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第三百四十九話 婿殿

セレスの部屋を出た俺は、そのまま騎士の修練場へと向かう。

そこは大きめの体育館くらいはありそうな場所で、たくさんの騎士たちが鍛錬に励んでいる。かなりの規模だ。....そういや、セレスの家名を聞いていなたかったけど、結構大きな家なのだろうか......辺境伯クラスになってくると、婚姻を断るというのも危険な気がしてきた.....まあ、大丈夫か。

そうして、その中にいる一際大柄な初老の男へと話しかける。

「.....こんにちは、騎士団長のゴームズさんですよね?」


「ああ、セレス様から話は聞いているよ......婿殿」


「も、もしかして、その話.....結構広まってる感じですか?」


「ああ、もうこの街の人間ならば皆知っているさ....近々街を上げての歓迎会も計画している」


......そんな誰も幸せにならない歓迎会なんかしないでくれ!!俺は震える声でなんとか言葉を紡ぐ。

「...........まじすか」


「ああ、乗客の命を救った大英雄とセレス様の熱愛ともなれば、話はみるみるうちに広まるだろうよ!!!!」


「は、はは.....」


「それで、アレス(息子)のことでなにが知りたいのかい?」


.....ん?今こいつなんて言った?

「え?....息、子?」


「ああ、聞いてなかったのかい?俺はゴームズ・ヤードマン....アレスの父親だ!」

.....ああ、なるほどね。


「それで、アレスの何が知りたいんだい?婿殿....」


「....俺が聞きたいのはアレスさんが6年前に負った怪我の件なんですけど.......あと、その『婿殿』っていうのやめてください、俺には【主人公】っていう名前がありますから」


「【主人公】くん、なるほど....アレスの怪我の話が聞きたいのか.....なぜ?」


「それは....えっと、セレス様からのご命令で聞いてくるようにと」


「へえ....まあいっか..あんたは『家具職人』って知ってるかい?」


「え?」


「その様子じゃあ知らないか...まあ、外から来た人なんだから当然か。ソー....またの名を『家具職人』、今から10年ほど前に突然この街に現れ、そこから4年間にわたって街の住人を殺して、それを材料に自分の家を作ろうとした狂人さ...そして、そいつが捕縛されたのが6年前だ」


アレスが怪我を負ったのも6年前、『家具職人』逮捕も6年前.......。俺は話の続きを促す

「それがアレスさんの件と何の関係が?」


「ああ、その捜査にあたっていたのが、この街の憲兵であるベルボーイと俺、そして成人したばかりのアレスだ。まあ、捜査の詳細なんかは省くが....あんたの言う怪我ってのはその時にソーに腹を刺された時の傷だろうな.....」


「なるほど.....その怪我について、他に何か知っていることは?」


「さあな....知らねえ...が、あいつがそん時の包帯を後生大事にとってあるってことくらいだな」


思ったほどの収穫はなかった....怪我の正体について知れたのはいいのだが........どうするか、一旦セレスのところに報告に行き、方針を練り直すにしても.....絶賛作戦中だろうし......その『家具職人』とやらに会ってみるか

「....ありがとうございます、それで、その『家具職人』に会うにはどうしたら?」


「街の外れにある鯉の養殖場に行くといい、あそこで犯罪者共は刑務作業に従事している。俺がそこの看守共に連絡しておく」


「ご丁寧にありがとうございます」

連絡を待つ間、俺はゴームズに頼まれて、若い騎士たちにこれまでの冒険譚を聞かせることになった。

まあ、急ぐ用事もないし、快く引き受けたわけだが....若手の成人したばかりの騎士たちは俺たちが戦場で海賊撃退に一役買ったという話を先輩から聞き、俺みたいなヒョロイ小僧の話を熱心に聞いて、感激してくれた。......悪くないな。


そうして、俺は礼を言って修練場を後にする。


そうして、屋敷を出ようとする俺の目の前に立ちはだかる男がいた。


アレスである。



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