第三百七十二話 雨夜の月
私たちは、一通りの見回りを終え、憲兵隊本部へと戻ります。
「....どうなってやがる。警備も通常通りに戻したってのになんで、被害者が出ねえんだ」
「『ドア男』の気まぐれでは?」
「いや、あり得ねえこの三年間、危険を察知した時以外は必ず犯行は行われた」
「では、この作戦が気取られたのでしょうか?」
「あり得ねえ、この作戦を知っているのは憲兵とあんたくらいで.......憲兵!!!、いや、、まさか....そういうことか.....」
そう言ってベルボーイ殿はなにやらぶつぶつと呟き始めます。
「.....考えたくはねえが、こうなった以上、憲兵の中に裏切りモンがいる可能性がある」
「.....では、作戦は中止でしょうか?」
「ああ、中止だ」
「承知しました」
「厳密にいうならば、中止だってことにする」
「俺は今から、他の憲兵どもに作戦は中止にする旨を伝えてくる。んで、街の住人にも、改めてソーが犯人だったということを宣言し、捜査の終了を宣言してくる.......そうして、今夜...再チャレンジだ」
確かに一定の効果はあるかもしれません....しかし、
「しかし、あまりにも危険がすぎます。これでは、あなたの立場が危ない」
「これ以上、被害者を出すわけにはいかない....それに、リイだって何ヶ月もこの事件に関わるわけにはいかない。そうだろ?」
「........」
彼のおっしゃる通りです。ブルーバードからの手紙が届き次第、私たちはこの街を去ります。私たちの旅の目的はあくまで、悪魔の追跡です。
「リイ、俺は奴を捕まえるには今しかないと考えている。........あんたみてえな親切な獣人が次いつこの街に来るかわからねえ.......この奇跡を無駄にしたらまた奴の好きにさせちまうことになる。次に狙われるのが、ルールを守らねえ娼婦とは限らねえ、街のパン屋のガキかもしれねえ.....だから、俺は全てを捧げて、奴を捉えるんだ」
かつて故郷で見た、己の出世のためにのみ働く官吏とは似ても似つかない。これがまさに巧言令色.......役人の理想です。
かつての私も、彼のように高潔であったでしょうか.......
「..............であれば、助力いたします」
「ああ、助かるぜ」
ポケモンに夢中で忘れてました。ごめんなさい




