第三百五十五話 抗毒血清
「よお、小僧....あんまし帰りが遅いもんで様子を見に行こうって【剣豪】がうるさくてよお.....」
「.....お前が発案者であろう、私は必要ないと言ったはずだ、ただ......お前が正しかったようだがな」
「ああ、小僧....あれだ、お前さんは確かに強えが、油断禁物ってことだ.....猿も木から落ちるなんて言うしよ」
「も、うしわけない...です」
「.....説教の前に解毒してやんねえとな、おい、【剣豪】右の二の腕のあたりを布かなんかで縛れ」
「わかった」
そうして義輝さんは迷わず自分の着物をちぎると腕を縛ってくれる。
「あ、りが、とうござ、います」
「......傷の具合を見るに、毒が全身に回ってるわけじゃなさそうだな、このヘビ...ストロベリーヴァイパーか.....たしか、血清がこの辺に.....あったあった」
そうしてかなり太い、お世辞にも注射針とは言えないような針で血清を注射される。
「......!!!」
「悪いな、この世界の鍛造技術じゃあ....この太さが限界だ。授業料だと思って我慢しろ」
そうして、ホワイトさんが風魔術かなんかで血を吸い出し、水魔術で傷口を洗浄してもらう。
毒が抜け、体の自由を取り戻す。
「...ありがとうございます。俺、死ぬとこでした」
「ああ、礼には及ばねえよ......俺たちの旅はこういうモンだって、改めて認識しておけよ」
「はい!!」
「.........お前は線が細すぎる、この程度の蛇の牙....己の皮膚で止めてみせよ」
「それはてめえが異常なだけだ」
そうして、俺たちはソーを見る。
「......こりゃ良いサンプルだ。死んじまってるが、こんな状態のいい標本はなかなかお目にかかれねえ!!!しかも貴重なギフト保有者だ!!!こりゃ、夜通し解剖だな!!お前らも手伝えよ!!」
「......わかりました」
「.........私もか?」
「おうよ!!」
やけにテンションの高いホワイトさんの指示でソーの彫像を運ぶ。人体解剖なんてことはしたくはないが.....ギフトについて知ると言うことは悪魔へと近づくということだ。まあ、死んでるし.....。それに俺は助けられた手前何も言えない。
そうして、憲兵が来る前に死体を運ぶ。当然、ホワイトさんは持たない。俺と義輝さん二人で担ぐ。
その道中で俺は些細な疑問をホワイトさんへぶつける。
「このヘビ......ここら辺に生息してる種類だって話ですけど.....よく血清なんて持ってましたね」
「ああ、趣味なんだよ....新しい土地に行ったらその土地の原生種を解剖して、毒持ちのヤツがいたらそいつの抗毒血清を作るのがな」
「.......気味の悪い男だ」
「ははは.......」
「でもよお、あれだな....小僧は俺の趣味に助けられたわけだからな」
「ええ、マジで感謝してます」
「なら、あれだ...お前の部屋の出禁は取り消せよ....なあ?命の恩人を出禁なんておかしい話だよな?」
「.....まじか、いや.......わかりました」
こいつ.......いや、今回に関しては何も言うまい。
「義輝さんも...着物、すいません.....弁償するんで」
「礼はよい......いや」
そうして、義輝さんは意地の悪い笑みを浮かべる。
「ホワイトを金輪際お前の部屋に入れるな」
「ふっ....わかりました!!」
「おいおい!!そりゃねえだろ!!」
そうして、宿で追加の部屋を借りそこへソーの死体を置く。
らきすたを見始めました。