第六十二話 信じろ
俺は、落ち着いて全体を俯瞰する。
ゴルドたちと猿、アンジーと【剣豪】は未だ戦闘中だ。アンジーは任せろ、と言った。であれば、ゴルドたちの方へ加勢へ行くのが正解である、と考えた俺は息つく暇もなくゴルドたちのもとへ向かう。残りの魔力量から逆算して反射は残り四、五回だ。奴の復活の秘密や魔術のシステム、奥の手の有無などについて疑問は残るが、それは歩みを止める理由にはならない。
戦況を一言で表すなら拮抗であった。ゴルドたち三人の連携によって猿は苦しい戦いを強いられているようだ。猿も決死の抵抗を見せている。もはや奴の表情からは侮蔑や油断は消え去っていた。だが、ゴルドたちも相当消耗している。ゴルドの鎧や盾はここまでの激戦のアーカイブかのようにところどころ歪んでいる。ハンゾーも肩で息をしているのが見て取れる。特に、メルトはどこの誰が見ても限界だ。なぜ、あの状態で魔術を扱えているのかわからない。
「お待たせしました!」
「【主人公】.....!」
「ハンゾーさん.....」
「状況は見ての通りだ。敵味方疲弊しているが、互いに決定力にかける状況だ。それに、猿がなかなかにしぶとい。メルトはこれ以上戦えるとは思えん。」
「ジリ貧...ですね」
「ああ、【主人公】、反射はあとどれくらい使える?」
「五回が限界です」
「そうか.....」
「俺に策があります。協力をお願いできますか?」
「!!、わかった」
こうして戦況が動き出す。