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そこそこの中堅冒険者(自認)の俺がパーティーを追放されて真の実力を知り逆襲の旅へ!?〜今度こそは普通の一般市民になろう!!!(強い意志)〜  作者: 酒粕
第四章 南海探究編

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第三百八十三話 ではまたお元気で

そうして今俺たちがいるのは駅の改札前だ。


そこには俺たちを見送るべく、セレス夫妻とベルボーイがいる。セレスの両親は今回席を譲ってくれたルクソンという人にお礼とお詫びに向かっているそうで不在だ。


あと一時間もすれば機関車は発車することとなる、客以外は立ち入りできないホームではなく、改札前にて別れの挨拶を交わすこととなる。

「はは、改札で別れの挨拶か......大学に受かって上京した日を思い出すぜ....お袋なんてワンワン泣いてやがってよ....大袈裟なやつだった.....結局それが今生の別れになったわけだが」

ホワイトさんはそう言いつつもどこか遠くを見ている。


「........母とはそういうものだ」

そうぶっきらぼうに言うのは義輝さんだ。


まずは、ベルボーイがリイへと話しかける。

「リイ、捜査への協力感謝する」

そう言ってリイへ敬礼をする。

「いえ、私の方こそ貴重な体験をさせていただきました」


「そういってくれるとありがたい....あとはこれを」

そう言ってベルボーイはリイへとなにか風呂敷で包まれたものを手渡す。

「これは.....?」


「この前話したみかんだよ、ちょうど今朝取れたんだ......今年一発目の収穫さ。お仲間の魔術で冷やしてから食うといい」


「これは......ありがとうございます」

リイの感謝の言葉を聞くと、ベルボーイは仕事があると言って帰ってしまう。.....来た時よりも、帽子を深く被っていたのは気のせいではないだろう。


次に、セレスが俺へと話しかける。

「......先生、本当にありがとうございました!!私、幸せになります!!」


「......こっちこそ、あの『おねだり』がなかったら、長いこと足止めを喰らうハメになってた。ありがとう」


すると、今度はアレスが俺の手を握って礼を言ってくる

「【主人公】さん、本当にありがとうございました........それにこれまでの無礼も.....」


「ははは、もうその話は終わりにしましょう。......そうですね、今後セレスを泣かせないと誓うなら、許してあげます」


「ええ、誓います。アレス・ヤードマンはセレスの夫として、彼女の顔から笑顔を絶やさないと、ここに誓います」


そう言って、アレスは俺へと跪く。どうやら、これが貴族の宣誓の儀礼なのだと、のちに知った。

「もう....!!アレスったら!!」

セレスもまた満更ではなさそうだ。


すると、セレスが何かを思い出したように口を開く。

「先生!!!それで.....命名の件は考えてくださいましたか?」


そうだ。そんなことを約束をした。...........結局、あれから頭を捻りに捻って、結論を出した。

「.........ああ、もちろん考えてきたよ....『レイ』というのはどうかな」


「レイ........レイ!!良い響きね!!」

セレスはとりあえず名前の響きは気に入ってくれたようだ。


「レイ・アンブレラ....確かに良い響きだ、ところでどう言った由来が?」

そう言ってアレスが尋ねてくる。


「ああ....それは......」

俺は「ネトゲのキャラ名です」と言いかけやめる。俺にとってこの名前はそう単純に言い表せるものではないし、そもそもこの世界の人間に伝わらない。


「言葉自体は『一筋の光』って意味があって、あとは......俺が憧れた英雄の名前なんだ。......誰よりも強くて、慕われていて....何者でもなかった俺も、レイのように強くありたい、レイのような人生を歩みたい....そう願った末にここにいるんだ」


「先生が憧れる英雄だなんて.....そんな名前をいただけるなんて光栄だわ!!ねえ、アレス...あなたもそう思うでしょ?」


「ええ、きっと【主人公】さんのように勇敢で、心優しい人間へと育て上げて見せます!!」


「それに『一筋の光』ですって!!なんて素敵なの!!!」


「まさに、我々にとっての貴方だ!!」

.......流石にそんなに褒められるとちょっと気まずくなる。....ともかく、気に入ってもらえたようで何よりだ。


かつて、俺が憧れた電子の世界。たかだか27インチの箱に閉じ込められた小さな英雄だ。しかし、当時の俺はそれに救われ、生かされた。あれから三年が経った今でも、俺の根底にはレイのような英雄になりたいと言う願望が渦巻いている。


だが、それも今日で終わりだ。


もう、俺にレイは必要ない。


今度は、これから生まれる命を守ってやってくれ。





そうして、別れの時は訪れる。


改札へと入っていく、俺たちの背中を二人が見送る。

「先生!!!お元気で!!!」


「ぜひとも、また、アンブレラへお立ち寄りください!!!!」



二人の声は俺たちが見えなくなっても、聞こえてくる。


こんな切なくて、でも満たされた気持ち......モニターを眺めているだけじゃ、きっと出会えなかっただろうな。

これにて毒牙編は解決です。

第4章も後半戦です。

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