第四十九話 剣豪伝説Ⅲ ー太陽の化身ー 後編④
【剣豪】は防戦一方であった。このままでは自分は負ける。それは当の【剣豪】自身が一番よくわかっていた。
「(このままでは私は死ぬだろう)」
そんな【剣豪】の脳裏にふと、自身が一度死んだ時の光景が明滅した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【剣豪】はとある御所の一室にいた。【剣豪】のいる御所は1万人を超える敵兵に取り囲まれていた。すでに、各所に火が放たれており敵兵が【剣豪】とその近臣達がいる部屋に侵入してくるのも時間の問題であろう。家来や兵隊達もほとんどが敵に慄いて逃げてしまった。ここにいるのは数名の侍とその主である【剣豪】のみである。
「上様、ここは我らに任せ、どうか落ち延びてくださいませ」
彼の側近である男が上申する。
「ならんな、ここで逃げれば私は天下の臆病者として嘲笑られるだろう。」
「私はここで奴らと戦い、真の武士として最期を飾る。私に付き従う者のみここに残れ。少しでも生きたいと思った者はここを去れ。」
その言葉を聞き動く者は一人としていない。彼らとてわかっていたのだ、今更逃げたとて助かる見込みは薄いと。そして何より、自らの主に忠誠を誓った侍としての誇りがそれを許さない。
【剣豪】はそんな近臣たちを見て少し悲しそうな、申し訳なさそうな顔をする。
「すまないな、皆」
部屋の少し先が騒がしい。どうやら終わりの時は近いようだ。
「それでは上様、お先に失礼つかまつる。」
近臣達は【剣豪】が自害する時間を稼ぐべく死地へと飛び込んでいく。
「.....私は自害などしないぞ。最期まで戦い抜いて武士として死んでみせる」
揺れる炎の熱気による蜃気楼のせいか、それとも彼の中にある形容することのできない程の憤怒のせいか、彼の顔はまさに鬼とも言える様相を呈していた。
歴史が好きな方でしたらここまでの話の内容でで【剣豪】の正体に勘づいたかもしれませんね
もし【剣豪】の正体がわかったという方がいらっしゃれば、ぜひ教えてください