第三百六十話 デジャブ
俺は屋敷からの帰り道、今後の方針について考えてみる。
セレスはアレスが好き。アレスもセレスが好き(多分)....となると、あとはどっちかが告白すれば解決するわけだが.....ひとつだけわからないことがある。あんなにわかりやすいセレスの恋心にアレスが気が付かないなんてことあるのだろうか、いや....さすがにないだろ....いや、まあ、俺も人のことは言えないが....セレスの裏表のなさはもう、なんか一つの才能だ。.......アレスのやつ、少なくとも両思いに近い関係であるということは気が付いているんじゃないのか......。
そうなると、彼を踏みとどまらせる要素はなんだ?年齢か...?いや、俺もこの件に関わり始めてから少しだけ貴族の法律を勉強したが、別段セレスの年齢が婚約に早いということはないだろう....妊娠には少々早いかもしれないが....貴族の文化圏で生育したアレスがそのようなズレた感覚を持っているとは思えない。....家柄、もそこまで問題はない。セレスに婚約者がいる可能性だってない。ならば、俺との婚約なんてものが歓迎されるわけではない。
そこで、俺は俺自身のことを思い出す。
.......あいつ、自分はセレスに相応しくないとか思ってんじゃねえだろうな。
やっぱり、もう一回アレスに探りを入れる必要がありそうだ.....
そうして、俺はアレスの自宅方向へ向かう。そろそろ仕事が終わるはずだと、セレスが言っていた。
俺は雑貨屋でいくつか小道具を購入し、アレスとの遭遇に備える。