第三百七十九話 呼び鈴が鳴る
彼女の絶叫ののち、しばしの沈黙が場を支配します。
そんな沈黙を破るのは、ベルボーイ殿です。
「バカ野郎ぉ.......!このクソ馬鹿野郎がっ!!!!!」
「親父さんが、身を削ってまで生かした命を....親父さんの命そのものとも言える連中を、なんでそんな風に、ゴミみてえに、ぶっ殺せるんだ!!!......たしかに、やつらはお前の親父さんの善意に漬け込んだクソ野郎かもしれねえ、でもよ.....そんな連中でも、親父さんは自分の苦痛を顧みずに救ったんだ。......おまえが、その連中を皆殺しにしたらよお.....ラオフェンちゃんはなんのために苦しんだんだ?.....親父さんが、何を救ったことになるんだ?なあ、親父さんは.....なんのために戦ったんだ?................親父さんの善意を、一番踏み躙ってるのはラオフェンちゃんってことになっちまうよ.....」
そう言って、ラオフェンさんに寄り添うベルボーイ殿は大粒の涙を流していました。
「わ、私.....どうしよう.....お父さん、ごめんなさい」
ラオフェンさんもまた、それにハッとしたかと思うと、静かに涙を流し、彼の腕の中にいます。
そうして、応援として現れた憲兵をベルボーイ殿はなんと、本部へ帰してしまいます。
「.......リイ、この件が町の住民に知られちまったらよ....親父さんの店は潰れちまう.....だから、俺がこの子を領主様の館へ連れていく。リイは悪いが、親父さんを連れてきてくんねえか?.....店の二階に住んでるはずだ」
「承知しました」
「ラオフェンちゃん、行こう」
彼女は黙ったまま、動かない。その表情もまた死体のそれと大差ない。
「..........」
「親父さんの借金のことなら俺に任せろ.......いや、違うな....こんな偉そうなこと言えねえよな....気づいてやれなくてすまなかった......あんたの大好きな店も、親父さんも、俺が守ってみせる.....だから、また....サービスと見せかけて金をとってる胡麻団子を俺のテーブルへ運んでくれよ.....足の悪い親父さんだけじゃあ.....大変だろ?」
「.......はい、またいつか」
「ああ、待ってるぜ」
そう言って、私たちは一度別れます。
現実は、物語とは違い「勧善懲悪」とはいかぬようです。
しかし、それでも...我々はそれぞれが幸福と信じる結末を追い求め、必死にあがかなければならないのです。
ついに5ページ目!!!!いつも読んでくれてありがとう!!




