第三百二十七話 ジョーカーのカード
そうして、俺たちは談笑を続ける。
そこでふと、寝床の話になる。
俺たちの部屋は、二段ベッドが一つとシングルベッドが二つという構成であり、一人だけハズレのベッドで眠るハメになる人がいる。そこで誰が眠るかという話だ。
「.....俺は勘弁願いたいね、いつ酔うかわからねえ以上、寝苦しい場所はごめんだ」
「.....俺もできればシングルベッドか上で寝たいですね」
「私は下段でも構いませんが」
「まあ待て、俺に考えがある」
そこで、ふとホワイトさんが懐を弄り出す。
「どうしたんですか?」
「まあ、見てろって.....」
そうして、ホワイトさんはジャーンという効果音がつきそうな動作で懐から紙束のようなものをを取り出す。
「旅行の客室といったらこれだろ!!」
「それは.....?」
リイが興味深そうに覗き込む。
「トランプさ!!」
「うわ....懐かしい!!」
「だろ?港の売店で見つけたんだがよお...やっぱこれだよな?いっちょ、ゲームといこうぜ?」
「いいですね!!」
「じゃあ.....ババ抜きでもするか!!」
「ババ抜き?」
「ああ.....。最初にカードを配って、同じ数字のカードをペアにして捨て、残った手札から順番に隣の奴のカードを引く、最後にこのババが手元に残ったやつの負けっつうゲームさ」
「ほう.....心を使う斬り合いのようなものか」
「物騒なやつだな....」
そうして、ゲームが始まる。
俺たち四人は順調に手札を減らしていく。俺を除いた三人はポーカーフェイスを保っており、なかなか隙を見せない。かくいう俺も、猿、アレン、金剛虎、ベガ.......これまで潜った修羅場の数だけ強くなっている。
「では、お先に失礼します」
リイが真っ先に上がる。
「おっ!....さっすがリイの旦那!!」
「......私も上がりだ」
「義輝さん....眉ひとつ動かさないんですもん、強すぎですよ!!」
残るは俺とホワイトさんの一騎打ちだ。
俺の手札は残り一枚、ホワイトさんは二枚。そして、現在俺の手番。ここで引ければ俺の勝ちだ。
「小僧...こっちが正解だ」
そうして、ホワイトさんは右手に持つカードを俺へと近づける。
俺は、ホワイトさんの顔を窺う。彼の顔に浮かぶのはいつものニヤけ面。食えない人だ.....
「(ブラフか?.....いや、その裏を掻いてこっちが本当に正解という可能性も.....しかし、ホワイトさんがこんなわかりやすいブラフを貼るか?......ここは!!!)」
そうして、俺はホワイトさんの言葉を無視して、カードを引くことにする。
「こっちだ!!!」
が、俺の手元にあるのはこちらを嘲笑うかのような笑みを浮かべたジョーカー.....
「だから、言ったろ?こっちが正解だってよ」
そうして、次のホワイトさんの手番、俺はあっさり正解のカードを引かれ敗北する。
「よっしゃあ!!上がり!!」
「うわー....悔しいー!!」
「見事な心理戦でしたな...」
「悪くない....他の遊戯もあるのか?」
「ああ!!インディアンポーカーにブラックジャック.....他にも.......」