第三百二十三話 THE GLORY
そうして、俺はミアと共にウォレスと皆がいる部屋へ入る。ウォレスは肥え太っており、劇場でベガに豚野郎と言われていたのも納得の体格だ。
三人の苦い顔を見るに、予想通りというかなんというべきか交渉は難航しているようだ。
リイやホワイトさんの読み通りだ。彼は確実に特権の授与を渋る。
「あら....ウォレス、久しぶり」
「おお!!ミア!!どうしたんだ急に!!」
「私ね...貴方の妻になってあげようかと思って.....」
「それは本当か!!!」
「ええ。私、嘘は嫌いなの」
さっき俺を騙したばっかだろうに、よくそんなことをすらすらと言えるものだと感心する。
「そうか!!お前はやはり賢い!!そこらの売女とは....」
ウォレスの発言を遮るようにミアは口を開く。
「でも条件があるわ」
ウォレスは若干不機嫌そうに聞き返す。
「.......なんだ?」
「この人たち...私の友達なの。彼らの願いを叶えてあげて.....フィーデス行きの船に乗りたいらしいの、いいわよね?『俺の権力に不可能はない!!』って偉そうに言ってたものね?」
ウォレスは苦い顔をして、数十秒考え込む
「.....しかし、それは...」
「あら....私が欲しいんじゃなくて?」
ミアは挑発的な笑みを浮かべてウォレスを見る。
ウォレスは欲望とプライドで葛藤する表情を見せる。そして、
「わ、わかった!!乗せれば良いんだろう?好きにしろ!!!」
と言い放つ。
「マジかよ....こんなあっさり」
そうホワイトさんが呟くのが聞こえる。
「ただし、この人たちが無事にフィーデスに渡り、無事だという手紙が私の手元に届くまでは決して私には触れさせない...いいこと?」
「あ、ああ!!わかった!!!」
「ちなみに....この子とはヒミツの暗号も決めてあるの、偽造しようたって無駄よ」
そう言ってミアは俺を抱き寄せる。
ウォレスは俺を睨みつけながらも、表面上は陽気に応える。
「ああ、わかっているさ!!明日にでも闘技大会の表彰式を開いて公にも宣言する!!」
「あら、ご苦労なこと.....」
そうして、その場で乗船券をウォレスから受け取ると、明日どころか三十分もしないうちに表彰式が執り行われた。よっぽどミアと結婚したかったらしい。式中も、不気味なほどにニヤニヤとしていて、まさに有頂天といった様子であった。
「あれ程渋っていたというのに.....」
そうリイがぼやく。
「色狂いめ....」
義輝さんはそう吐き捨てる。
GLORY:栄光