第六十七話 伝説の記録者
私たち「黄金の矛」はついに、七大迷宮の踏破という人類未到の栄光を手にし最後にその証を得るべく小部屋へと進んでいく。
私たちの心は未だかつてないほどの高揚感に包まれていた。無理もない。私たちは数多いるSランク冒険者の群像から、剣豪伝説にも匹敵する英雄へとなる一歩を踏み出したのだ。そして、私はそれよりも、【主人公】さんとその瞬間に対等な仲間として立ち会えることの喜びを噛み締めていた。
私たちは小部屋へと入る。
私と【主人公】さんは手を繋いでいる。互いの指を絡める「恋人繋ぎ」というやつだ。私は愛しい彼の横顔を見つめる.......かっこいい。
そんな私を見て、彼ははにかんで笑う。私は彼と、仲間たちとの輝かしい栄光の未来を想像して顔が緩むのを感じる。
ゴルドさんがパーティを代表して奥に鎮座する魔石を手に取る。それは拳大ほどのサイズで葡萄を思わせる深い紫色をしていた。
「この魔石は、僕だけでは手に入れることができなかった。これは僕たち黄金の矛の伝説の1ページ目を記録する僕たちの伝説の記録だ!!!」
その言葉を聞き全員がそれを噛み締める。しかし、その刹那一瞬私たちの視界がブレる。その異変の正体をいち早く察知したのはメルトさんだ。
「魔術トラップよ!!!!」
私は腰の剣に手を当ててその時を待つ。しかし、何十秒経っても何も起こらない。
「皆、無事かい?」
「はい!」
「....ああ」
「ええ」
ゴルドさんの声に各々が反応を示した...はずだった。いくら待っても【主人公】さんの声がしない。
「主人公さん!!!!!!!!!」
姿が見えない.....どうして?どこへ行ってしまったの?
その日、【主人公】さんは消えた。最初からそこにいなかったかのように。
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