第三百四十四話 正義の鐘が響く
私は明朝、以前と同じ喧騒で目を覚まします。
【主人公】さんはアレスという騎士の方のお宅へ泊まると、連絡が来ておりましたが.....なにか考えあってのことなのでしょう。私はと言えば、もう一度眠る気にもなれず、懲りずに再度外へ繰り出します。
かつて、ジョスイの街で購入した外套を羽織って。この外套もこれまでの戦闘で破れ、汚れてしまいましたが....処分する気にはなれず、洗濯や補修を行い、今日まで身につけております。しかし、彼の前では要らぬ心配を抱かせてしまうため、控えてはいますが....
そうして、喧騒の中心を訪れます。そこには控えめな人だかりができており、中心には着飾った女性の死体があります。鎖骨から腹にかけて切り裂かれ、仏教寺院の扉のようになっています。
そこには、先日お会いしたベルボーイ殿もいらっしゃいます。なにやら、悩んでいらっしゃいますが....
「にしても凶器はどこかねえ....この前の事件は被害者が持ってた護身用ナイフだったが......」
.....殺人の凶器の行方を探していらっしゃるのでしょうか、お節介とはわかっていながらも私は彼らに話しかけます。獣人を差別しているとは言っても、話せばわかるかもしれない。以前の私では考えもしなかったことです。【主人公】さんも自身の変化を嘆いておられましたが........私も変わったということでしょうか。
「失礼を承知で申し上げますが.......凶器でしたら、そちらの側溝の中に御座います」
「あ、あんたは....この前の!!....いや、先に凶器だ。おい!何人か呼んで、ドブさらいをさせろ!!」
そうして、無事に殺人に使われた剣が発見されます。
「お前...なんでわかった?もしかして犯人...いや、ならわざわざ言わねえか....」
「私は獣人ですので、鼻が効くのです」
「へえ....」
どうやら、半信半疑といった様子ですね.....
「貴方の今日の朝食は......砂糖をまぶしたパン、合っていますか?」
「....!!!すげえじゃねえか、正解だ!!!!」
「では、私はこれで.......」
そう言って私は踵を返します。彼らへの良い土産話になるでしょう。
しかし、ベルボーイ殿は私を引き留めます。
「待て」
「どうなさいましたか?」
「よかったら...この事件の捜査を手伝わないか?」
「......どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味だ。お前を俺が雇ったってことにして、この捜査を手伝ってくれないか?....金だって少しは払うしよ」
「.......そこまでされる必要はあるのでしょうか?」
「当たり前さ、自分の街を踏み荒らされて、気分がいいわけないだろ」
「......なるほど、一つお伺いしたいのですが...仮に私が犯人の捕縛に協力したとして、この地の領主様から直接褒美を賜ることは可能でしょうか?」
「.....ああ!!!もちろん、アンブレラ憲兵隊総司令官、ベルボーイ・ラウンジの名において保証する」
「では、微力ですがお力添えいたします」
これで、私たちの旅程を少しでも早めることができれば、といった具合でしょうか。
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