気にすることはありませんよ。私は自身が下賤な獣ではないということを知っています。その「事実」がある限り彼らの言葉や態度は私の心には届かない」
「.....強いですね」
「ありがとうございます」
そんなこんなで俺たちは街を歩く。300年前ということもあり、街の雰囲気もどことなく洗練されていない感じがする。また、治安の悪さというか荒々しさを感じる。
「着きました、。ここがアントニオの屋敷です」
そういうリイの示す方角には煉瓦造りの巨大な屋敷があった。その周りは鉄でできたフェンスが取り囲んでおり、入り口には門番らしき男がいる。
「では、お願いします」
「わかりました」
とは言ったもののどうするか、正直に目的を話しても彼らが俺たちを通すとは思えない。.....ならば
俺は門番の男に話しかける。
「こんにちわ、こちらアントニオ様のご自宅でしょうか?」
「......ああ、貴様のような人間が何の用だ?」
「俺はカシラから伝言を預かってきた者です。アントニオ様にお会いさせていただけますか?」
「ならんな、アントニオ様はお忙しいのだ。」
「アポはとってあります。それに、うちのカシラに逆らってこの街で平穏を享受できると思っているんですか?」
門番は散々悩んだ挙句、門を開く。
「........入れ」
「行きますよ、リイさん」
「承知しました」
俺たちは屋敷の中へと侵入した。
「賊の子分を演じるとは流石ですね。感服致しましたよ。」
「大したことはしてないですよ、ところでアントニオとはどんな人物なんですか?」
「彼はこの街屈指の資産家であり、通称「踏み倒しのアントニオ」と呼ばれています」
「いかにも強欲といった感じですね」
「ええ、彼に苦渋を飲まされた人間は多くいるでしょうね」
「そんな人が素直に返してくれるとは思えませんが......」
「心配には及びません」
そう言うリイの顔は自信に満ちていた。