第四十三話 暗黒への挑戦
お久しぶりです。今月はあと0〜2回更新できればと思います
部屋にいたときは夜空と見間違えたが、外に出ることでその異様さに気がついた。空には本来あるはずの星や月の輝きがなく、代わりに真っ赤な月のような何かとすべての光を吸い込むような黒があるだけだ。耳を澄ましてみると凶暴化した魔物の鳴き声も聞こえてくる。明らかな異常事態だ。図書館は温泉街と色町のちょうど中間地点にある。俺たちの宿からは徒歩で10分程度の距離だ。俺たちは武装をしたのち図書館への道を進んでいる。街の人々も不気味な状況に怯えて各地でパニックが発生しているが伝わってくる。街には衛兵が出張って事態の鎮圧を図っているが、それが逆に拍車をかけている。ギルドの方から、魔物が凶暴化していると騒ぐ声が聞こえる。この異様な状況のせいか、それともいつも冗談を言って場を和ませるメルトの不在のせいかパーティの中は嫌な沈黙で満ちている。そんなこんなで俺たちは図書館に到着した。
石造で二階建ての図書館の内部は吹き抜けになっていて年季の入った本棚が規則的に並んでいる。その中にはこれまた年季の入った無骨な装丁を施された本が所狭しと並んでいる。こんな異常事態に図書館に来る者なんてそうそういるはずもなくメルトはすぐに見つかった。俺たちに気づいたメルトが近づいてくる。
「わかったわ、この異常を引き起こした原因が」
開口一番にそう言ったメルトの手の中には一冊の本が抱えられている。
「メルト、なんだいその本は?というか、あの空の異常の理由がわかったのかい?」
「ええわかったわ、まずはこの本を見てちょうだい。この本の題は『千年伝説』あの『剣豪』と同じ時代を生きたと言われる賢者ホワイト著作の本で、各地の伝承や魔術的な事件について記した一種の歴史書よ。この本によると、およそ300年前、今回と同じような現象が観測された」
「.....「された」ということはこの空の異常は解消された...ということか?」
「ええ、この本によるとこの空の異常はこの街の郊外にある「女郎蜘蛛の迷宮」の最奥部にいる魔物が原因とされているわ、そして300年前に一度この魔物は討伐されたともあるわ」
「と、いうことはその迷宮にいる魔物をもう一度倒せばこの異常はなくなるということですか?」
「ええ、そういうことになるわ」
「で、でもそれっておかしくないですか?「女郎蜘蛛の迷宮」って七大迷宮の一つですよね?」
アンジーの疑問は全くその通りだ。七大迷宮とは未だ公式に踏破された記録がない高難易度な迷宮のことを指しどれもが発見から数百年以来踏破されてない世界屈指の危険地帯だ。そんな場所が踏破されたのならこの空の異常と合わせてもっと一般に知られていてもおかしくない。実際、ハンゾーもゴルドもアンジーも初めて聞いたような顔をしているし、俺もそうだ。それにこの話には矛盾、と言うか疑問点が多い。一度倒されたはずの魔物が復活していると言うことになるし、自身の棲家の外にまで影響を与える凶悪な魔物がいるということになる。
「アンジーの言う通り、この話には矛盾点も多くあるわ。でも、剣豪伝説にこんな一説があるわ」
そう言って彼女は『千年伝説』のとあるページを開いた。そこには「太陽の化身」という題と、ある男の為したまさに伝説とも言える偉業についての記述があった
今回各所に散りばめたネタに気づいて下さった方とは仲良くなれそうです