第三百七十七話 雨下の暗殺者 Ⅱ
互いが互いを探知できないまま、決戦の火蓋が切って落とされます。
そうなれば、自然と戦いは至近距離での殴り合いへと姿を変えます。
もはや、彼女の持つ小刀程度では私の体は傷つかない。
しかし、私の拳は着実に彼女の手足を砕いてゆく。
「ぐっ....!!」
私が下段に放った蹴りが彼女の右足をとらえます。
彼女の足の骨を粉砕します。これが決定打となりました
すると、彼女は水飛沫を上げながら、地面の水溜まりへと倒れ伏します。
「もう、それでは戦えますまい.....無駄な抵抗はおやめになった方がよろしい」
「ふざけるな!!!私の理想が!!!!このように踏み躙られて良いはずがない!!!!」
「......それは違うな」
そう言って、路地裏へ現れるのはベルボーイ殿です。手には行燈を持ち、息も絶え絶えといった様子です。
「理想なんて、たいそうなことを言っちゃあいるが....あんたは身勝手に人を殺した殺人者だ。.......ソーや海賊どもと本質的には変わりゃしねえ....にしても、ラオフェンちゃんが犯人だったとはな.....どうりで作戦が筒抜けなわけだ....これからは会議室以外じゃあ、仕事の話はできねえな.....リイもご苦労だ」
「.......お役に立てたようで何よりです」
「ラオフェンちゃん、話の続きだが....こんな光景、あんたの親父さんがみたら泣いちまうぜ...金のねえ娼婦やホームレスに無料で炊き出しを行うような、親父さんが、今のあんたをみたらどう思うかね?」
「だから.....だから!!!!この街を浄化しようと考えたんだ!!!!!!」
そう言って、彼女は絶叫にも近い形でベルボーイ殿へ怒鳴りかかります。
「殊能将之」先生の「ハサミ男」を参考にしました。




