第四十五話 剣豪伝説Ⅲ ー太陽の化身ー 中編①
『女郎蜘蛛迷宮』...この名の由来は蜘蛛の姿をした魔物がこの迷宮に多く棲息していることに由来している。また、この迷宮の主も巨大な蜘蛛の魔物であるとまことしやかに噂されていた。迷宮は古代遺跡のような構造をしており、下へ下へと伸びている。その最下層にいる魔物がその迷宮の主であり、それを殺すことで晴れて踏破となる。最下層への道のりには多くの魔物やトラップが待ち構えており難易度の高い迷宮になればなるほどそれらは凶悪なものへと変わっていく。そんな女郎蜘蛛迷宮の中層部分を進む二人の命知らずがいる。彼らもまた迷宮の養分となり、さらなる獲物を誘い出す「餌」になるのだろうか、それとも.......。
「なあ、【剣豪】.....にしても、あれだ....拍子抜けってやつかねえ.....ここの獣、強いは強いが、いくらなんでも少し弱くねえか?。それによお、レオンのやつら...お前も知ってるだろ?...あいつら、五日前にここに入ったきり出てこないらしいぜ」
「.....レオン....確か腕利きの三人組だったな」
「そう、そのレオンだよ、地上の獣共なんてものともしねえあいつらがこんな迷宮で消息不明だなんておかしいぞ」
「帰りたいのならば帰っても構わないぞ、私は一人でも行く」
「わかった、わかった...俺が悪かったから置いてかないでくれよ〜」
迷宮とは本来は常に死の危険が影をのぞかせる戦場である。そういった場所にあってこういった軽口を叩けると言うのは話の内容に反して彼らが一切の脅威を排除できるほどの強者であると言うことの証左である。
「っと....獣さんのお出ましだぜ【剣豪】!!」
そこに現れたのは重厚な鎧をその身に纏った二頭の翼竜.....アーマードワイバーンであった。
「....片方は任せたぞ...ホワイト」
「おうよ」
......刹那、【剣豪】腰に携えた刀を抜くとワイバーンの肩甲骨の部分から斜め下方向に斬撃を放った。所謂、袈裟斬りである。ワイバーンは【剣豪】による攻撃を認識する間も無く両断された。【剣豪】がホワイトの方に目をやるとそこには氷漬けになって動かなくなったワイバーンだったものが転がっていた。
「さすがだなホワイト」
「そりゃどーも。ま、翼竜なんていっても結局はただの爬虫類、冷気でイチコロってわけよ」
「.....そういうものなのか?」
「そういうもんさ」
「そんなことより早く行こうぜ、俺はとっととこんな気色悪い場所からおさらばしたいんだ」
「...そうだな」
かくして、二人の獣狩りは迷宮の最奥へと迫っていく。