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第三百三十五話 ハイハイチャイナ

歩くこと数分、俺はリイの姿を見つける。どうやら繁華街で調査をするようだ。

「おーい!リイさーん!!」

そう呼びかける頃には、リイは俺に気がついて歩み寄ってきていた。

「どうなさいましたか?【主人公】さん」


「えっ!?......俺が声出す前に気が付いてましたよね?」


「ええ、足音で察知しておりました」


「あ、足音って....」


「足音にはそれぞれのクセというものがあるのです。それを聞き分けることなど造作もございません」


「なるほど...すごいですね!!」


「大したことではございませんよ、ところで...私に何かご用事でしょうか?」


「ええ....ここじゃあれなんで...どっかで飯でも食いながら....俺が奢るんで!!」


「承知しました....ご相伴にあずかるといたしましょうか」


そうして俺たちは飲食店を物色する。そうして目に止まった....いや、鼻に止まったのは洋風な街並みにはそぐわない。和風...ではなく中華風のお店だ。真っ赤な外装に緑色の龍の模型が飾られている。

「これは...点心でしょうか?」


「点心ってなんですか?」


「わたしの故郷の軽食を提供する店のことです....ご馳走になる身で恐縮ですが...こちらのお店に致しませんか?」


「わかりました!!」


そうして入店する。そこには中華映画とかでよく見る丸いテーブルがいくつかあり、烈海王みたいな髪型をした小太りのおっさんと真っ赤なチャイナ服を着た姉ちゃんがいる。髪の毛も(二次創作で)よく見るお団子でかなりスタイルがいい。.....俺より身長あるんじゃないか?しかも綺麗だ....いや違う!これに関しては十割俺が悪いから!!許してください!!!アンジーィィィ!!


「いらっしゃいヨ!!」



「ロウサイ仕込みの本格点心アル!!!」

チャイナ服のお姉さんの元気な声に反応して、店主が声を上げる。


「こちらメニューネ!!」

お姉さんが接客担当なのだろうか、かなり愛想がいい。

にしても...けしからn...露出が多い服だ。店主の言葉を信じるならば、ロウサイがこの世界の中華の本場だそうだが、こんな格好してる女の人なんていた....か?

「リイさん....こんな服、ロウサイにありましたっけ?」


「いえ...三年ほどロウサイにおりましたが...このような服装一度たりともみたことがございません」


そんな俺たちの会話を聞いたのか、お姉さんが会話に入ってくる。

「お客サン!!ロウサイから来たアルか!!」


「え、ええ...はい」


「じゃあ...これはサービスだヨ」

お姉さんの後ろから現れた店主さんが胡麻団子を俺たちの前へ置く。


「チョっと!お父さん...嘘ダメヨ!これ、みんなに出してるヨ!!」


「ははは...愉快な方ですね」


「そうですね...リイさん」

そうして俺たちはお姉さんが激推ししていた小籠包を注文し、とうとう本題を切り出す。


「....なるほど、貴族のご令嬢に求婚をされてしまったと」


「ええ...どうしましょう、断ったら泣かせちゃって....お茶会のお誘いも断れなくて」


「.....貴方は少々お優しすぎますな、かつてコゼット様達との件の際も申し上げましたが.......貴方ご自身が今最も為したいことは何ですか?」


「それは....未来に帰って、アンジー達と...」


「であれば、そのようにセレスという方に伝えるのです」


「やっぱそうですよね....」


「『艱難汝を玉にす』とも申します。セレスという方にとっても貴方との失恋が、かえって彼女自身を強くするという結末を迎えるやもしれません.....苦痛が全て悪ということでもございますまい」


「なるほど!!『艱難汝を玉にす』....まさに俺たちみたいないい言葉ですね!!」


「お役に立てたようで何よりです」


「ハーい!小籠包二人前!お待たせヨ!!」


そうして、到着した小籠包へ齧り付く。

「うわっ!アッツ!!」

中から肉汁が溢れ出し、五感全てが幸せだ。.....いや、聴覚は関係ないから四感か...


「故郷の味を思い出します....」


「そうヨ!そうヨ!うちの小籠包は豚をまるまる一匹捌いてつくてるヨ!!」

お姉さんはそう言いながら、めっちゃでかい出刃包丁を見せてくれる。

「すごいですね!!」


「本格的ですな」

その後は店主親子も交えて、ロウサイにいた頃の思い出話をしながら、食事をする。

そんなとき、お姉さんが質問を投げかけてくる。

「お二人はソラリス大陸から渡ってこられたって、ことですけど....お仕事は何を?....失礼ですが、商人や貴族の方には見えなくて....」


「獣狩りですよ...仲間がエスポワルの闘技大会で優勝して.....旅行のつもりで...」


「なるほど!では、お二人はお強いんですね!!」


「ま、まあ...そこらのチンピラよりかは.......」



「強いと言えば、この町で娼婦を狙って...」

お姉さんが何かを言いかける、

そこで不穏な雰囲気が場に満ちる。


「やめんか!お食事中だぞ!!」

それを静止するように声を出す店主。


場に嫌な空気が充満する。

「す、すいません....お客様、今の話は忘れてください!!」


「は、はい!」

そうして気まずい雰囲気が場を支配する。そんな中、口を開くのリイだ。

「....先ほどのお話から推察いたしますに..............そちらのお話の仕方が素なのでしょうか?」


俺はリイの言葉で、ほのかに感じていた違和感の正体に気がつく。あのエセ中国人みたいな喋り方はキャラ付けだったのか....


「そんなことありません!!.....アル」


「たしかに可愛いですもんね!」


「このドレスと合わせて、お客様に好評なんです」

そう言って笑う店主の姿はどこの世界も変わらない、店の経営に苦心する経営者のものであった。






そうして、自分の分は自分で払うというリイを無理やり押し切って会計をし、店を出る。


「いーあーるふぁんくらぶ」を聞くと、中学生の頃を思いだして、ちょっと切なくなります。

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