第三百九十三話 護衛騎士殺害事件
穏やかな昼下がり、その静寂は崩壊する。
四人で各々くつろいでいた俺たちのいる車両へ入ってくる男がいる。
「ヨシテルという男はどこだ!!!!」
俺がその言葉の意味を処理し、驚くよりも早く、その声に応えるように返答する義輝さんの声が聞こえる。
「......私だが」
「そうか、私の名はレイド、貴様に殺人の容疑がかかっている。ご同項願えるかね?」
その大声に誘われて、俺たちも談話室へと向かう。
「おいおい....騎士様よお、駅で刀に難癖つけたかと思ったら、今度はこいつの存在に難癖つけようってのかい?俺たちは平民だが、客だぜ?」
ホワイトさんが困惑しながらも反論する。
「そうですよ!それに、この人ならずっと俺たちといましたよ!!」
「おっしゃる通りです。どのような理屈で我々の仲間を拘束するのか、ご説明を頂いても?」
「........先ほど、閣下の護衛騎士であるベリアル様が自室にて殺害されているのが見つかった。.......死因は毒のついた刃物で切り付けられたことによる失血死もしくは中毒死、そして、この機関車内で刃物を携帯した怪しい男がいたと職員より聞いた。それが、このヨシテルという男だ。これがこの男を拘束する理由だ」
「ま、まってくださいよ!だから、義輝さんはずっと俺たちといたんですよ!!」
「.......残念だが、今の君たちがなんと言おうと、仲間を庇っているようにしか見えない」
「.......よい、私は潔白だ。いずれ証明される」
そうだけ言うと、義輝さんはおとなしく連行されてゆく。
「おいおい....どうなってやがる」
「.......これもまた、悪魔の差金のなのでしょうか」
すると、隣の個室からヴィレッジ男爵が出てくる。
「ざまあないな!!!無礼を働いた罰だ!!」
とだけ叫んで、また部屋へと戻ってゆく。
「んだと!!」
「落ち着いてください、ホワイトさん」
そうして、冷静さを取り戻したホワイトさんが口を開く。
「............おーけー、とりあえずはそのベリアルとやらの死体を見にいくぞ。どうにも嫌な予感がする」
「承知しました」
「はい!」
俺たちが荷物をまとめ車両を出ようとすると、隣の個室からエスコットとジャクソンが出てくる。
「これは大変な事態になったね、どうかな?僕達も同行させてもらえないかな?」
「......今はあんたらの道楽に付き合っている暇はねえんだ」
「まあ聞きたまえ、僕はかつて警察の真似事のようなことをしていたし、ジャクソン君は医者だ。役に立つよ」
ホワイトさんは難色を示すも、俺とリイはこのエスコットという男の推理力を目の当たりにしている。
「ホワイトさん、気持ちはわかりますけど、ここは手を借りましょう」
「私もそれがよろしいかと」
「......わかった、ただ、邪魔すんなよ」
「無論、そのようなことはしないさ」
 




