第三百二十一話 THE LUNCH
そうして昼前。迎えの馬車に乗車して三人は屋敷へと到着する。
屋敷の中は高価そうな甲冑や彫刻、絵画、剥製などが飾られている。三人は執事の先導でその屋敷の中を歩く。
中でも目を引くのは高価な馬車の数々だ。
「すげえ...馬車だらけじゃねえか!」
そんなホワイトの声に執事が答える。
「辺境伯様は馬車の熱心なコレクターでして.....其方にございますのはヘンツの最新モデル、彼方のものはローズロイスの名作にございます」
「へえ....」
「随分と裕福なのですね、ウォレス様という方は...」
「ええ、辺境伯様は帝国の長者番付に十年連続で記録されていらっしゃるほどの大富豪ですので」
そうして、
「こちらにて、辺境伯様がお待ちです。テーブルマナーなどはお気になさらないとのことですので、力を抜かれてお楽しみください」
「オーケー」
「承知いたしました」
「........」
彼らはウォレスと対面する。ウォレスは椅子へとふんぞり帰って一人で食事を始めている。
「よく来た、俺がウォレス辺境伯家当主のブッチ・ウォレスだ」
「どうも、俺はホワイトだ」
「お初にお目にかかります。私はリイと申します」
「.......足利義輝だ」
「貴族相手だってのに、そこの虎以外は無礼極まりないな.....まあ、あれか、ベガのやつもこんな感じだしな...強者の特権てやつかね」
「悪いね、こういう性分なんだ」
「まあ、飯でも食いながらお前らの勇姿を讃えてやろうじゃねえか!」
「では、失礼して....」
そうして三人は席へ着く。食事はハンバーガーやチキンなどが提供される。
「へえ....コース料理かと思ってたら結構ジャンキーなんだな」
「ああ、俺はな....ああいう伝統だけの味の薄い食いもんが苦手でね...それにこれなら片手で食える」
「そういう合理的なトコ、気に入ったぜ」
「いいねえお前ら...気に入ったよ。俺の部下にならねえか?いまなら三人まとめて幹部にしてやるよ」
そんなウォレスの言葉を断ち切って【剣豪】は口を開く。
「.........茶番はもうよい、本題に入れ」
「....ああ!そうだったな...忘れてた!オーケー....結論から言うと、特権は辞退してくれねか?」
「「「...........」」」
「それは無理な話だぜ、領主サマ.....俺たちは特権以外には興味ねえ、金も名誉も必要ない」
ウォレスはニヤけながら口を開く。
「.....まあ、そんなトコだろうと思ってたよ。所詮は獣狩り....『政治』はわかんねえだろうよ.....ただ、金も名誉もいらねえそうだが.....テメエの『命』までいらねえってことはねえだろ?」
「......羽虫がいくら集ろうとも、私達を殺せはしないぞ」
「脅し.....でしょうか?」
「人聞きが悪いな.....獣人。ただ、お前らは少し勘違いをしている....ところでよ、俺の部下に一人、人殺しどころかガキを拷問することさえも屁とも思わねえ奴がいるんだ.....大通りの安宿の....リーラだっけか?随分と仲良いらしいじゃねえか?なあ?」
「......リーナに何か手を出すと言うならば、お前はこの場で死ぬことになるぞ」
そう言うと【剣豪】は刀に手をかける。
「【剣豪】.....!!やめろ!」
「おいおい....勘弁してくれよ、別に殺すなんて言ってねえだろ....ただ、貴族殺しなんてした日には....船に乗るどころの騒ぎじゃなくなるぜ?一生追われる身.....捕まりゃ見せしめに磔さ」
「下衆ですね.....」
「獣人に下衆呼ばわりされるなんてな!!.....テメエら獣は生まれた時から下衆じゃねえか!!!」
「......落ち着こうぜ、なあ、貴族サマ......そんなに流れ者に特権を与えるのが嫌か?」
「ああ、お前らみてえな野良犬に特権なんて与えたらこの街の権威は失墜だ....それに、八百長をぶっ壊しやがった恨みもある........俺はテコでも動かねえよ」
万事休す....そんな考えが三人の脳内を支配する。
そんな時であった、部屋に執事が入ってくる。
「失礼致します」
「どうした、今は忙しいんだ」
「いえ、実は....辺境伯様にお会いしたいという方が.....」
「誰だ?」
「お耳を拝借しても?」
そうして、執事の話を聞いたウォレスは大声を上げる。
「ミ、ミアだとっ!!!......あの女狐、俺の誘いを断りやがったと思えば.....とうとう、俺のモンになる気になったか!!!」
「....お通ししても?」
「ああ!!今すぐこの場へ連れて来い!!!」
LUNCH:昼食
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